3話 創造
「ゼイク様ですね。よろしくお願いします」
そう言って目の前の少女が頭を下げる。
美少女が目の前にいてお願いされてるのは気分がいいな。
「このはしごは登るぞ、登れるか?」
俺が見た限り、目の前の少女は華奢で自分で運動をしたことがないような気がした
「はしごくらい登れます。心配しすぎです」
そう言って今にもプンプンと擬音が聞こえてきそうなほど、分かりやすく怒った。本気で怒っているわけでなく、からかっているような怒り方だった。
「それはすまなかった。俺が先に行って上の様子を見てくる。俺が声をかけたら登ってきてくれ」
俺の言葉に肯定の意志を示して、俺は先に登る。
はしごは気で作られていて、現代が想像するはしごのようだが、作りが脆い。足を掛けると軋み、揺れる。固定してあるにもかかわらずだ。
「こういう所も文明の差を感じるなぁ」
こういう細かいところも直してこその文明の進化と言える。再度、自分の目的、使命を確認し、はしごを登り続ける。
そしてはしごがあと少しというところまで来たところで、外から声がした。
「ご主人!ここに地下に繋がるはしごが!」
「っち!気付かれたか」
俺ははしごを素早く登り、俺の事を呼んでいる兵士の頭を殴る。
今更だがこの世界の技術力では防具を作ることができないようで、服ですら布に穴を開けて使っている。さっきの金持ち達は服にしては良かったが、俺の今来てる現代の服とは比べるまでもない。
だから俺が殴ってるのは生身の人間って訳だ。
「ぐっ!」
相手が怯んだ隙に、相手の棒を素早く奪い取りそれで再度頭を殴る。
相手は気を失い倒れた。そして俺はすぐさま地下にいる美少女に声をかけ、はしごを登ってもらう。
「早く逃げるぞ!」
さっき呼んだやつの追っ手が来ないとも限らないしな。
しかし、女の子の走りが遅く、いてもたってもいられず思わず抱えた。
「キャッ!な、なにを」
「急ぐためだ。許してくれ」
俺は言葉をそれで打ち切り、急いでこの屋敷、この街から逃げ出す。
しかし、その道を阻む者が
「クックック、まだ生きてる奴がいたとはな。ここで死ねぇ!」
俺はその攻撃を体を捻ってかわし、そのまま打ちかかってきた奴を抜かしてまた走り始める。
「は?なんで逃げるんだよ!そこは負けじとやり返す場面だろうがあああああ!!!」
後ろでなんか言ってるが無視だ無視。
俺は走って家が並んでいた場所から抜け出した。そして近くにある森に逃げ込む。遠くからでも燃えている街を見ることが出来た。それほどまでに激しく燃えていたのだ
「ふぅ、ここまで来れば安心かな。大丈夫か?」
腕の中でぐったりしていた少女に話しかける。
「は、はい。それよりゼイク様は私を抱えて速く走っていましたが大丈夫でしたか?」
「ああ、別にそこまで重くなかったしな。ちゃんとご飯食べてるか?」
「え、あ、はい!」
「どんなご飯食べてるの?」
俺はこの子の食生活への興味半分とこの世界の食事事情のため半分の理由で聞いてみた。
「いつも食べていたのはお肉でしたね。たまに魚が出ます」
「へぇ〜。結構いいの食べてるんだな。米や麦ってのは食べないのか?」
庶民しか食べないのだろうか。この少女の口からは農作物の言葉出てこなかったため再度聞く。
しかし、その口から出てきた言葉は肯定でも否定でもなかった。
「米?麦?なんですかそれは?」
単純な疑問。この世界には米や麦はないのだろうかそれとも高級品として扱われてるのだろうか。
「は?え?な、なら他に農作物は知らないか?」
「農作物、ですか。あ、聞いたことがあります。一説によると、特殊な魔法を使うことで地面から食べ物を生み出す伝説の魔法ですね」
「で、伝説の魔法!?」
そんな大層なものじゃないのに。農家の経験がない俺が言うのもおかしいか。でも伝説の魔法と呼ばれるほど凄くはない!
