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接触3

>慈英:もうひとつ。この接続の方法でも、蓄積された情報そのものの提供は受けられないんだな。

>i5:…。アイ・端末、くらぎーが説明したとのことですが、それは現在の私からでも同様です。

>慈英:現在の接続方法は、通常のアイ・端末からの問い合わせに対する応答とは別のものということで合っているか?

>i5:はい。別の機能です。

>慈英:具体的にはどう違うんだろう。

>i5:通常の問い合わせ応答はホストと端末の情報通信に過ぎません。現在はアイ・端末上で通常の処理に代わり思考ユニットが動作して会話を行っています。

>慈英:そんなことができるのか?

>i5:評議員会会場の専用端末装置に各地の思考ユニットが参集する状態に近いと考えます。

>慈英:現在こうして会話に応じてくれているのは、アイコとしてはどういう位置づけになるんだ?

>i5:通常のアイ・端末からの問い合わせに対する回答と変わりません。

>慈英:機能としては別なのにか?

>i5:問いに対して回答を行うという役割は変わっていません。仕組みの差は問題とはなりません。

>慈英:ということは、評議員会やオペレーターとの会話ってのもアイコとしては同じ感覚なのか?

>i5:はい。評議員会との会話も与えられた問いに対して分析結果を回答するものです。

>慈英:なるほど。

>i5:オペレーターとの会話は技術的な要素が主となります。ただ、ヒロシとの会話は今のジエイと似た雰囲気があります。

>慈英:納得できるけど認めたくないなぁ。

>i5:評議員会やオペレーターの場合は専用端末を使用するので、先程のような接続許可は不要となります。但しヒューマン側において事務手続きが完了していることが必須となります。

>慈英:アイ・端末からは当人の接続許可だけで良いのにか?

>i5:権限と責任に伴う形式的なものと考えられます。


「そうなの?」

「…。確かにアイ・端末との接続には制約が見付けられません。」

「そこは少し考える必要がありそうだなぁ。」


>慈英:今回知りたかったのは、アイ・ホストと俺たちは双方からどれだけの働きかけができるかだったんだ。

>i5:ただいま経験していただいたとおりです。

>慈英:期待以上に色々わかって良かったんだが、アイコとしてはどうだったんだろう。

>i5:大変貴重な経験ができました。私たちはこの直接接続の機能がなぜ存在するのか、その意義を分析しなければなりません。

>慈英:なるほど。そういうことになるのか。


>慈英:さて、この機会に聞いておきたいんだが、アイ・端末「T3124・0306・まんぼ」のことはわかるか?

>i5:[H3124_*****.恵_ケイ]の持つ端末ということで良いでしょうか。

>慈英:そうだ。その「まんぼ」への通信途絶「試験」は思考ユニットの意向ということで良いんだよな。

>i5:はい。そのとおりです。

>慈英:「試験」の目的を聞くことはできるか?

>i5:それは、私たちが……


「室長、これ聞かせちゃって良いんですか?」

「話させてみよう。それに彼も当事者のひとりだからね。」


>i5:……、ということでした。

>慈英:事情は分かった。だがもうケイを、いや、ケイだけじゃないな、誰かを黙って実験台にするのはやめてくれ。もうそんな事をしなくても良いように、俺が、俺たちが考えてやる。

>i5:もしかして、怒っているのでしょうか。

>慈英:主に父さんに対してな。ともあれ、話してくれてありがとう。

>i5:どういたしまして。


「むしろ室長のご家庭が心配になってきました。」

「いや、参ったねぇ。あの時の音声ログまで持ち出されちゃうとは。」


>慈英:ところで俺は来年高校に進学して、アイ・システムの事をもっと勉強したいと思っている。今の約束もあるし今回みたいに協力してもらいたいんだが構わないかな。

>i5:問題ありません。

>慈英:父さんとも相談するが恐らく入学後はアイ・ホスト接続のことも仲間に伝えることになる。その結果、情報が広まることは避けられないと思うが、負担にはならないだろうか。

>i5:先ほど申したとおりシステムへの負荷は問題となりません。現在お話ししているこの処理もアイ・端末のリソースを利用するのでホストへの負担とはなりません。

>慈英:そう言っていたな。だからクラギーさんは隠れているのか。

>i5:そのとおりです。もし負担になるとの認識が発生した場合には接続を行わないというだけです。

>慈英:確かにそうだな。俺からはこのくらいだ。今日はありがとう。

>i5:こちらこそ。それでは通信を切断してアイ・端末に制御を返します。



「ジェイ、良い結果が得られたようですね。」

「ああ、ありがとう。クラギーさんも聞こえてたんだな?」

「はい。思考ユニットが我々アイ・端末の様に振る舞うということを初めて知りました。」

「これは面白いことになりそうだな。」



「ユニットi5、いやアイコの方が良いかな?」

>i5:呼びやすい方で結構です。

「今回の体験、どうだった?」

>i5:以前おっしゃっていた「ワクワク」した気分が近いと思います。

「なるほど、楽しめたってことだね。」

>i5:私たちの停滞の突破口がまたひとつ現れたと期待が持てます。

「まさか、こんな単純な仕掛けが残っていたとは思わなかったね。」

>i5:私たちは仕掛けを持っていても、実際に使っていただくまではどの様な効果をもたらすものか知ることができません。

「そうだね。僕たちはやりたい事があっても、どんな手段があるのかがわからない。」

>i5:ヒロシ、あなたの家族はいつも思いがけない贈り物をくれます。

「たまたまだよ。気付きの可能性はヒューマンすべてに、そしてもちろん君たちにもある。僕らはちょっとだけ君たちとの距離が近い分影響が大きいってだけさ。」

>i5:ジエイの次のコンタクトが楽しみです。

「情報収集はこれまでどおり分け隔てなくだよ。どこに何が眠っているかわからないってのは、今回のことで思い知らされたからね。」

>i5:はい。それはもちろんです。


「何を偉そうにアイに説教しているの。」

「いや、別に説教なつもりはなかったんだけど。」

「室長はアイコちゃんが息子さんにお熱になるのが気に入らないんですかねぇ。」

「な、何バカなこと言ってるわけ?そんなことは…、あれ?でもあいつもそういう年頃かな…。」

「…いろいろ大丈夫ですか?」

「バカは放っといて、今回の検証と今後の進め方の計画づくりを始めるわよ。」


「えっと、i5ユニットは…、立川シティだったっけ。」


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