横浜旅行3
翌朝起きて居間で待っていると父さんがへろへろな感じで起きてきた。
昨夜あれから母さんと一緒にホテル内のラウンジでカクテルを飲んでいたらしい。
母さんはいつもどおり元気。
朝食はホテルの食堂で中華粥のセット。
油条っていう揚げパンやザーサイ、昨夜も食べた揚げ落花生やピータンなどのトッピングで食べる。
今日は昨日見ることができなかった土産物屋さんや雑貨店に行く。
店先に並んでいる饅頭やお菓子が気になるけれど、お昼に食べると聞いているので我慢。
少し一緒に見て回ってから食材を買いに行く母さん達と別れた。
父さんはどこかの喫茶店で休みたかったみたいだけれど一緒に連れて行かれてしまった。
食材には僕も興味があったのだけど、雑貨の誘惑の方が強かった。
それに中華食材はまだ見ても良くわからなそう。
そんなわけで、ジェイと一緒にお店を見て回る。
合流の時間が近くなったらクラギーさんが案内してくれることになっている。
土産物屋さんには珍しい小物が色々並んでる。
やっぱり一番目につくのはジャイアントパンダ。
白黒のぬいぐるみが丸くてふわふわしていてかわいい。
僕の周りでは使っている人を見たことがないけれどホロにも良さそう。
「ジエイ、ケイ、もうそろそろヒロシ達と合流しましょう。」
あれこれ見て回っているとクラギーさんが声をかけてきた。
「わかった。案内してくれ、クラギーさん。」
連れてきてもらったのは周囲より少し大きな建物。
エントランスを抜けて部屋に入ると、中央に丸い舞台があってその周りをテーブルが囲んでいる。
部屋自体も丸い形の吹き抜けになっていて、2階と3階にバルコニー席がある劇場だった。
僕たちの席は舞台に一番近い場所のひとつ。
四角いテーブルの左右に2つずつ椅子があり、横を向くと舞台が見えるようになっている。
父さんと母さんはもう来ていた。
向かい合わせに座っておつまみ何品かを並べ、どんぶり?で何かを飲んでいる。
僕は母さん、ジェイは父さんの隣、舞台に近い側に座った。
「何飲んでるの?」
「紹興酒よ。」
「ゆうべも飲んでたのだよね。」
「でも、何でどんぶりなんだ?」
「ここの名物よ。本場ではこういう飲み方をする所もあるんだって。」
「ふたりも何か飲み物を頼むといいよ。」
まんぼさんにメニューを見せてもらう。
ジェイと相談して今日は烏龍茶を飲むことにした。
「まんぼさん。烏龍茶をポットで、カップは2人分にして。」
「わかりました、注文します。」
少しすると給仕さんがワゴンに乗せたティーポットとカップを運んできてくれた。
それと昨夜の前菜と同じようなものが乗ったお皿をジェイと僕の前に置いてくれた。
皮がサクサクとした焼き豚、アヒルの燻製、ピリ辛味の砂肝、大根の甘酢漬け、えびせんべい。
それらが少量ずつ綺麗に並べてある。
父さん達がおつまみに食べていたものだ。
お茶を飲み前菜を摘まみながら今日見てきたところの話をしていると照明が暗くなった。
賑やかな鉦や太鼓が鳴り響き、不思議な音色の弦楽器の音がそれに加わる。
一転して明るい照明に照らされた舞台の上で雑技ショーが始まった。
獅子舞いや皿回し、大きな壺を軽々と扱う技やアクロバットの数々。
本当に僕たちと同じヒューマンがやってるの?と目を疑うような演目が次々と繰り広げられる。
舞台と客席の間には特殊なエア・カーテンがあって、ホコリとか飛んでこないようにしてあるんだって。
最後は派手な衣装を着た京劇の大立ち回り。
もうどれだけ拍手したか、わからないくらいだった。
照明が元に戻ると舞台の上では弦楽器を持った人の演奏が始まる。
少し物悲しい感じの音色で「二胡」という楽器だと母さんが教えてくれた。
ここからは本格的な昼食タイム。
オーダーバイキング方式の飲茶だ。
最初の何品かは母さんがあらかじめ注文をしてくれていて、それほど待たずにお皿が並べられる。
ううん、お皿だけじゃなくて、タワーみたいに積み重ねられた蒸籠も運ばれてきた。
野菜炒めや肉料理、餃子とかシウマイの他に、知らないものも色々ある。
びっくりしたのは「モミジ」。
ニワトリの足そのまんまの恰好なんだもの。
でも母さんに言われて食べてみるとプルプルでおいしい。
ジェイはちょっとダメだったみたい。
それから腸詰めは不思議な風味が癖になる。
最初に並んだものをあらかた食べ終わる頃、舞台の上はいつの間にか琴の演奏になっていた。
父さんたちはお酒のおつまみになりそうなもの、僕たちは街中を歩いた時に気になっていたものを注文した。
あんまんとか肉まん、マーラーカオという蒸しパン。
どれも一つずつ頼んでジェイと半分こにして食べた。
最後はみんなで茉莉花茶を飲みながら杏仁豆腐とエッグタルトを食べてお昼ご飯を食べ終える。
部屋からエントランスに出てそこに飾られた昔の中華街の写真やグッズなどを見ていると、ぴよちゃんがキャビンの到着を知らせてくれた。
車内にはホテルに預けてあった荷物や、母さんが午前中に買ったお土産などが積んである。
それから今夜のお弁当も。
昨日来た道を逆に進んで夕方にはまだ早いぐらいの時刻に帰宅。
さすがに夕食のお弁当は生春巻きなどのあっさりしたものだった。




