1-2 通り雨
待て待て、落ち着け。 こういうときこそ深呼吸。
ヒーヒーフー、ヒーヒーフー。 よしっ。
「ニャーニャニャ?(あーあー神様? いませんか?)」
あれ? しゃべれない? あ、猫だからか。
ふ、猫はしゃべれない。 でも(土地)神様ならしゃべれるはず。 したがってさっきのはウソ。
よし論破!
・・・さてと、現状を整理しよう。
まず、我輩は猫である。 前も猫だったか? 前は人間だったような。 清らかな(涙)青少年だったような。
なんでこうなった? いや、それは後だ。
前の場所。 地球。 日本。 ほにゃらら県。 あとはぼやける。
おお、5W1H。 5Wってなんだっけ? いや、それも後だ。
前の時代。 だめだぼやける。 西暦二千何年だったか?
前の名前。 出てこない。 どうなってるんだろう。
好きな食べ物。 まあおいしければ何でも好きかな。
だがユリネとミョウガ、おまえはダメだ!
好きなアニメ。 なんかアニメってものすごい数なかったか? 昔はそんなになかったのに。 同じのを再放送で何回もやってたなあ。
好きなアイドル。 おお、アイドルだと年代がまるわかりだぞ。 誰だ? ピンク、いや、キャン、いや、アグネス、おお、小さな恋の物語、好きだったなあ。
待て! オレはオッサンか? オッサンなのか!?
いや、今は猫だ。 それもかわいい仔猫(主観)だ。
だからノーカン、ノーカン。 セーフ。 顔面セーフ。
まあ過去はいいや。 大事なのは未来。 これからだ。
ええと、土地神だっけ。 オレ神様になったのか? 神様っていっぱいいるのか?
あ、八百万だっけ。 和風だな。 ここ日本かな?
何ができる? 今、何がしたい? 土地神としてすべきこととは何か?
・・・昼寝かな?
あ、おなかもすいてきたかな?
のども渇いた気がする。
ええと、水?
「ニャー!(出でよ、水)」
とたんに雲が出て雨が降り出した。 しかしすぐに止んだ。
所謂通り雨である。 山の天気として不自然ではない。
「ニャー(こんなはずでは)・・・」
ブルブルっと体の水をはじく猫だった。