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アイ・システム2

その後、インターフェイスユニットからは設計用や医療用など専門性の高い様々な処理ユニットが派生していった。

そうして評議員会関連の役割以外を各専用ユニットに引き継ぎ、インターフェイスユニットは思考ユニットと名を改めた。

思考ユニットは全てのシティには配置されず、全国で20箇所程度にあるとされ、相互に意見を交換しながら補い合っている。


このようにして出来上がったホストの各処理ユニットと端末に対する総称として「アイ・システム」という呼び名が生まれた。

「アイ・システム」の英字表記は「AI systems」となる。

かつての人工知能「AI=artificial intelligence」を思い起こさせるが直接の関係は無いとされている。

「AI」の部分も何かの略称というわけではなく、単純に「アイ」をローマ字表記しただけだという。


命名理由は明らかにされておらず諸説あるが、AIから「人工」のAを外して「I=アイ」にしたとの説は有名だ。

実際にはシステムの母体となったインターフェイスユニットの頭文字を使ったのだろうと考えられている。

個人的には人々を「見守る目」という意味を込めて「アイ(eye)」にしたとの説が好きだ。

否定的にとらえた「監視する目」という意味では決してないと思っている。


端末は全員が持っており、ひとりひとりの生活をサポートする機能と、ホストへの情報を集める機能がある。

人工知能が研究されていた頃は機械に支配されるとか、個人にIDを付与すると生活が筒抜けになるとか、そんな不安の声が多かったそうだ。

近年のSF作品でも一時期流行していたが、意図的にそういったこと行う「もしもの世界」を想像すれば不安を理解できないこともない。

現代でも24時間アイ・システムと繋がることで、見られることに鈍感になっているという説を聞いたことがある。

だから必ず検挙される事がわかっているのに犯罪が無くならない、とそういう論法だった。

確かに普段アイ・システムを意識することはないが、それとこれとは問題が違う気がする。

むしろいつも見られ続けていても気にせずに居られるのは、公正で適切に運用されているという証拠に思える。



ところでアイ・端末が国内で100%普及した結果、戸籍制度が不要となり消滅した。

制度としての姓も無くなった。

しばらくは慣習として残ったらしいが、現在では企業名や商店名など、それと伝統的な物事に名残りがある程度だ。

文化的衰退とする説と、全員が姓を名乗った期間は数百年に過ぎず無いのが正常とする説は現在でも対立している。

その一方で名の漢字が重視される傾向が生まれ、初対面の挨拶で漢字を紹介する習慣ができた。

実質的な意味はないのだが、何だか言わないと落ち着かない気分になる。


名前はアイ・システムに「Hyyyy_mmddX.NAME_kana」の形式で登録される。

「H」はヒューマンの頭文字で固定、「yyyy」は生まれた年、「mmdd」は生まれた月日、「NAME」が漢字名、「kana」がカタカナ読み。

月日の後ろの「X」は付属情報で、同一生年月日で既に同じ名前があった時の識別情報としても使われる。

同一名は登録時に注意情報が出るのだが、それでも一度選んだ名前を付けたいという人は少なくないらしい。

アイ・端末は出荷時に「T.aabbbb_cccccc」の仮番号が与えられる。

「T」はターミナル(端末)で固定、「aa」はメーカーの記号、「bbbb」は機種の番号、「cccccc」が固有番号。

端末が個人に割り振られた時点でヒューマンの登録名を付与した「Tyyyy_mmddX.name.aabbbb_cccccc」となり、アイ・端末の名前が「name」に入る。

生まれた月日と付属情報の5桁は通常「*****」と隠して表示される。


アイ・端末は常時アイ・ホストに把握されているので紛失することは稀だが、その場合でも名前と生年月日を伝えれば、付属情報の確認などいくつかの簡単な質疑で再発行できる。

付属情報はアイ・ホストがランダムに付けているので名前と誕生日だけわかっても勝手に発行されない仕組みだ。

端末機能は最新のバックアップから再現される。


アイ・システムは世界全体で全人口の2割程度まで普及しているそうだ。

国外に行く場合でもアイ・システムのある国ではパスポート機能を持った情報端末として通用し、サービスも通常に近いものが受けられる。

それ以外の場合はオフライン設定とすることで最低限の機能のみが利用できる。

オフラインで使用するための専用パッケージも地域別に販売されている。

国外から来た人もアイ・端末を保有する人は同様に利用でき、持っていない人は入国時に預かり金を受け取り端末を貸与する。

これが結構好評で、帰国時に地域別パッケージとセットで買い取る人もいるらしい。



    ◇



「公正で適切に運用」か。

そうではない実例の顔が思い浮かんで困る。

でもこう書いておくしかないよな。


命名方法の部分はくどいかな。

こういうの結構好きなんだけど削るか。

それでも文字数は何とかなりそうだし。

クラギーさんに教えてもらった参考書も役に立った。

あとは最後のまとめをどうするかだな。


さて、情報科学史のレポートもめどが立ったから、そろそろ夕食の支度を始めようか。


アイの命名には当然のように「愛」由来説もありますが、ジェイは照れて触れませんでした。


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