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第十一話『王都にかかる闇』

 俺はゲイルに、かどわかされた娘たちのところまで無理矢理に案内させた。

 かどわかされた娘たちは、西通りにある大きな倉庫の中に監禁されていた。

 見張りを倒した俺は、彼女たちが全員無事であることを確認する。


 殺された娘は一人もいなかった。


 しかし皆、心の衰弱が酷い。

 七人の女性たちは全員が裸の状態で両手両足を鎖で縛られ壁に張りつけにされていた。

 酷いことをされたのだと一目で分かる惨状だ。

 俺はまた激しい怒りを感じながらも、彼女たちを一人、また一人と解放していく。


 俺は彼女たちに事情を簡単に説明すると、敢えて彼女たちの前でゲイルを乙女にしてやった(婉曲表現)。

 これで全てを無かったことになど出来るはずもないが、少しでも彼女たちの鬱憤が晴れればいいと思う。

 そして衰弱の酷い彼女たちを、一人一人家まで送ってやることにする。

 倉庫の前には馬車が一台繋ぎ止めてあったので、それで送ってやった。


 全員を送り届けた俺は、その足で急いで自分の屋敷へと戻る。

 ……まだやらなければならないことが残っているからな。

 家に戻ると、先に帰っていたルナとエフィの二人に出迎えられた。

 俺はエフィに訊く。


「……何か進展があったか?」

「ううん、まだだよ。……でも、来たみたい」


 エフィのその言葉に、俺は窓から外を眺めると、丁度一台の馬車が屋敷の前に着けられたところだった。


「……来たか」


 馬車から降りてきたのは王城からの使者。

 使者が馬車から降りたタイミングで、街角から衛兵たちがわらわらと姿を現す。

 俺は青年貴族たちを解放したので、彼らの乙女になった姿(惨状)を見た誰かが通報したのだろう。

 ――まあ、そういう風に仕向けたのだが。

 俺が玄関から出るや否や、使者が言ってくる。


「ネル・アルフォンス! お前には様々な嫌疑がかけられている! 大人しく城まで来てもらおう。なお、ネル・アルフォンスの妹、ルナ・アルフォンスと、そこにいる少女も一緒に来るようにとのお達しである!」


 もちろん俺は元々そのつもりだった。

 ――城へ行って、全ての決着を付けてやる。

 ……しかし、『ルナとエフィも一緒に来るように』、か。

 恐らく参考人という建前で呼んだのだろうが……アレクの奴はどこまでも俺を怒らせたいようだな。

 憲兵たちが俺を捕縛しようとしてきたが、それを払いのける。


「なっ!? て、抵抗するのか!?」


 憲兵たちは一斉に槍をこちらに構えた。


「別にどこにも逃げたりしない。城には行く。だが捕縛される謂れはない」

「そんな言い分が通用すると思っているのか!? 貴様は既に重罪人なのだ! 捕縛されるのは当たり前であろう!」

「俺は何の罪も犯していない」

「ふざけるな! 青年貴族たちから詳細は聞いている! 貴様は彼らを去勢したそうではないか!?」

「したよ」

「な……!? だ、だったら……」

「でも罪は犯していない(、、、、、、、、)。罪を犯したのはむしろあいつらの方だ。こんなところで油を売っていないであいつらを捕えに行ったらどうだ?」

「……話にならんな。おい、こいつをひっ捕らえろ! 抵抗するなら殺しても構わん!」


 その一言で衛兵たちが俺に殺到する。

 俺は拳だけで、衛兵たちを全員吹っ飛ばしてやった。

 恐らく彼らは俺の姿すら捉えられなかったに違いない。

 あっさりと抵抗できる者がいなくなり、一人立ち尽くしたまま口をぱくぱくさせている使者。

 そんな彼に言ってやる。


「俺は勇者パーティで一番強かった男だぞ? 本当に殺せるとでも思ったのか?」

「い、いや、あの……」

「俺はまだ剣すら抜いていない。それでもまだやるか?」

「……ひ、ひぃ!」


 使者は腰を抜かして何も言えなくなってしまったので、俺は彼の腕を掴み立ち上がらせながら提案してやる。


「城には行くと言ってるだろ? ほら、俺たちを馬車まで案内してくれよ」

「は、はい! 喜んでご案内いたします!」


 その態度の急変に、ルナとエフィが顔を見合わせて苦笑していた。

 ルナはまだ若干不安そうな顔をしているが、心配することは何もない。


 ――そう、俺はこの国における全てを終わらせる。


 その後、馬車に揺られて俺たち三人は城まで連れて行ってもらった。

 道中、俺たち三人と一緒に、馬車の中にいた使者の人がずっと冷や汗を流していたが、もちろん知ったことではない。

 俺はもう自重しないって決めたからな。




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