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草原実習3

もう一人の主役登場。


「おいお前、何をしている。」

俺が呼び掛けると、奴はびくっとした。

でも、思いのほか落ち着いた様子でこちらを振り向いた。

「途方にくれてますぅ。」

そうでもなかった。

少し涙目だ。

「そんなことを聞いてるんじゃないっ。」

なぜかイラっとした。

「あぁ、でもあなたが来たからひとまず過去形?」

小首をかしげてそんなことを言う。

「ふざけているのか?」

「そんなひま、ありませんよぉ。」

「そのピーピー鳴ってるアイ・端末が原因か。止められないのか?」

「今考えてるんだけど、やっぱりこうかなぁ。」


そう言うと奴は何やら始めた。

「おいどうする気だ?」

近付いてのぞき込む。

「どうって、こうして…。」

強制割り込みのリセット画面が見える?!

「お、おい。ちょっと待て!」

俺が止める間もなく奴はアイ・端末をリセットしてしまった。

確かに静かにはなったのだが…。



「君は「まんぼ」。僕は「ケイ」だよ。」

奴はガイダンスに沿って設定をしている。

「私は「まんぼ」。あなたは「ケイ」。」

俺のことなど目に入っていないかのようだ。

「うん、そう。そういえばお兄さん、あなたの名前は?」

居るのは意識していたらしい。だが…、

「おい、アイ・端末に名乗る方が先なのか?」

「そういえば、ごめんなさい。」


「あらためまして僕は「ケイ」です。漢字では「めぐみ」って書くんだけどケイだからねっ。」

これ「めぐみ」って言われてるんじゃないのか?

「俺は「ジエイ」だ。ジ・エ・イ。漢字では「いつくしむはなぶさ」だ。」

俺も念を押して名乗る。

「え?うわー!すごい。」

「ふふん。格好いいだろう。気に入ってるんだ。」

アイジェイケイで三兄弟みたいだね。」

念押しの効果なく俺は早速ジェイと呼ばれてしまった。


「俺はジ・エ・イだ!っておい、アイ・端末が長男なのか?!」

「だって、アイ・端末は賢いもん。」

「たった今リセットしたばかりのアイ・端末がか?」

「あ…。」

しまった。つい余計なことを言ってしまった。

「大丈夫だもん。僕がしっかり勉強させて、すぐにジェイのことだって追い抜いてみせるんだから。」

ジェイで確定かよ。


「まあ頑張ってくれ。しかし、リセットしてもホロは残るものなんだな。」

「そうだね。何か仕組みが違うのかな?」

「他にも残ってそうなものはないのか?」

「えっと、だめみたい。電波来ないから時計も今0時4分だって。」

「リセットから4分ってことか。まあ姿だけでも残って良かったな。」

「うん。もし設定前の丸いのだとか、まんぼさんじゃなくなってたら立ち直れなかったかも。」

そう言いながら奴は設定作業に戻った。



「どう?何かわかった?」

どうせする事もないからと、ヴィークルの具合を見ていた俺のところに奴がやってきた。

近くにはマンボウのホロがふわふわ浮かんでいる。

もっと手間取るものと思っていたが、設定はそれほど時間がかからずに終わったらしい。

「いや。手も足も出ない。」

「そうかぁ。」

「ピーピー鳴らなくはなったみたいだが、そっちは終わったのか?」

「うん。「電波が来ていません。あとで設定しますか?」ってのをYESにしたの。」

「なるほどな。」


「あれ?そういえばジェイの端末はどうして平気なの?」

「知らないのか。タウンでは草原そとに出る機会が多い人は受信機能が強化されている端末を使うんだ。」

「ジェイはタウンの人なんだ。」

「ああ。そうだ。」

「じゃあ、ここはもうタウンの近く?」

「もう目と鼻の先さ。お前は…」

「ケイっ!」

「…ケイは草原実習か?」

「うん。でも気付いたらこんな遠くまで来てて、ヴィークルも動かないし、まんぼさんも変になっちゃって…。」

浮き沈みが激しい奴だ。


「お前…、ケイは原因に心当たりはないのか?」

「ぜんぜんわからない。ジェイはどうしてここまで来てくれたの?」

「あそこに、こんもりした森が見えるだろ?」

「うん。」

「ああいう所には水源があるんだ。」

「へぇ。」

「で、学校の課題で調べに来た帰り。」

「水って大切だよね。あとは食べ物と、ふかふかの布団と…。」

何だか遠くを見る目になっている。

「何だ?そのセレクトは。」

「えぇ?!幸せの必須アイテムじゃない!」

「ケイ、お前本当に13歳になってるのか?」

「う~ん。ちょっと自信ない?」


「ともあれ、そうしたら変な音がして見慣れない奴がいたから様子を見に来たんだ。」

「シティから連絡があって来てくれたんじゃないんだね。」

「残念だがな。」

「そっか…。」

やっぱり心細く感じるよな。


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