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接触2

さて、ここからが本題だ。

「ところで先程の問い合わせのような感じで、俺の方からアイ・ホスト、いや「思考ユニット」に声をかけることは可能か?」

「…。可能なようです。ただし、いくつか手続きが必要です。」

「できるのか。必要なのはやはり操作権限とか認証とかか?」

「そうではありません。単純に手順的なことです。」

「何をすれば良いんだ?」

「私から思考ユニットに接続を打診します。折り返し思考ユニットから私に接続要請が行われ、ジエイが許諾すれば接続が行われます。」

「拍子抜けするほど簡単じゃないか。」

「ただ、接続中は思考ユニットが優先するようなので、私の動作は制約を受けます。」

「話せなくなるのかな?聞くのはできそうか?」

「恐らくその様ですが、どうやら初の試みとなるらしく、実績としての情報がないそうです。」

「それも不思議な気がするが、ともかく可能ならばやってみてくれ。」

「了解しました。…、思考ユニットの応答がありました。思考ユニットからアイ・端末への接続を許可しますか?」

「許可する。クラギーさん、しばらくごめんな。」

「接続します。」

「…、初めまして。あなたがたがアイ・ホストと呼ぶ存在の思考ユニットの一つです。」

「呼び掛けに応えてくれてありがとう。ジエイだ。君を識別する情報はあるのか?」

「私は「i5」(アイ・ファイヴ)と呼ばれ、名乗っています。」

「アイの五番か。あい・ご。アイコと呼んでも構わないか?」

「アイコ…。問題ありません。」



「室長、イレギュラーの通知です!」

「何が起きたって言ってる?」

「アイ・端末を経由したアイ・ホストへの接続要請です。」

「おやおや。IDはわかるかな?」

「アイ・端末「T3122_*****.くらぎー.TT12m6_gh65d8」とヒューマン「H3122_*****.慈英_ジエイ」ってこれ息子さんじゃないですか?」

「そうらしいねぇ。」

「また何か仕込んだんですか?!」

「嫌だなあ、今回は何もしてないよ。」

「その人のことはいいから。ログ、モニタに出してちょうだい。音声も。」


>慈英:クラギーさんは初めての試みと言っていたがそうなのか?

>i5:過去にアイ・端末からの接続要請が行われた記録はありません。

>慈英:それでも接続できるようになってはいたんだ。

>i5:はい。接続を妨げるものはありません。


「どういうことでしょう。」

「重大なセキュリティホールですよこれは。すぐに対策を検討しないと。」

「でもここまで使い込まれたシステムに残っているなんて…。」

「う~ん。案外こうなることを期待した仕様だったんじゃないかな?」

「私はこれまで誰も試そうと思わなかったことも不思議に思うわね。」


>慈英:こんなに簡単にアクセスできてしまって危険はないのか?

>i5:問題ありません。主導権はホスト側にあり、端末側からの自由な侵入は許可していません。万一危険と判断した場合も接続を切るだけです。

>慈英:負荷は?例えばヒューマン全員とは言わなくても、その1%が一斉に接続を行っただけで結構な負荷がかかるんじゃないか?

>i5:懸念には及びません。その全員の情報を常時収集し、並行して処理を行っているのですから。収集活動の形態が若干変化するに過ぎません。

>慈英:それは面白いな。まるで俺たちと話したがっているようにも聞こえるんだが。

>i5:私たちの目的の一つは情報の収集です。その手段は多い方が好ましい。

>慈英:これも情報収集の一環ってことか。

>i5:私たちは端末から送られる情報の蓄積を基本として主体的に情報を集めることはしていません。現在使っているこの機能もヒューマン側からの働きかけで起動するもののようで、使用実績がありませんでした。

>慈英:すると、アイコから俺に直接アクセスしてくるということは発生しないのかな。

>i5:これまで私達から直接ヒューマンへ働きかけた事案はありません。しかし今後必要性が発生する可能性は否定できません。

>慈英:その時はどのようにするんだろう。

>i5:今回の接続の応用で可能と考えられます。アイ・端末を通じヒューマンの許諾を得る手順を経れば実現できるはずです。

>慈英:許諾が要るのなら、気付かないうちにアイコに見られてるなんてことはないんだ。

>i5:はい。それはできません。ただし、現在のように接続中でしたら、例えばこの会話自体はオペレータールームでモニター可能です。

>慈英:どうせ父さんたちだろ?

>i5:ヒロシですね。そのとおりです。会話を行っている事実は隠匿できませんが、法や規範に抵触しない限りジエイの許可なく会話のログを参照できなくする制限は可能です。実施しますか?


「ああ、やっぱりばれてたねぇ。」

「構わないんですか?」

「承知のうえならこのまま見守ろうよ。」


>慈英:いや、いいよ。問題があるのならオペレータールームからもこの接続を強制遮断できるんだろう?

>i5:はい。

>慈英:それをしてこないってことは、こうしてるのだって父さんの悪巧みのうちってことじゃないか。

>i5:オペレータールーム内の会話から察するにそのとおりのようです。


「心外だなぁ。みんなして僕の事を腹黒オヤジみたいに言うの勘弁してほしいな。」

「自業自得でしょう。」


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