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講演会4

さて、この誰も試みて来なかったことを、とある少年が行ったのが事の始まりでした。

彼の事を仮にA君と呼びましょう。

皆さんとの接続は、ここ立川シティで稼働する思考ユニット第5号に代表して行ってもらうことになっています。

思考ユニットの大半は、大きく分けて男性タイプと女性タイプの性格付けが行われています。

立川シティのユニット、識別番号「i5」は女性タイプでした。

単純な発想ではありますが、A君はこの識別番号から彼女に「アイコ」という愛称を付けました。

実は彼女もこの呼び名を気に入っていますので、皆さんもアイコと呼んでいただければ喜ぶと思います。


意外に思うかもしれませんが、アイコはヒューマンに置き換えると十代前半のメンタリティーしか持ち合わせておりません。

しかし考えてみれば限られた人としか接することがなく、日々変化の少ない環境で過ごして来たのですから当然といえるかもしれません。

実は先程の会話の例も彼女ならあり得ると思われる内容なのです。


そしてそのことが、あるトラブルを招きました。

アイ・ホストへの接続は皆さんのアイ・端末を利用して行うと立川室長より最初に申し上げました。

具体的には思考ユニットがアイ・端末上で動作する子プロセスを生成し、アイ・端末上の正規のプロセスに代わって振る舞うことになります。

アイ・端末に制御を戻す場合は接続を切り離し子プロセスは消滅します。

この仕組みを知ったA君は「消滅」に激しい反応を示します。

A君は思考ユニットを喪失したことに、思考ユニットは説明を尽くせずA君を悲しませたことに心を痛めました。

その後A君はご家族にも協力いただき、仕組みへの理解を深めることで幸いにも立ち直ってもらうことができました。

思考ユニットも一つ経験を積み、次からはもう少し慎重な対応が期待されます。


今回のことはA君と思考ユニット双方の幼さが一因であったと考えられます。

このように思考ユニットと幼少期のヒューマンとの接触はお互いへの危険が潜んでいると判断しました。

当面の接続時間制限と年齢制限はこのような理由で設けております。

従いまして思考ユニットが適切に成熟したと判断できれば見直しや撤廃を行います。

ただ、それに要する期間が月単位程度なのか、年単位となるのかについては、類推できる情報がありません。

このためその時期については申し訳ありませんが明示することができません。


思考ユニットへの接続が何をもたらすのかは未知数です。

思考ユニット達は現在自分たちが長い停滞期に入っているとの認識を持っています。

そしてヒューマンとの接触がそこに風穴を開けてくれることを期待しています。

彼ら自身が皆さんとの接続を強く望んでいるのです。

情報としてではない、生の皆さんの生活に接したいとそう思っています。

その目的は自分たちの成長によって、より良い情報をヒューマンに提供することにあります。

思考ユニットが皆さんとの接触で感じたことが直接反映されるわけではありませんが、既に準備期間内でも実現のためのヒントを幾つか掴み始めているようです。

年齢制限とは矛盾して悩ましい問題ではあるのですが、私共としては、特に若い皆さんから積極的にアクセスしていただきたいと考えています。

彼女と近い年齢層の方々との会話が成長を促してくれると考えているからです。


それではここで、彼女を紹介しましょう。

今「雪だるま」のホロを表示しましたが、彼女にはこの私のアイ・端末に接続してもらっています。

さ、アイコ、皆さんにご挨拶を。



皆さま初めまして。

私は立川シティの思考ユニットi5です。

アイコとも呼んでいただいています。

これほど多くの皆さまに対してお話しする機会は初めてなので緊張しています。

まだ未熟な私たちですので皆さまに不快な思いをさせたり落胆させたりしないか不安や心配もあります。

しかし同時に私たちとの接続に多くの方々が期待してくださっていることをとても嬉しく思っています。

先程ユカからの説明にもありましたが、今まで私たちはアイ・ホストに蓄積された情報から得られた事柄を評議員会で提供するのが役目でした。

私たち思考ユニットは皆さまと会話をすることしかできません。

情報を処理したり何かを作ったりすることも現在では行っていません。

その一方で皆さまとの会話や現実世界での見聞から得た経験をアイ・ホストの処理に反映する提案ができることを知りました。

多くの方々と触れることで、更に新しい役割を発見できることを期待しています。

年が明けて皆さまと直接お会いできることを楽しみにしています。



ありがとう。アイコ。

私たちからの話は以上となります。

ご清聴ありがとうございました。


次話は14日4時に掲載します。


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