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初めての街

日があいてしまいましたが、視点を龍太郎へ戻し初の人里へ。

数話を街で過ごす予定ですが、そろそろ一章の終わりが見えてくる頃です

……多分

「あ、おじさん! もんが見えたよ! もうすぐだよ! がんばって!」


ぺちぺちと元気に俺の肩の上で嬉しそうにはしゃぐエッダ。

彼女の言葉通り、この世界での俺の初めてのお出かけ、2時間程のお散歩レベルの小旅行。

その目的地であるところの最も近い街、ティルドーンの門が見えてきた。


それにしてもティルドーンて。

なんとなく映画のタイトルを彷彿とさせる名前だが、元の世界では夜明け前という意味だったが、この世界でも同じでいいのだろうか。と言うかこの世界って英語とかあるのか?

文字は俺の書いた文字が普通に読み取れるらしいし、俺もこの世界の書物や文字は全て読める。

……読めるのだが、一瞬ラグがあるというか、直視した瞬間は見たこともない図柄で、その次の瞬間文字となって読み取れるというか理解できるというか……

まぁあまり深く考えるのはよそう。


ちなみにたった2時間の道程だったのだが、現代っ子な俺に5才児を肩車しながらあるき続ける程の体力があるわけもなく、道中なんどかリンとの交代を経ているのはご愛嬌である。

道中聞いた所によれば、それほど大きな街ではないが、この街は海沿いの漁師町との中継地点であり、それなりに人の行き来の多い街であることから、冒険者ギルドや商業ギルド、その他主要な施設は一通り揃っているらしい。


それとダンジョンについても道すがら色々聞くことができた。。

我らがダンジョンに関しては冒険者ギルドもかなり注目しており、なんでもそれほどレベルが高くない冒険者達の多いティルドーンでは、初級から下級の冒険者のパーティでの初挑戦ダンジョンを推奨しているんだそうだ。


それは非常にありがたい話なのだが、出来れば中級者以上のパーティで6層以下にも挑んでほしい所なのだが、そもそもティルドーンにいる冒険者は近隣の村から稼ぎを求めて出てきた次男坊や三男坊、スラム街の住人、その他元々冒険者ではなかった者などが多く、中級冒険者などは数える程しかいない。

更にその数えるほどにいる中級者達も今やソロで1層や2層に潜っているらしい。


例の6層以降のアンデッド達の事を思い、もっと深い階層へ行かないのかという質問をしてしまったが、リンとファンが珍しく答えづらそうにしていた。

どうやら上級と特級の超有名コンビが返り討ちにされたという話が広がり過ぎてしまい、街の冒険者たちは完全にビビってしまったのだ。

誰もわざわざ冒険して眠れる獅子を起こそうとは思わないらしい。冒険者のくせに。

上手くいかないものだ……。6層以下の連中もせめて冒険者と戦って破れて数が減るなら本望だろうに……。


しかしリンとファンのタッグの突破力は凄まじいものがあり、それをモニターで見てた俺が完全にビビってマスター命令でコットンに迎撃を命じてしまったので、元を辿れば俺のせいと言えなくもない。


そんな事を色々話しながら歩いていれば、時間の流れも忘れようと言うもの。

ティルドーンの門についたのは、日もすっかりと落ちた頃、いつでも取り出せるようにと、胸ポケットにいれるクセのついたスマホに表示される時間では午後の7時を示していた。


「店を出たのが5時くらいだから、丁度2時間か。……思ったより近いな」

「そりゃそうだ。っていうかアタシ達なら走れば1時間もかかんないよ」


そう言ってリンが軽やかに笑う。アタシ達という事はファンも勿論余裕なんだろうな。

1時間で10キロ走る人も元の世界には当然いたけど、俺には無理だなぁ。運動不足なので。そういえばちょっと最近お腹周りもヤバイし、俺も走ったほうがいいかも……。


思わず腹をさすさすと撫でていると、頭の上のエッダがどうしたの? と覗き込んでくる。

いや、なんでもないよと答える俺に、苦笑しながらリンとファンが手招きしている。

見れば衛兵が門を開けてくれていた。

この街の住人でもなければ冒険者でもなく、身分証の一つも持っていない100%不審者な俺、コットン、アコのトリオなのだが、ファンとリンの口利きがあれば例え不審者でも大手を振って入場出来るらしい。

それでいいのか異世界。でもここは素直に二人に感謝しておこう。


「ようこそ、旦那様! ここがティルドーンの街です!」


開いた門の内側の光景に、思わず口を開けて間抜けな顔を晒して立ち止まっている俺に、

タタタッと足取りも軽く俺の前に躍り出たヒュミルがそういって微笑みかける。

俺の目が点になっているのをみて、悪戯が成功した子供のように嬉しそうに笑みを深めるヒュメル。可愛い。


エッダも! エッダもやる! と、頭の上のエッダがペチペチと俺の頭を叩いて催促するのでおろしてあげると、姉と手を繋ぎ「ようこそ! おじさん!」と会心の笑みで迎えてくれた。こっちも可愛い。


「これは可愛らしいお迎えだね。店長クン。さて、ここが冒険者と旅人の街、ティルドーンだ。ようこそ。ここは辺境といっておかしくないんだが、それにしては驚くほど大きく、それなりになんでも揃っている。良ければ明日にでも案内してあげよう。……尤も、私もそれほど日が立つわけでもないし、ヒュミルやエッダの案内が無難かもしれないがね」


ファンが優雅な仕草と笑みで門を潜っていく。その隣にいるリンも俺の顔をみてニヤニヤしている。

俺はといえば暫し呆けて街の外と内の間。門の丁度真ん中でその光景に心を揺さぶられていた。

日は落ちているがそこそこに賑わう通りに見える人、やたらと小さな背丈のずんぐりむっくりな髭もじゃの男性。


ファンと同じく見目麗しい耳も背も長細いエルフ。

頭の上から下までトカゲそのものだが、服を着て二足歩行するなんだかよくわからないもの。


町並みは煉瓦と木材による家屋が立ち並び、海外経験はアジア圏しか無い俺としては絵画や漫画でしか見たことがない町並みが広がる。


大丈夫だろうか。二階から桶に入った内容物を浴びせかけられたりするんじゃないか。

いやでも通りにサンルーフみたいな出っ張り屋根も無いようだし、この世界は中世ヨーロッパの暗黒時代、主に衛生的な意味で。までも再現しているわけではないようだ。


あまりにも長く立ち止まっている俺に、衛兵のお二人が申し訳なさそうにコホンと咳払いをし、苦笑いで俺に早く通ってくださいと目線で促された。


「んもー、ダーちゃん流石に恥ずいし……。ほら、はよいこいこ」

「町並みにも感動されるほどピュアなマスター。……有りデス」


コットンとアコは勝手な事を言いながら俺の背中を後ろから二人で押している。

更にヒュミルとエッダに手を引かれて、俺はちょっと人生初のヨーロッパ……風の異世界の町並みに飲まれながらも、この世界で初めての人里へと足を踏み入れたのだった

会社で体調不良が続出し激務なうです……。

投稿が不安定担ってしまい申し訳ありません

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