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32話 魔術師ダンログ・アルトス(断罪)

断罪回となります

「街で人を募って、4人の魔術師を運んでもらおうか?」

「そうですね」

「魔術師達の処遇については街の人達に任せよう」


 俺達の拠点には、ダンログだけを連れて行くつもりだ。


「今から街の人と話してくるから、ライル君とティリアちゃんはダンログ君を見張っててくれないかい」


 と言ってクリフさんは街へと向かい、昼頃には全てを終えて戻って来た。


「引き渡しが終わったよ。町の人が誰も命を落としていなかったのが不幸中の幸いだった」


 魔術師達は、事情聴取された後に懲罰労働でも課せられるかもしれないな。


「ひぃははっ!」


 ダンログが唐突に奇声を上げて笑った。


「そんなにのんびりしてて、いいのかい? このままじゃ取り返しがつかない事になるかもしれないよ?」

「ダンログ君。それはどういう意味かな?」

「さてねぇ」


「なあダンログ。お前どうして余裕あるんだよ?」

「くっくっく。簡単な事さ。私は死を恐れていないからだよ」


「何だと?」

「神の信徒たる私は死など怖くないのさ」


 神官でもないのに神の信徒?

 意味が分からないな。

 こいつは異常者だから、まともに取り合うべきじゃないのかもしれないが。


「大変だクリフさん!」


 数人の男達が、息せき切って駆け寄って来た。


「どうされたのですか皆さん?」


 クリフさんは宥めるように声を掛けたが、男達の慌てる様子は変わらない。


「魔術師達が全員死んでるんだ!」

「引き渡した4人全員がですか?」

「違うっ! 魔術師の塔にいた魔術師全員が死んでるんだよ!」


「それは本当ですかっ!?」

「本当だ。全員呪い殺されたみたいに死んでる」


 誰も声が出なかった。

 クリフさんは「何か異常があれば直ぐに逃げるように」と伝えて、青ざめている男達を街へと帰していく。


 そもそも魔術師達が逃げ出したにしては、おかしな状態だったんだ。

 魔術師の塔には200人以上が在籍していたにも関わらず、俺達が捕らえたのはダンログを含めてたったの5人しかいなかったからな。


「あの、ライル」


 ティリアが俺の袖を掴んだ。


「精霊達がわたくしに異常を伝えてきますの」

「異常?」

「ええ。『大いなる胎動を感じる』と」


 俺の脳裏には「神の誕生」の言葉が浮かぶ。


「まさかな……」

「あはははは。人が沢山死んだのかい? 楽しいねぇ」


 ダンログは喜色満面だ。


「お前は、これから何が起こるか知ってるんだろ?」

「さあ、どうだろうねぇ」


「吐けよ」

「お断りだよライル。くくっ」


「無理やり口を割らせてやろうか?」

「無駄だよ。私は死ぬ事に恐怖など感じないからね」

「へぇ。そりゃ丁度良かった。俺もクリフさんも、お前を死なせるつもりはないからさ」


 俺の答えに怪訝な顔を見せる。


「死ぬ苦痛には耐えられても、死ねない苦痛に耐えられるとは限らないってことさ」


 ダンログは真意を測りかねている様子だった。


 △


 俺達は帰還魔法で屋敷へと帰って来た。


「さあ、感動の御対面だよ」


 クリフさんはダンログの目隠しを解いて押し飛ばす。

 ダンログがつんのめって掴んだのは、かつての仲間だった。


「ガーロンっ!?」


 ダンログは驚愕の声を上げた。

 だが両手両足を縄で縛られ、天井から吊られた状態のガーロンは何の反応も示さない。


「その有様はどうしたガーロンっ!? なぜ此処にいるんだっ!?」

「俺達が捕らえて連れてきたからに決まってるだろうが」


 こちらを見たダンログの目は見開かれている。

 あの戦士ガーロンが捕まった事が信じられないんだろう。


「試しに逃げてみるか? 無駄だろうけどな」


 俺達はじわじわと部屋の端へと追い詰める。


「ライル君。ご希望はあるかな?」

「燃やしてもらっていいですか? ゴミだからよく燃えますよ」


 屋敷の排気設計にも問題ないし、燃やしても大丈夫だろ。


「それじゃあ、お望み通りにしてあげようか」


 クリフさんは笑顔で手のひらをダンログへと向けた。


「《火錬砲(フレアバースト)》」


 10本の炎がダンログに集結する。

 一度見ただけで真似出来るんだから、クリフさんは天才なんだろうな。

 威力も丁度いいレベルに弱められてるし。


「あぁああああああああ!」

「《水球(ウォーターボール)》」


 ダンログの絶叫を聞きながら、クリフさんは水魔法を発動させて消火する。


「あがっ……が」


 火傷を負ったダンログが石の床に倒れ込んだ。


「《回復(ヒール)》」


 白い光がダンログを包む。

 しかし完全には回復していないようで、かなり苦しそうな様子だ。


「《火錬砲(フレアバースト)》」

「あぁああああああああ!」


 攻撃と回復を何度も何度も繰り返していく。

 あれだけ強気だったダンログも、半日も過ぎた頃には虚ろな目になっていた。

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