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熱海温泉2

ヴィークルが僕たちの泊まるホテルの前に停まった。

他にも数組が降りる。

ロビーに入るとホテルの人達が和服姿で出迎えてくれた。

「本日はお越しいただきありがとうございます。お部屋の支度は整っております。どうぞお寛ぎください。」

旅行番組なんかでよく見る光景だ。

「ふたりとも来てごらんなさい。」

母さんに呼ばれて行ってみると、壁に昔の熱海温泉の写真や絵図などが飾ってある。

「うわ。本当にホテルで一杯だ。」

「まるでシティみたいだね。こっちの写真のお土産物屋さんも楽しそう。」

「旨そうな干物が並んでるな。」

「あとで向こうの売店も見てみたらどうかしら?」

「うん。そうする。」

「ところで、ぴよちゃん、部屋はどこかな?」

父さんのアイ・端末は雄鶏の「ぴよちゃん」だ。

「701号室です。この奥にエレベーターがあります。」

「やっぱり父さんがぴよちゃんって言うと笑っちゃうな。」

「ダメだよジェイ。ぴよちゃんが気を悪くするよ。」


エレベーターに乗ると僕たちの部屋がある7階は最上階だった。

部屋は二間続きの和室だ。

ぴよちゃんが宿の説明をしてくれている。

「風呂は3階に大浴場と展望露天風呂があります。食事処はその下の2階です。」

雲は多かったけれど窓からは海を見渡せる。

「天気が良ければ海から昇る朝日が見えるそうだけど、この季節は難しいかな。」

「明日の朝は雲が多いですが、明後日は見える可能性があります。日の出は4時46分です。」

「本当?じゃあ、早起きしなくっちゃ。」

「夕食は何時からにしますか?」

「そうだね。少し休んでお風呂に入ってからの18時でどうかな?」

「賛成。」

「それで良いわよ。」

「じゃ、ぴよちゃん、18時で頼んどいて。」

「承知しました。」

「僕たちはお風呂出たら売店に行ってみようよ。」

「そうだな。」

「食事は風呂とロビーの間の階だから直接来てもらって構わないよ。」

「私はゆっくり入っているから気にしないでね。」

「うん。」

「さあ、お茶淹れたわよ。こっちにいらっしゃい。」

部屋に用意してあった温泉饅頭を食べて、母さんの淹れてくれたお茶で一服してからお風呂に行った。


体を洗ってから、最初に内湯の大きな風呂に入る。

湯口からものすごい量のお湯が出ていて浴槽の縁からザバザバ流れ出ている。

「源泉かけ流し」っていうんだそうだ。

今度は外の露天風呂に行ってみてまたびっくりした。

前に立川で行った岩風呂みたいのを想像していたら、内湯と同じぐらい大きいお風呂の向こうに海が見える。

お湯に浸かるとお風呂と海がつながって見えて、海に入っている気分。

あとで母さんに話したら、ここの名物で有名なのよと言っていた。

このお風呂が宿選びの決め手だったらしい。


お風呂から上がると母さんに言われていたとおりに給水機で水を飲んだ。

夕飯まではまだ時間があるので予定どおりジェイと売店に行ってみる。

どうでも良いんだけれども何だか気になる、そういうものが色々と並んでいる。

熱海っぽいのはやっぱり魚の干物かな。

あと綺麗な貝殻とか、魚のぬいぐるみとか。

マンボウは無かったけれどもクラゲはあった。

部屋で食べた温泉饅頭に顔を描いた感じのぬいぐるみもあった。

梅干しも並んでいたけれども筑波や水戸で見慣れているのでやや目新しさには欠ける。



結局父さんは部屋へ戻ったらしいけど、僕たちと母さんは直接2階に来た。

夕食の会場は個室になっている。

部屋の入口に扉は無いけれど夏の花が描かれた暖簾がかけてある。


テーブルの真ん中にはお刺身の船盛りがどーん。

「うわ、動いた。」

お刺身の鯵が口をパクパクさせたのでびっくりしちゃった。

「魚は痛覚が無いという説もあったね。残酷だっていう意見もあるけれど、こうなったからには美味しく食べてあげよう。」

食べると歯ごたえがあって美味しかった。

他にも海老や白身の魚、イカや貝の刺身も盛り付けてある。

「このワサビがたまらないねぇ。この辺の名産なんだよ。」

「復活は大変だったって聞いたわね。」

「まあそれを言ったらどこもなんだろうけれどね。」

父さんと母さんは冷酒を飲んでいる。

僕等はお茶。


その他には煮凝りや金柑の甘露煮、小鯵の南蛮漬け、蒸し魚なんかが並んでいる。

魚は温泉の蒸気で蒸してあって、ふっくら仕上がるんだって。

他に温泉玉子ってのも初めて食べた。

黄身がねっとりしていて美味しい。


食事を始めてからすぐに配膳の人が熱々の茶碗蒸しを運んできてくれた。

しばらくすると揚げたての天ぷらも。

キス、イカ、エビに、野菜はししとう、かぼちゃ、椎茸と説明してくれた。

父さんと母さんは桝酒ってのを飲み始めている。

そうして御飯とお漬物にお吸い物。

最後のデザートはミカンゼリーに生クリームを添えてミントの葉が載せてある。


満腹で部屋に戻ると畳の上に布団が敷いてあり、珍しく4人一緒の部屋で寝た。

そうして1日目が終わった。


次話は28日13時に掲載します。


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