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23話 高飛車な少女

 俺達は2階建ての屋敷を眺めている。


「完成しましたね」

「これが僕らの拠点だ」


 アーガス村から1kmほど先にある湖の傍。

 そこに石造りの大きな屋敷を建築し終わったところだ。

 僅か1ヶ月程度で建てたとは思えない程に、頑丈な造りをしている。


「完成するのが随分早かったね」

「かなりの大金を積みましたからね。お陰で、喜んで突貫工事をやってくれましたよ」


 俺は何度か魔物の素材を売りに行って、かなりの大金を手にしている。

 だがこれといった使い道はない為、提示された建築費の2倍を支払うと言ってみた。

 すると、無茶苦茶な工期でも快く請け負ってもらえたというわけだ。


「クリフさん。屋敷の管理を任せた人達は信頼出来るんですか?」


 今日から5人を雇い入れて、常駐してもらう手筈となっている。


「大丈夫だよ。絶対にこちらを裏切らないし、ちゃんとやってくれる人達だから」


 クリフさんは過去、人助けをしながら各国を周っていた。

 そういった時に助けた人達を雇ったのかもしれない。


「ガーロン君のお世話も含めて、管理全般を任せて問題ないよ」

「それは良かったです」


 これだけ大きな屋敷になると、小屋と違ってやらなきゃいけない事も多いからな。

 それに屋敷を空ける事も多々あるだろうし、管理問題は重要だ。


 それから数日を屋敷で過ごし、今後の方針について7人全員で話し合った。

 その数日後。


「それじゃあ行きましょうか」


 俺達はアルトス侯爵領へと向かって歩き出した。

 次のターゲットは魔術師のダンログだ。


 △


 馬車を乗り継いで西へ6日程。

 俺達は麦畑が広がるアルトス侯爵領へと入って、目的地から少し離れた三叉路で馬車を降りた。


「遠くに見えているのが、かの有名な魔術師の塔だよ。200人くらいの魔術師が所属してる王国最大の魔術機関さ」


 街の中心部に建っているらしい、赤茶けた高い塔だ。

 歩いている間に、クリフさんが色々と説明してくれた。


「街の中に入るには時間が掛かりそうですね。門に大行列が出来てますし」


 かなりの人や馬車が並んでいるようだが、街に入るだけでこんなに並んでいるのは珍しい。


「すみません」

「ん?」


 俺は人の良さそうなおじさんに声を掛ける。


「どうしてこんなに大勢並んでるんですか?」

「怪しい人物をチェックしてるんだってさ。1ヶ月前くらいから、やってるらしいよ」


 そして、おじさんは「噂だけどね」と言ってから小声で話し出す。


「ガーロン・ディオルム侯爵子息様が行方不明になっただろう? 以前パーティーを組んでいたダンログ・アルトス侯爵子息様も狙われるんじゃないかってんで、警戒してるんだとさ」


「そうですか。ありがとうございます」


 礼を言って、俺はクリフさんに向き直る。


「俺達を警戒してるみたいですね」

「けれど魔術師が見破りの魔法を使ってチェックしてるわけじゃない。最高レベルで警戒されてる訳ではないみたいだね」


 俺達は小声で話し合う。


「まだ今は『一応警戒している』程度なんでしょうね。どうします?」

「このまま行こうか。多分それで問題ないよ」

「分かりました」


 クリフさんの魔法で、俺達は目の色と髪の色を変えている。

 見破りの魔法を掛けられない限りバレないはずだ。


 しかしそれから約3時間が経ったが。


「どうなっているんだ?」


 列がまったく進んでいない。

 ザワザワと人のざわめきが大きくなってきた頃、


「いつまで待たせるおつもりかしら?」


 行列の中ほどで、若い女の声が響いた。

 怒鳴ってるわけでも叫んでいるわけでもないのに、不思議と良く通る声だ。


 人々が興味本位で注目し始める。

 俺も遠巻きにしながら、そちらの方へと意識を集中した。


 馬車から降りてきたのは白銀の髪の少女だった。

 身軽な服の上に半透明に透けている衣装を纏った、どこか幻想的な装いをしている。


「責任者はどなたかしら?」

「申し訳ございません。現在は不在となっております」


 駆け寄ってきた衛兵が、すまなさそうに少女へと告げる。


「では、代わりの者をすぐに連れてきなさい」

「いえ、そういうわけには……」

「わたくし、ずっと待っていますのよ。いい加減にしていただけないかしら?」


 鋭く見据えて衛兵を怯ませる。


「このままわたくしを不当に足止めするのでしたら――」


 ――危ないっ!


 俺は全力で地を蹴った。

 少女の方へと走り寄り、飛んできた矢を間一髪で掴む。


「きゃあっ!」

「馬車に入れ!」


 俺は警戒しながら、少女を馬車へと押し込めた。

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