表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/49

22話 新たな拠点

 ガーロンを捕獲してから20日が過ぎた。


「ぎゃぁあああああああああああああああああああああ」


 今朝もいつも通りの悲鳴が響く。

 最近は魔法の実験台として、ガーロンを有効活用する事が増えた。


「《浄化(クリア)》」


 クリフさんの魔法で、小屋の中に散っていた血や汚物が瞬時に消滅する。


「クリフさん。今回はどんな実験だったんですか?」

「《状態回復(リカバリー)》という魔法は知っているよね?」

「はい」


 精神を安定させたり正常化したりする魔法スキルだ。

 高位の神官だったクリフさんが使えば、毒や麻痺までも治せると思う。


「通常は、対象者の精神の安寧を願いながら使用するんだけどね。今回は逆に、精神の崩壊を願いながら使ってみたのさ」

「へぇ。そんな事も出来るんですね」


「うん。その結果、精神を正常にしようとする魔法本来の力と、崩壊させようと願う僕の力が彼の体内で反発し合って、彼は大きな苦痛を受けたんだよ」


 あの傲慢で五月蠅いガーロンが黙ってるからな。

 かなりの効果があったみたいだ。


「ガーロン。気分はどうだ?」

「……」


 グッタリとして反応がない。


「壊れかけてるみたいですよ」

「そうだね」


 クリフさんは満面の笑みで頷いた。


「《体力回復(ヒール)》《状態回復(リカバリー)》」


 白い光が立て続けにガーロンを包み込む。


「ようガーロン。ちゃんと起きてるか?」

「ひぃいいい」


 どうやら正常に戻ったようだ。


「お前は殺してやらないし、狂わせてもやらないからな。しっかり覚えておけよ。この苦しみは一生続くぞ」


「勘弁してくれぇ。許してくれよぉ」

「馬鹿言うな。お前みたいなクズを許すわけないだろ」


 淡々と答えた。


 △


 俺達は新たな拠点を作る計画を進めている。

 いつまでも小さな小屋に住むわけにはいかないからな。


 そんな訳で今日は、クリフさんにガーロンの世話を任せている。

 俺は単独行動中で、建築工事の進み具合を確認してきた帰りだ。

 すると、


「大金持ってるみたいじゃねぇか兄ちゃん」


 5人が俺を取り囲む。

 風貌から言って、冒険者ではなく本物の盗賊のようだ。


「ちぃーっとばかし、俺等に恵んでくれねぇか?」

「断っても無理矢理恵んでもらうけどな」

「はははは」


 刃物を突き付けながら下卑た笑みを向けてくる。

 男達の得物はナイフと曲刀だ。


「死にたくねぇだろ? 黙って金を寄越せよ」

「断る」

『なっ!?』


 問答無用で突っぱねた。

 建築途中のデカい邸やら俺の年齢やらを見て、良いカモだと思って付けて来たんだろうが。


「たった5人か。今なら見逃してやるけど、どうする?」

「……そうかい。そっちがそういうつもりなら仕方ねぇわな」


 リーダー格の男が目配せをする。


「死ねやぁああああああああ」


 一斉に斬り掛かってきた。


 ――遅い。だが練習には丁度いいか。


 俺は男達の攻撃を難無くかわしながら、無手で(・・・)リーダ格の曲刀を受ける。


 ――《カウンター!》


 パンという音と共に、曲刀が瞬時に粉砕された。


「粉々になるのは初めて見る現象だな。無手でカウンターを使ったからか?」


 独り言が口から出た。

 どうやら、カウンターの威力が曲刀全体へと分散されてしまったようだ。


 相手の刃物をダガ―で受けた場合、接触面積は極僅かとなる。

 しかし素手で受けた場合は、相手の刃物との接触面積は広くなるからな。


 その為、カウンターのダメージが集約されずに曲刀全体に及んでしまったんだろう。

 そうやって曲刀が全てのダメージを受け負ったからこそ、男は無傷で済んだとも言えるが。


「俺がダガ―を使ってたら、お前は死んでたぞ。運が良かったな」


 男達は動きを止めて、俺を恐怖の目で見つめている。


「まあ俺も無傷とはいかなかったけど」


 無手で受けた俺の掌には、薄っすらと刃物による筋が走っていた。

 これだけの力の差があっても、ノーダメージとはならない。

 まだまだ向上する余地はあるみたいだ。


「とりあえず逃げるなよ。いいな?」


 俺の言葉にブンブンと何度も頷いている。


「これで手首を縛れ」


 ロープを取り出して渡すと、男達は素直に従う。

 そいつらを近くの街まで連行し、憲兵に引き渡してから俺は帰宅した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