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続・先輩のこと2

もともと筑波シティへはお父さんの仕事の都合で来ただけだった。

本当は私の高校進学に合わせて岡谷シティに戻ることになっていた。

それは知っていたのだけれど、私は科技大付属に入学したいとお願いをしてみた。

普通に高校へ進学するだけならば筑波でも岡谷でも変わらない。

だけど付属高校なら筑波シティに居続けることができるという思惑があった。

そのためなら寮生活でも構わないと思っていた。

もちろん付属高校で学びたいという気持ちだって本物だ。


本当なら先輩と同じ吾妻高校に通いたかった。

でも先輩は高校では部活動に入っていない。

その代わりというわけでは無いだろうけれど、中学校の情科研には良く顔を出してくれていた。

でも私が高校生になればその繋がりもなくなってしまう。

先輩と顔を合わせるのは昼食の時の食堂など偶然に頼らないといけなくなる。

それならいっそのこと、こちらも良く参加しているという付属高校の研究室に所属した方が接点が多いはず。

そんな打算もあった。

「ケイは多分科技大に進学すると思いますよ。」

時折接続のリクエストをしてくれるアイコさんが、ある時そんなことを教えてくれたのが決定打となった。


私の進路選択にお父さんとお母さんはとても驚いていた。

でも最終的には科技大付属への入学に同意してくれた。

それどころか岡谷シティに残してあった家を引き払うことにして、筑波シティに住み続けることを決めてしまった。

筑波に住み慣れたということもあるし、娘を一人にしておきたくないと考えてくれたらしい。

ただ、仕事の都合で一時期お父さんだけが岡谷シティへ単身赴任をしていた。

お父さんありがとう。

わがままを言ってごめんなさい。


本当に困った人なのは多分私の方だ。



ともあれ、そうして入学した付属高校で、私はシステム行動科学研究室に所属した。

カオルさんやジエイさん、トオルさんも歓迎してくれた。


私はどちらかというとハードウェアに興味があるので、アイ・端末の装置を研究対象にした。

アイ・端末と一括りに言っても、メーカー毎の設計方針やサービスの考え方で差異がある。

だけど利用者にそれを感じさせないという仕組みがある。

共通化のための仕様定義ももちろんだけど、ソフトウェア、つまりアイ・端末内のシステムが差異を吸収している部分も少なくない。

そういう働きをテーマとして調べている。


そんな風に対象分野が違うのに、ケイ先輩が参加する時の試験では同じグループになることが多い。

先輩が大学に入ってからも大学との合同試験では接点が多くなっている。

異なる観点があった方が良いというのが一応の理由付けらしい。


このことは、実はカオルさんやジエイさんだけではなく、研究室のみんなが私に協力してくれている。

「まだ私は高校生ですし、それにできれば先輩の方から気付いてほしい。」

ある時、先輩方に問い詰められ、そう白状させられてしまってからこうなった。

見守り隊みたいなものも結成されてしまったらしい。

嬉しいけれど恥ずかしい。

しかも、それでも気付かないケイ先輩がもどかしい。



ケイ先輩が大学に入ってしばらく経った。

その先輩と同期で入学したミドリさんがジエイさんと付き合い始めたのは夏頃のことだった。

同じグループで実験を続けるうちに気が合ったらしい。

何故だかカオルさんが強力に後押ししているのも印象的だった。


そのカオルさんは、これもまたケイ先輩の友達のオクさんと付き合っている。

先輩たちが高校に進学した年の学園祭の時に、SF研の発表を見たカオルさんが興味を示し、それから意見交換で交流が始まったそうだ。

ちゃんとしたお付き合いになったのはオクさんが大学に進学してからだと聞いた。



と、そんな状況さえもケイ先輩は全く気付いていなかった。

わざわざ接続要請までして、そう私に教えてくれたのもアイコさんだった。

「ケイの鈍感さにはソフトウェアに過ぎない私でも頭痛のする思いです。」

そこまで言わせる先輩もある意味凄いとは思う。

「ケイが思いを寄せる特定のヒューマンは居ないと断言できます。ですが、それは残念ながらチサに対しても特別な感情を持ってはいないという事です。」

「そうなのよね。」

「これまでの様に接点を設けるだけではなく、もっと積極的にアプローチすべきではないかと考えます。」

「うん。それもわかるんだけど、でもケイ先輩に対して、それは何だか違うような気がするの。」


もちろん思い切ってこの気持ちを伝えてしまおうかと考える時もある。

でも、もし受け入れてもらえなかった時に、今の関係性が壊れてしまうのが怖い。

そうやって今に至ってしまったのだけれど。



ようやく先輩が私の気持ちに気付いてくれるまでには、それからまだ半年を待たなければならなかった。


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