再会3
4日目の朝、僕たちの部屋に母さんが来てアイコさんの端末をセットしてくれた。
父さんは昨夜この準備で帰るのが遅くなったからまだ寝ているそうだ。
僕は父さんに申し訳ない気持ちになったけれど、すぐアイコさんに夢中になってしまった。
「今日は展示会に来るのよね。」
朝食が終わるころ母さんが聞いてきた。
「ああ、見てみたい展示もあるから。」
「僕もジェイと一緒に回って部活動の参考になりそうなことを探すんだ。」
「じゃあ、お昼御飯の待ち合わせ場所を決めておきましょう。」
母さんはシティホール付近のマップを表示してジェイと相談を始めた。
そして場所と時間が決まると父さんを含む全員の端末に送信した。
母さんのアイ・端末は雪だるまのホロで名前は「ゆっきー」だ。
父さんは昼過ぎに行けば良いらしく朝食も食べずに寝ている。
「父さんちゃんと来るだろうな?」
「来なければお昼も抜いてもらうだけよ。」
アイコさんのことで遅くなったんだから、みんな少しひどくない?とも思ったけれど、
「良く寝るよねぇ。まったく。」
口では正直な感想を言ってしまっていた。
「さて、それじゃあ私は先に行っているわ。」
「いってらっしゃい。」
「ジエイ、ケイを頼むわね。」
「ああ。父さんのことは任されないけどな。」
「構わないわよ。じゃ、またお昼に。」
そう言うと母さんはそのまま会議の行われるシティホールへと向かった。
僕等は一旦部屋に戻り、隣の部屋の父さんを起こさないように支度をした。
展示会の会場が開くのは10時からで、まだ少し早いから公園を回ってゆっくり向かうことにした。
今日はどんよりした雲が垂れこめて寒いので暖かめの服を着こんでいる。
こんな天気なので公園にいる人はまばらだった。
「寒くないか?」
「うん大丈夫だよ。しっかり着込んでいるしね。」
僕は手袋をした手をポフポフ打ち合わせながら答える。
「我慢はするなよ。寒くなったら早めに会場に行ってロビーとかで待っていても良いんだから。」
「わかってるよ。それにしても、ここからじゃ見えないけれども近くに山があるのって変な感じだね。」
「俺は筑波山で見慣れているけれど、たくさんの山が並んでいるのは確かに雰囲気が違うな。」
「まんぼさんたちにはあまり関係ないんだよね。」
「山の近くでは天候が変わりやすいとの傾向があります。今日も日中に時々雪が降る可能性があるとなっています。」
「まんぼは実質的だな。ケイ、降られると面倒だから、やっぱり早めに行っていよう。」
「そうだね。」
会場に着いてロビーで待っていると時間よりも早めに開場した。
話題のアイ・ホスト開放についての展示ということで待っている人が多かったし、寒い中で長時間待たないようにしてくれたみたいだ。
お昼はシティホール内の食堂を使った。
待ち合わせ場所へ行くと父さんも来ていた。
僕は、ほっとしてアイコさんのお礼を言った。
お客さんは多かったけれども少し早めの時間に来たので4人で座れる窓側の席を使うことができた。
僕はカレー風味のチキンソテーセットを選んだ。
ジェイは一昨日の夜にも食べたのにチーズハンバーグのセット。
どちらも、バターライスとミニサラダ、スープバーとドリンクバーが付いている。
僕はポタージュ、ジェイはコンソメスープをとってきた。
母さんはキノコクリームのパスタセット。
ミニサラダとドリンクバーはコーヒー。
父さんはかき揚げうどんとお稲荷さんだった。
もちろん今日は昼間からお酒を飲んだりはしない。
「あら、降って来たわ。」
食後に2杯目のコーヒーを飲みながら母さんが言った。
「本当だ。雪だ。今年初めて見るね。」
「どうりで来るのに寒かったわけだ。」
「あら、朝の方がもっと冷えたわよ。」
「帰る頃にはやむかな。傘持ってきてないぞ。」
「予想では1時間ほどでやみそれ程は積もらない見通しです。」
「深夜にはまた降り出して、明朝は少し積雪があるようです。」
クラギーさんとまんぼさんが交互に説明してくれる。
「ありがとう。じゃあ大丈夫だね。」
「父さんたちは降る前に帰れそうか?」
「今日は大丈夫でしょう。ね。」
「ああ。夕食は遅くなりそうだけど、今日はふたりの起きているうちに帰れるはずだよ。」
「待っていなくて構わないから、ちゃんと食べてなさいね。」
次話は6日12時に掲載します。