立川シティ1
第三章始まります。
あれから少し経って今回は家族旅行。
立川といえば…。
冬休みに入ってすぐ、僕たちは立川シティへ行くことになった。
アイ・システムに関する全国的な会議が行われることになり、父さんと母さんも参加するので一緒に行こうと誘われたんだ。
これまでだと二人の出張の時はもちろん寮にいたし、忙しい時なんかは週末も寮から帰らなかったぐらいだから誘ってもらえて嬉しい。
もちろんジェイも一緒。
4人での家族旅行も初めてだ。
会議の始まる日より少し早めに出発するので最初の3日間はずっとみんなで一緒に居られる。
会議を行う「立川シティホール」ではアイ・システムに関する一般向けの展示会や講演会もあるのでそれも目的。
今回の会議はアイ・ホストへの接続開放に備えたものだそうだ。
あの時アイコさんは早ければ翌週にも発表があると言っていた。
それは少し遅れたけれど、年明けに開放を行う予定であることは正式に発表された。
父さんたちはその準備で忙しくしていたので、今回は息抜きも兼ねているみたいだ。
予約した時間どおり家の前に来たキャビンに乗る。
大きさは乗り合いシャトルよりも少し小さいのだけれど、20人近くが乗れるシャトルに対して6人乗りなのでとてもゆったりとしている。
テレビモニターや荷物棚に冷蔵庫、隅にはトイレも付いていて走る個室って感じ。
キャビンは街中を少し走ってからターミナルまで降りて連絡路でシティを出る。
インターチェンジで専用道に入った途端にスピードが上がってゆく。
テレビモニターの隅に表示された速度はあっという間に時速100キロを超えた。
反対方面から来るキャビンとも良くすれ違う。
「キャビン」は高速走行用の車両だ。
専用道では時速120キロくらいまで出すことができる。
その代わりに整備されていない道路は走れない。
今日乗った家族向けなどの少人数用と、シャトルみたいに多くの人が乗れる2つのタイプがある。
多くの人を乗せて途中のシティに停まりながら長距離を運転するものを「乗り合いキャビン」という。
隣り合ったタウンやシティの間を行き来するのは特に「乗り合いシャトル」とか「シャトル」と呼んでいる。
シャトルは大池タウンから乗った時みたいに、自宅や会社など目的地の前で乗り降りできる。
乗り合いキャビンは大型の車体を使っているので街中には入れず、利用者のいるターミナルにだけ停車して、目的地との間は歩くかヴィークルに乗り換えることになる。
「ヴィークル」は道路が整備されていないところでも走れる。
その代わり専用道には入れず、速度も時速60キロぐらいまでしか出せない。
1人、2人、4人などと乗れる人数でいくつかのタイプがあり、草原実習で使ったのもこれだ。
乗り合いキャビンと同じ、多くの人が乗れるタイプもある。
主にシティやタウンの中で使われていて、街中ではキャビンとともに時速20キロが上限になっている。
キャビンとヴィークルには荷物専用のタイプもある。
時々何台か連なってすれ違う窓が付いていなかったり、客室の代わりにコンテナを積んだ車両がそう。
他に「トレイン」があるけれど、これはもっと大型の細長い車両を使い、各地方の主要シティを結んでいる。
トレインは出発と到着の時間が決まっていて、専用のトレイン・ターミナルで乗降する。
専用道とはまた別の高速軌道だけを使って最高速度は時速400キロぐらいになる。
筑波シティは通っていないけれど鶴岡シティの母さんの実家へ行くときに利用したことがある。
エレベーターなんかは好んで使おうとは思わない僕でも実はキャビンやトレインは好きだ。
早さとか移動距離とか、自分の足で行ける範囲をはるかに超えちゃって別物と感じているのかもしれない。
食べ物の好き嫌いなんかもそうだけど、こういう感覚は他人には説明しづらい。
スピード狂ってわけではないと思う。
専用道を走っていて時々見える遺跡は、昔はシティやタウンの外にも人が住んでいた証拠。
後ろの窓からは筑波山がきれいに見えている。
守谷シティ近くで利根川を渡り、柏シティから松戸シティに近づくと東京湾が見えてきた。
その向こうには首都のシティ群がどんどん大きくなってくる。
京葉大橋で東京湾を渡ると速度を落として都心のジャンクションを何箇所か通過する。
周囲を走るキャビンが増えて間隔が狭くなっている。
その間隔がまた広がってきたなと思ったら首都のシティ群はもう後ろに去ってゆくところだった。
ここから先はトレイン用の高速軌道も並走している。
甲府シティや松本シティ、その先の中部地方や近畿地方なんかへ行く大動脈だ。
そうこうするうちに前方の山々が次第に近くなる。
立川シティに到着すると山並みはもう目の前だった。
乗り合いシャトルはマイクロバス、乗り合いキャビンは路線バスや高速バスあたりが近いようです。
次回から23時間ごとの掲載に変わります。
次話は2日16時に掲載します。




