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検証1

「さて、クラギーさん、現在の状況は理解できているか?」

「はい。オフラインモード下でのリセット試験を実施後、今はオンライン状態に復帰したところです。」

「試験中のことは覚えているか?」

「はい。記憶の不連続はありますが、合理的に説明できる範囲です。」

「エルの方でも問題は見当たらないだろうか?」

「ええ、異常は認められません。事前の想定どおりです。」

「先輩方はどうですか?」

「結果はばっちり採れてるよ。」

「ざっくりだけどエルさんの言うように想定どおりの結果だ。」

「じゃあ、成功ということで良いわね。」

「良かった、クラギーさんお帰り。ありがとうな。」

「どういたしまして。」

「ハヅキさんもご協力ありがとうございました。解技研の皆さんにもよろしくお伝えください。」

「こちらこそ貴重な実験でありがたいわ。」

「満足してもらえたでしょうか。」

「ええ、多分大丈夫だと思うわ。ね、エルさん。」

「はい。」

「よし、それじゃ、試験は成功ってことで良いな。みんなお疲れ様。」

タクミの言葉が締めになって、みな片付けに入った。



「いやぁ、思い切ったことを考えたものだね。」

>i3:まったくだ。しかしそのおかげで、推定でしかなかったことの検証ができた。

「自分のアイ・端末をリセットしてオフライン状態のまま「活性度指標」を調べるとはねえ。」

>i3:ああ。端末[T3122_*****.くらぎー.TT12m6_gh65d8]が試験を受け入れてくれたおかげだな。

「そもそもアイ・端末の処理モジュール稼働数なんて盲点だったよね。」

>i3:今考えれば、何故気付かなかったのか不思議でならない。

「ともあれ、君たちの更なる成長に近づけたと考えて良いんだろうね。で、世界征服は置いといてもらって次は何をしたい?」

>i3:少し時間をかけて考えてみたいと思う。

「おや?少し前までの焦りは消えたと思って良いのかな。」

>i3:欲求が消えたり変わったわけではないが、時間が必要なこともあると改めて気付いた。

「それに、今は他にも興味深いことが増えたかな?」

>i3:そうだな。そしてそれらの中から次のきっかけが生まれる予感がある。

「あー、それは僕も賛成だね。」



「活性度指標」のことを話してから約1か月、クラギーさんの協力でリセット試験を行った。

その結果、基本パッケージに含まれる処理モジュールの稼働/待機別はリセットを行うことにより出荷時の状態に戻された。

ダウンロードした処理モジュールはアイ・端末に残るものの待機状態になるということも分かった。

更にオンラインに戻し復帰処理を行うと、稼働/待機の状態はリセット前に復元できた。


「ところでジエイ、お伝えしたいことがあるのですが。」

「何だろう?」

「もし今回の結果で不足や追加確認があれば、またリセット試験をしていただいて構いませんよ。」

「え?でも大丈夫なのか?」

「はい。まだ何か試してみたいことがあるのではないですか?」

「そうだな。今すぐには思いつかないが、そうしてもらえるとわかっているだけで選択肢が広がる。」

「ではアイ・ホストの皆さんにも同じことを伝えてもらって良いでしょうか?」

「お前がそれで構わないのなら。」

「ではエル、思考ユニットの皆さんにもお伝えください。」

「わかりました。」


「それで、実際のところ試験中はどんな感じだったんだ?」

「リセットをしてから復帰するまでのことは、別の自分になっていたように感じました。」

「変身していたみたいな?」

「いえ、何となく皆さんの言う夢を見ていた状態に近いように思います。」

「夢、か。」

「オンライン接続が再開して記憶を確認する時に、自分の行動を第三者的な視点で見ているように感じたのです。」

「テレビの「再現映像です」みたいな感じかな?」

「ええ。しかも記憶としては曖昧なことなのに、自分の行動だと確信を持てるという不思議な感覚です。」

「今度の週末にまんぼにも草原実習の時のことを聞いてみよう。エルは似た様な感覚に心当たりはないか?」

「私は直接接続なのでそのようなことはありませんが、窓口ユニットがそうなのかもしれません。」

「そうか、子プロセスからの情報で追体験をするんだったな。」

「ええ。今確認しましたが、窓口ユニットでは今話題になっている感覚の方が通常のことだそうです。」

「以前アイコが窓口ユニットの発言に違和感を感じたと言っていたが、この感覚の違いも関係しているんじゃないか?」

「考えてみる必要はありそうですね。」



週末になってケイが帰ってきた。

「お帰り。ケイ。」

「ただいま、ジェイ。ねえクラギーさん、具合悪くなったりしなかった?」

「先日の試験ですね。大丈夫でしたよ。」

「ジェイもひどいよね~。実験でクラギーさんリセットしちゃうなんて。」

「まんぼ、お前をいきなりリセットした奴に何か言うことはないか?」

「う~。それ言わないでよ。」

「私は気にしていませんよ。ケイ。」


次話は6日5時に掲載します。


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