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大池タウン1

タウンへは結局20分程で着いた。

寄り道した分を加えてもサバを読んだ見込みより早い到着だ。

まだ暗くなるには時間がある。

だけど家の扉を開けると夕食の良い匂いがして空腹に気付く。

「うわぁ。良い匂い。」

「おい、少し行儀が悪いんじゃないか?」

とりあえず自分のことを棚に上げてツッコミを入れておく。

「あ、そうだね。ごめんなさい。」

ここで腹でも鳴らしたら台無しだ。


ケイを案内して居間に行くとオヤジが居た。

「ほお、連絡のあった不審者はこんなカワイコちゃんだったか。」

「カワイコちゃんじゃありませんっ!それに不審者でもありません。」

そっちに先反応するのか。

「おっと、失礼。俺はジエイの父親でタカシという。漢字で書くと地面とかが隆起する「りゅう」の字だ。」

そのとき、値踏みするかのようなオヤジとケイの間にマンボウのホロが割って入ってきた。

「失礼します。タカシ。夕食は何時からでしょうか。」

全員がキョトンとした。


「ちょっと、まんぼさんっ。」

ケイは大慌て。

「ああ、腹減ってるだろうな。風呂も用意してあるんだが、やっぱり食欲のが勝るか。」

すぐに再起動したオヤジが腕組みをして、うんうんと頷いている。

「はいはい、すぐ支度できるわよ。手を洗って来てね。ジェイ、洗面を案内してあげて。」

丁度オフクロも台所から来たところだった。

「なんだ。やっぱりジェイって呼ばれてるんだ。」

「そうだよ。悪かったな。めぐみちゃん。」

「むか!」

「あら可愛らしい名前ねぇ。」



タウンの俺の家に着いても、何故か通信機能は回復しなかった。

それを知ったケイは少し落ち込んだけど、意外と割り切りが良いのか食事が始まると気持ちを切り替えたようだ。


ケイのいる食卓は賑やかだった。

食事もいつものとおり美味しい。

でも、俺はそれとは別のことを考えていた。


まただ。

そう思った。


俺たちの一番身近にいて生活をサポートするアイ・端末。

普段はその振る舞いを気にすることもないし俺だってそうだった。


ケイは言っていた。

「水と食べ物とふかふかの布団」と。

リセットされてわずか数時間、アイ・ホストとの接続すらしていないアイ・端末が、命令ともいえない「つぶやき」をサポートすべく働くものなのだろうか。

こんな状態のアイ・端末を見る機会などないから確かなことは言えないのだが、この違和感を消し去ることができない。


夕食を終えるとオヤジはちょっと見てみるからと言い、ケイのアイ・端末を借りて仕事部屋へ。

その間に俺たちは順に風呂に入った。

風呂を済ませてバラエティー番組を見ていると、オヤジが居間に戻ってきた。

「通信はできないままだ。理由はわからない。」

そう言ってケイにアイ・端末を渡す。

「それと教えてもらったご両親と学校には連絡がついた。」

「ありがとうございます。」

ケイはアイ・端末を装着してホロを表示しながら答えた。

「それで今夜はうちに泊まってもらうことで話がついた。」

「お布団はふかふかでしょうか。」

そう言ったのはホロが表示されたばかりのアイ・端末だった。

「もちろんよ。気の利くマンボウさんね。」

「明日の午後にはここを出られるようにするとさ。」

「じゃあ、あの美味しい食事をあと2回は食べられるんですね。」

「聞いた?ジェイ。たまにはこのくらいの事を言っくれてもバチはあたらないわよ。」

もう俺の耳には何も入って来なかった。


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