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2 東雲あざり やあ、僕はあざりだよ。

 東雲あざり


 やあ、僕はあざりだよ。


「……君、変わってるね」

 と神社の階段のところに樹が座って本(いろんな珍しい魚の本だ)を読んでいると、柱の横に立って空を見ていたあざりが樹にそう言った。

「僕が?」

 本を読んでいた樹が顔をあげてあざりに言う。

「うん。だって、僕のこと全然怖がったりしないしさ。もちろん、僕の姿が見えたり、声が聞こえたり、それどころかこうして、僕と『手と手をつなぐことすらできる』って言うんだから、これはもう変わっているというよりは、『君のある種の才能』のようなものかもしれないね」とあざりは樹の手をぎゅっと握りながらそう言った。


「ありがとう」樹はあざりに手を握られるままにして笑顔でそう答える。

「でも、あざりの言うような才能? みたいなものは僕にはないよ。僕は本当になにをやってもだめなんだ」

 そう言って樹は小さく微笑んだ。

「なにをやってもだめね」

 樹の手をそっと離してから、あざりは言う。

 それからあざりは樹の座っている神社の古い木の階段の横に自分も腰を下ろして座った。

 本物の『幽霊であるあざり』には、体重というものがほとんどない。(霊魂の重さというのだろうか? 本当に少しだけあざりにはその質量というものがあった)

 だから、あざりが古い階段の上に座っても、音も気配も、ほとんどなにもしなかった。(まるでそこにあざりという幽霊の女の子なんて本当はいないのかもしれないと樹が思ってしまうほどに……)


「それで君は自分の大好きな人に告白もできずに、こうして幽霊の僕とお話をすることで、学校帰りの時間を潰している、ということだね」

「うん。そうだよ」

 樹はあざりの言葉ににっこりと嬉しそうに笑って、そう言った。


 樹はあざりとこうして学校帰りの放課後の時間に神社で一緒にお話をするのが大好きだったからだ。

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