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先のことは

年が明けるとユウイチ君は3歳になり、双子のアイ・端末のホロと名前が決まった。

従来どおりのアイ・端末が月のホロで「むーん」。

思考ユニット直結の専用端末が星のホロで「すたー」。

これだと2つで一つのホロにも見えるから違和感が少ないというのも理由。

ユウイチ君も双子の端末も元気で順調に育っているとのことだ。


この子が大きくなる頃には「すたー」みたいな思考ユニット直結の端末が普通になっているだろうか。

父さんはそうなる事に自信があるようだけど、いつものとおり根拠は無いみたい。

「でもほら、アイコの話を聞いてると大丈夫そうな気がしてくるだろ?」


確かにユウイチ君の話をしてくれるアイコさんはとても幸せそう。

内容だけ聞くと、え?それって大変な事なんじゃないの?なんて事でさえも楽しそうに話す。

僕は良くわからないけれど、お母さんってそういうものなのかもしれない。

でも、まんぼさんまで僕が小さかった頃の話を持ち出して一緒に盛り上がったりするので聞いていて恥ずかしい。

何でそんな事まで憶えているのって感じ。

そこに母さんまで混ざると最悪だ。

とても他人には聞かせられない。



それにしても、こうしてアイ・端末、思考ユニット、ヒューマンが談笑しているのを見ると不思議な感じがする。

アイコさんと初めて会った頃は、こんなこと想像すらしなかった。

何だかその裏で働いている仕組みなんかの事はどうでも良いかなって気にすらなってくる。

こうやって分け隔てなく話をする事ができて、共感する事ができて、一緒に進んでゆく事ができる。

その事が何よりも大切だと感じる。

その話の内容はともかくとして…。


アイコさん達が自身の成長を望んでいたように、僕達もアイコさん達の成長に期待しているのかもしれない。

アイ・ホストの接続開放は、5年経った現在でも相当数の利用者が居るとのこと。

「アイコさんファン倶楽部」なんていうのもできている。

もちろん僕は入っていないよ。


いま僕たちが調べていること、それによってアイ・システムへの理解を深めてゆく。

そうする事でお互いに新たな成長のヒントを得られるかもしれない。

そういう期待が僕たちを動かしている。


ともあれ明日が、その先が、どうなって行くのかは誰にもわからない。



さて、それから少しして、とてもショッキングな出来事があった。

週末にジェイがデートするというのだ。

「え~!デートって…。じゃあ相手は…。」

「ケイと同期のミドリさんだよ。」

「え?カオルさんじゃないの?」

思わずそう口走ってしまった。

「おいおい。カオルとは仕事仲間みたいな感じかな。それに、カオルはオク君と付き合っているぞ。知らないのか?」

「え?え?どういうこと?」

びっくりし過ぎて目の前がチカチカしてしまった。

「何だ、結構前からなのに気付いていなかったのか?」

「何それ。僕だけ置いてきぼりじゃない。」

「まぁ、他人は他人。そこは焦ることもないだろう。」

「それにケイに好意を抱いている人は意外と近くに居るんじゃありませんか?」

「え?アイコさん何か知ってるなら教えてよ。」

「それは私から伝える事ではありません。」

「そんなこと言わないでさぁ。」

「おい、そんな情けないこと言っていると、その人に呆れられちゃうぞ。」

「それは困る。って、ジェイも知っているの?」

「何のことだろうな?」

「そもそもケイの方はどうなんですか?」

「え?何?まんぼさん。」

「ケイにはお付き合いしたいと思っている人は居ないのですか?」

「僕は…、あれ?気になるヒトっていったらアイコさんだけど…。」

「ケイ?」

「お付き合いしたいっていうと誰だろう。そう考えると難しいかも。みんな好きだし。」

「おい、それで他人を羨ましがるってのは違うんじゃないか?」

「アイ・システムのことは良く気が付くのに、ヒューマンのことは全然ですね。」

「相手の方が気の毒です。」

「ちょっと、エルさんとまんぼさんまでっ。」



僕が彼女の気持ちに気付いて、それに応えようと思ったのは、まだ半年も先のことになる。

やっぱり、先のことなんてわからない。


ケイ自身が語るのはこれで最後になります。

でも、話はまだ続きます。

もう少しだけお付き合いください。


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