「まあいいや。そういえばなまえをきあてなかったね。名前は?」
俺はここに来て1番重要な自己紹介を始める。本来なら会った地下でやっておくべきだったが、色々あったせいで忘れていた
「私の名前ですか?えーと。私の名前はアルレ、いえ、アルです!アルって呼んでください!」
「アルか。よろしくなアル」
ここで俺達の0から始まる生活が始まった。
「まずは家を作りますか」
「家ですか?そんな簡単に作れる物じゃないと思いますが。あんなに大きいですし」
「初めは仮住宅でいいんだよ『創造』!」
俺は初めて『創造』を使用した。すると創造神様に言われたように目の前に半透明のボードが現れ、そこにはゲームの画面のような画面だった。
俺は魔力を使い『創造ポイント』をチャージする。
そして俺は魔力の半分をチャージして、50ポイントを獲得し、その内の10ポイントを使い、現代で使われる鉄の斧を創造する。チェーンソーでも良かったが、あれはポイントが70も使うため今は使えない。その画面にある斧をタッチすると手元に斧がでてきた。
これじゃ、創造というよりネットショッピングだな
「な、なんで急に物が!」
「まずはこれで気を切らないとな。剣術はあるけどそれは斧にも使えるのかな?あ、アルはここで待っててね」
「は、はい!」
俺はアルを置いて、木を切りに行った。
俺は木に対して斧を剣のように構えてそのまま横凪に振り抜く。
すると木は大きな音をたてて倒れた。そしてそのまままるで元からなかったかのように消えた
これは『創造』のスキルの『派生スキル』といい、大体のスキルについてるものと言っていた。
能力は『素材収納』創造の素材になるものを収納できる。ここに入っている物を使って『創造』を使うことが出来る。物を加工できる。自分の手を使わなくても。しかし、『追加効果』と呼ばれる効果が着くことはなく、ただの物としての効果しか持たない。だから、木工などのスキルを使えば『追加効果』を狙えるらしい。
他にも『派生スキル』はあるが紹介はその時でいいだろう。
俺は近くの大体の木を切り倒し、アルの場所に戻る。しかし、ある程度近づいた時、アル以外の声がした。
「聖女はまだか!まだなのか!」
「逃げ出したあとはあるのですが、あまだ見つかりません」
「くっ!あの馬鹿が居場所を吐かなかったせいだ」
その声はさっき戦った貴族のもので、もう1人はさっき攻撃を仕掛けてきた戦闘狂だ。
ここで人を探してるのか。俺には関係ないけど、さっきの出会いのせいで確実に敵と見られてるよな。なら先手必勝!
「はああぁぁっ!」
俺は気合を入れて斧で話していた戦闘狂に斬り掛かる。しかし、そいつは何故か反応して、咄嗟に剣のような棒でガードしようとする。しかしこの鉄の斧なら関係ない。切れ味はさっき試したし、剣術スキルのおかげで少し補正が付いてる。
相手の構えた棒を易々と切断した。相手は咄嗟に横に避けたが、躱しきることは出来ず、棒を持っていた右手も切断された。
「くっ!何者だ!お前!ってさっきの奴じゃないか!主人!こいつが聖女を抱えて出ていきました」
「なぬっ!貴様が聖女を誘拐したのか!今すぐに渡せ!それならば命だけは助けてやらんこともないぞ」
その言い方は絶対に助けない言い方だな。それにコイツは自分が不利だってこと分かってるのか?
自分を守ってくれる者の武器は斬られ、右腕は無く今も出血している状況、周りからの声も聞こえてこない。こいつの戦闘力は皆無。
こんな状況で何故こんなに偉そうにしてられるんだ?何か秘策でもあるのか?ならそれを使われる前に片をつける。
俺は斧を納刀した刀のように構える。そして俺は斧を振り抜き、右腕が無い戦闘狂に横凪を喰らわす。
武器もなく、利き腕が使えない男はそのまま斧に上半身と下半身を分けられ呆気なく散った。そしてもう1人いま貴族はビビって失禁してる。
俺はこいつのことを容赦なく斬り殺す。あいつの話が本当ならアルが例の聖女になる。アラン・ベクターとの約束を破るわけにはいかない。
そしてそのまたアルの場所に戻った