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第六十四話 新しいヒーラーの件

「で? 新しい子はタンクかヒーラーだっけ?」


 話を元に戻したエフィが訊ねてくる。


「ああ。出来れば先にヒーラーが欲しいと思うんだが……」

「? 何か懸念すべきことでもあるのですか? お兄様」

「いや、別に懸念というほどのものでもないんだが、人形を作る時、その人形には、その時点で俺が持っている情報が強く影響するんだよ」

「それがどうかしたの? マスター」

「今の俺だと、どうしても参考になるのがリエルしかいないんだよなぁ」


 俺は勇者パーティのヒーラーだった、あの女を思い出す。

 ことあるごとにアレクの肩を持ち、俺に冷たくしまくっていたあの聖女(ビッチ)を。


「俺的には何気にリエルが理想のヒーラーだったんだよ。性格はあれとして」


 ――むしろ攫ってくるか? そう思ってしまうくらい、今の俺はリエルを欲していた。性格以外は本当に理想だったのだ。

 でも、攫ったりなんかしたら、あの女は自決しそうだしな……。

 ……いや、それとも、ただひたすらに「おお、神よ。この人の皮を被った猿に罰を与えたまえ」とか言って敬虔なふりをして貶してくるだろうか?

 そんなことを考えていると、アイスマリーがこちらに白い目を向けていた。


「……マスター。文句を言っている割には鼻の下が伸びているのですが……」


 アイスマリーの指摘に、俺はハッとして鼻の下を抑えてしまう。


「お兄様の女性の趣味、ちょっとヤバいですわ……」


 ルナも白い目で俺を見ていた。

 そう言われちゃうリエルもリエルだが、そのリエルのことを何気に気にしまくっている俺も俺だった。……けっこう散々な目に遭わされたのにね。いや、だからこそかな? だとしたらルナの言う通り、俺の趣味は結構ヤバい……。


「……今のマスターがヒーラーの人形を作ったとしたら、リエルの分身が出来そうで怖いんだけど……」

「………」


 何も反論できなかった。


「さすがのわたしでも、あんなのがずっと近くにいたらノイローゼになっちゃうかも……」


 このエフィにここまで言わせるリエルが凄すぎる。

 そう言えばエフィは「おお、神よ。あの女にお淑やかさを与えたまえ」みたいなことを言われていたからな……。

 ちなみに俺的にはずっとあんなのが近くにいたんですけどね! 実際、ノイローゼになりかけましたけどね!


「で? それでもマスターはヒーラーを作るつもりなの?」


 エフィの目が冷たい。


「……ま、まあ確かに、あんなのを作ったら、いくら俺が作った人形といえども、めちゃくちゃなことになりそうだな……」

「だよね」

「それにどうせリエルと同じヒーラーになるんなら、本人を連れてきた方が早いしな」

「……え?」

「それだったらわざわざヒーラーを作らなくても済むし、すぐにタンクを作れるんだよなぁ」


 しみじみとそう言いつつ、どうにかリエルを仲間に引きずり込めないか真剣に考えていると、周りが呆れた目でこちらを見ていることに気付いた。


「マスター……」

「お兄様……」

「どれだけリエルとかいう女のことを気に入っているのですか……」


 はっ!? 

 い、いや、違う! 俺はあの女に結構散々な目に遭わされてきたんだぜ!?

 中でも一番ひどかったのは、ダルタニアンとの戦いの時に俺が重傷を負った時だ。

 あの女は俺があからさまに死にそうになっている時ですらアレクの擦り傷を直すことを優先しやがったからな……。あの時は本当に三途の川が見えたものだ……。

 他にもどれだけ彼女の敬虔なディスり受けてきたか分からない。それこそノイローゼになりそうになるくらいに。


 ――あれ? それなのに俺はリエルを仲間にしようとしているのか?


 やっぱり俺は病気だった件。

 俺は首を横に振ると、


「と、とにかく! 俺は先にタンクを作ることにしたから!」

「……マスター?」

「……お兄様?」

「マスター……」

「い、いや、違うから! 別にリエルを仲間に入れるとかじゃないから! ただ単に、今ヒーラーを作ったら間違いなくリエル二2号が出来ちゃうから、それを避けるためだから!」

「2号が出来ちゃう時点で……」

「リエルさんのことを気に入っているって言っているようなものですよね……」

「マスター……」


 こんなバカな!? あんなビッチのどこがいいと言うんだ!?

 どれだけ冷静に考えても、あんな女を好きになる要素はどこにもなかった。

 それなのに心のどこかであの女を欲している俺の闇が深すぎる……。


「……でも俺、先にタンクを作るよ……」

「まあ、何だかんだその方がいいと思うにゃ……」

「そうですわね。取りあえずリエルさんを忘れてもらうのが先ですわ」

「マスター……」


 さっきからアイスマリーの蔑みの目が酷い。

 しかし、アイスマリーをこういう風に作ったのも俺である。

 もはやどうしようもないと思いました。


 ……それにしても――

 さっきの声は一体何だったのだろうか?

 何故か俺はずっと気になっていた。


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