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11 琴音の涙

 琴音の涙


 水族館のダブルデートはとても楽しいものだった。

 怒っていた奈緒はいつの間にか機嫌がよくなっていたし、大地くんはとてもいい人だったし、琴音とも、思ったよりも緊張せずに樹は楽しく会話をすることができた。(あざりと一緒に練習をしたせいかもしれない。あざりには見栄を貼って四人でのダブルデートではなくて、二宮さんとの二人のデートだと思わず言ってしまったけど、これならなんとかうまくいったとごまかせるかもしれないと思った)


 樹は自分でも知らない間に、そんな風にしてせっかくの自分の初恋の相手である(そう。二宮琴音は楠木樹の初恋の相手なのだ)琴音とのデートの最中だというのに、心の中でずっと東雲あざりのことばかりを考えていた。


「私、あっちのコーナー見たい。ペンギンがいるんだって」にっこりと笑って奈緒が言った。

「わかった。じゃあそっち行くか。樹と二宮はどうする?」


 樹が琴音の顔を見ると、琴音は「……うん。少し疲れたから、ここで少し待ってる」と言って水族館のホールの中にあるドーナッツ型のソファー(黄色と青色のソファーだった)を指差した。


「わかった。じゃあまたあとで」

「ちょっと待っててね。二人とも」


 そう言って、(おそらくは琴音の作戦通りに)奈緒と大地は二人仲良く(美男美女の連れ添って歩く、その後ろ姿はまさに理想の恋人同士に見えた)ペンギンのいる南極のコーナーに消えて行った。


「二宮さん。ソフトクリームとか、たこ焼きとか、たい焼きとか、売店で買ってなにか食べる? それともコーヒーとか飲む?」樹はすべてがうまくいっていると思い込んでいたので、上機嫌な顔で隣に座っている琴音を見てそう言った。


 でもその瞬間、自分が大きな勘違いをしていたことに樹はすぐに気がついた。

 なぜなら、二宮琴音は楠木樹の隣に座って、ぎゅっとその両手を両膝の上で閉じながら、ふるふると手を震わせて、俯き加減のその顔についている大きな両目から、ぽろぽろと大量の涙を流していたからだった。

 

 その琴音を真っ赤になった泣き顔を見て「……あ」と樹はそう言った。

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