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新生活2

予約した乗り合いシャトルの接近をオヤジのアイ・端末に告げられ俺たちは家の前に出た。

オヤジのアイ・端末のホロは亀の「まんねん」という。

オフクロは三毛猫の「みけ」だ。

荷物は既に別送しているので今朝には向こうへ届いているはずだ。

今日は雨は降らない予報だが、湿気の多そうな灰色の雲が東の方から押し寄せている。

俺の家はタウンの外縁部近くなので、到着した乗り合いシャトルは既に7割ほどの座席が埋まっている。

やはり俺たちが最後の乗車だったらしく、シャトルはすぐに街を離れて専用道へと向かった。


「ジエイからケイには話してないんだよな。」

「ああ、父さんから説明しておくって約束なんだろ?」

「そうなんだが兄貴大丈夫かなぁ。どうも不安なんだよなぁ。」

「オヤジもか。話を聞いたらケイがすぐにメッセージをくれると思って待っていたんだけど…。」

俺たちは顔を見合わせ、タイミングを合わせたようにため息をついた。

「まあ行けば何とかなるさ。」


父さんたちの家はシティ中央塔に近い区画にある。

今日からは俺の家でもある。

シャトルは専用道からインターチェンジで連絡路に移り、筑波シティのターミナルに到着。

ここで乗り換えたりする乗客を降ろすと次が俺たちの降りる番だった。



「え~~っ!行き別れの兄さんってジェイだったの~?!」

半ば予想どおりのベタな展開に玄関先で俺たちが脱力するのを尻目に、

「びっくりしたろう?ケイ。サプライズ大成功だな。」

父さんだけ妙に上機嫌だった。


室内に通されて、あらためて俺たちが紹介される。

ケイは初めて聞かされた話に目を丸くして聞いている。

でも、嫌がっているという感じはなく、むしろ嬉しそうにしてくれているのが助かる。


「僕の事はケイで良いけど、僕は何て呼んだら良い?」

話をひととおり聞き終わると、こう俺にたずねて来た。

「ケイの好きなように呼んでくれて構わないぞ。」

「じゃあ「おい。お前。」?」

にこにこしながら何を言う。

「何だって~?!」

セリフ棒読みで付き合ってやる。

「冗談だよ。ジェイで良い?会う前は「兄さん」って呼ぼうって思ってたんだけど…。ジェイのこと兄さんって呼ぶの変な感じ。」

「ならそれで良いんじゃないか?」

「うん、そうする。」

俺もそれが一番しっくりくるように思えた。



「それじゃあケイ、ジエイを部屋に案内してあげて。」

話が落ち着いた頃、母さんが言った。

「うん。来て、ジェイ。僕が寮に入るまで使ってた部屋なんだ。」

先に立って歩くケイに付いてゆく。

「いいのか?週末に帰ってくる時には使ってるんだろ?」

「そのときは客間もあるからね。今日はおじさん達も居るから僕は床に布団敷かせてもらうけど。」

そう言いながら部屋に入って行く。

「俺がベッドを使っちゃって良いのか?」

続いて部屋に入るとベッドの上と部屋の隅に布団と寝間着が一組ずつ用意してある。

他には勉強机と空っぽの本棚、これも中身は入っていないだろう洋服箪笥。

そして俺の送った荷物も積まれていた。

「うん。もう今日からジェイの部屋だもん。でも、荷物整理は明日にしてね。僕が寝るところ無くなっちゃう。」

「わかった。」

「明日は僕、朝には帰らないといけないから手伝えないでごめんね。本棚とかしかないけど、好きに使っちゃって構わないから。」

「ああ。」

「じゃ、母さん手伝ってくる。」

そう行うとケイはさっさと部屋を出て行ってしまった。


俺一人残された部屋は急に温度が下がったみたいな気がした。

平気な顔をしているけど、部屋を渡すの寂しいんじゃないかな?

壁にはポスターを剥がした跡が残っている。

ケイはどんなのを張ってたんだろう。

窓の外を見るとシティの中央塔が驚くほど近くに見えた。


夕食はにぎやかで楽しいものだった。

ケイも「これとこれは僕が手伝ったんだ。」とか自慢げにしている。

そういえばケイとの夕食はあの時以来2度目だ。

前回はあれこれ考えすぎて味わえなかった楽しさを取り戻すような食事だった。

そして翌朝。

ケイはあっけなく寮に戻って行ってしまった。


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