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ケイ

ラス前はお兄ちゃん、ジエイに締めてもらいます。


ケイは大学2年生になってからも処理モジュールと行動について相関関係の調査を継続していた。

ただ、毎回アイコに頼むとケイしか確認ができず作業効率が悪い。

そのため専用端末の技術を応用して、普通のアイ・端末でも使える外付けのロギング装置を試作した。

まだ高校生ながらチサも端末に関する技術力を活かして試作や改良の手伝いをしている。


その日もケイたちのグループにチサが参加して装置の改良でアイデアを出し合っていた。

そんな話し合いに進展があり、ケイがしみじみとした感じでこう言ったのだという。

(後でエルから聞いた)

「チサさん、本当にいつもありがとうね。やっぱりチサさんに手伝ってもらえるのが一番安心できるよ。これからも、ずっとこうやって一緒にやって行きたいね。」

それを聞いたチサは、急に静かになってしまった。

何かおかしいと気付いたケイが、あらためて見つめたチサは目に涙をためていた。

これまでの気持ちが溢れて唐突にスイッチが入ってしまったらしい。

同じテーブルのリョウ達も突然のことに息を呑んでいる。

その異様な雰囲気に気付いた部屋中が静まり返った。


そして、チサは溜め込んでいたものを大切に言葉に乗せるようにこう言った。

「はい。ケイ先輩。これまでも、これからも、ずっと大好きです。」


ケイはそれを聞いてようやく自分の発言をチサがどう捉えたかに思い至ったようだ。

でも、それを否定する必要がないことに、自分がそれを素直に嬉しいと思えることに初めて気付いたらしい。

「うん。僕もチサさんの事が好きだったみたいだ。随分と待たせちゃってたのかな。ごめんね。あらためて言わせて。これからもずっと、よろしくお願いします。」


固唾をのんで事の成り行きを見守っていた全員が一斉に歓声をあげた。

ふたりはそれを聞いて、今更ながらに自分たちが居る場所を思い出したらしい。

一瞬慌てた顔をしたケイだったが、その表情は晴れやかなものだった。

でもチサは嬉しいのと恥ずかしいのとで、耳まで赤くして(うつむ)いてしまった。



    ◇



時は流れ、俺は大学を卒業すると解析技術研究所に就職した。

学生時代から縁があり、現在では総合調整室の主任になったハヅキさんのもとで働いている。

本来の業務を行う傍らで、既にライフワークのようになった処理モジュールの解析も行っている。

その過程で判明したことも少なくはない。

しかし、ホスト側で待機状態にある処理モジュールの解析に関しては、相変わらず一進一退でなかなか思うような成果には結びついていない。

まあ、ここ数百年でも数えるほどしか稼働状態に移行していないのだから、そう簡単に事が進むとは思っていない。

でも、ひとつぐらいは俺の手で有用な機能を見つけて稼働させてあげたいという気持ちで続けている。

俺と結婚したミドリは何故か大学の食堂で働いている。

いつの間にか栄養士の資格も取っていたらしい。


父さんと母さんは、そろそろ引退して温泉のある田舎にでも移住したいとか言っている。

冬は厳しいけれど母さんの実家に近い山形辺りにするか、温暖な熱海や最近開発の始まった箱根が近い小田原にするかで迷っているらしい。

俺のところはまだ子供が居ないので、「ジエイ達のところも早く孫の顔が見たいわねぇ」なんてテンプレな発言をされる。

これにオヤジとオフクロ、更にエルとクラギーさんまでもが加わるので普通の倍以上のプレッシャーがある。



ケイはアイ・システムの研究を続けるため大学に残った。

少し前までは処理モジュールの適切な稼働化過程について、最近では適切な稼働化とヒューマンの初等教育との融合ということをテーマに研究をしている。

間もなく准教授にとの声も出ているらしい。

解技研でも共同研究を依頼をしたり、こまごまとした助言をもらったりしている。

チサはアイ・端末を専門として父親の仕事を手伝っている。

その立場を利用して自分も専用端末を用意し、アイコと常時接続を行っているのは周囲の誰もが知っている。


ケイとチサの間には2人の子供が産まれた。

上の子は女の子でケイの小さな頃によく似ている。

名前はカオリで母さんの香の字をもらった。

アイ・端末は桃のホロで名前は「ぴーち」になった。


下の子は男の子でチサに似ているかな。

チサの父親は自分の子供の頃にそっくりだと大喜びしている。

名前はヨウイチで父さんの字をもらって洋一と書く。

アイ・端末はヨットのホロで名前もそのままの「よっと」。


現在ではすっかり普通のことになったが、二人ともアイ・端末は思考ユニットi5の直接接続だ。

どちらも、まんぼとぴょんた、それに加えてアイコが育てている。

思考ユニットi5から見ると、自分の子プロセスを自分の子プロセスで育てていることになる。

俺たちには混乱しそうに思えるが、当人たちは何の違和感もないらしい。

使っている端末は一見普通の製品に見えるが、実はチサの魔改造が施されているとの噂がある。

多分本当のことだろう。


思考ユニットi5は女性型だが、端末上では本体のタイプに関わらず、男性型、女性型、無性型から選べるようになっている。

これはケイの発案で、思考ユニット全機の直接接続開始に合わせて実装された。

思考ユニット達はこの変身を楽しんで受け入れている。

自分たちの存在意義を存分に実感しているらしい。


ケイとジエイの話もこれでひと区切りです。

次回最終話。


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