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街へ

「おう! またきたぞリュータロウ! って、その嬢ちゃんは……ははぁ? おめぇなぁ」


先頭で並んでいたシュリフが店頭に入ってくると、俺の方の上のエッダをチラ見した後、カウンターでガチガチに緊張しているヒュミルを見やってため息をついた。


「……結局面倒みることにしたのか。甘ぇなぁ坊主」

「否定できませんけどね。でも二人とも見込みがあるんで、それを見込んでの採用だと思ってください。流石に同じような子はもう増やさないつもりです。それに見た目も小奇麗にしたんで、常連も殆ど昨日の子だなんて気づいてないっぽいですしね」

「ちげぇねえ! 俺も男のガキだと思ってたからな! とんだ上玉じゃねえか!」


ガッハッハと豪快に笑い、シュリフは今日もアイテムの買取を希望してきた。

今日の持ち込みは魔石を嵌めると冷気を放つ魔道具で、ファンに鑑定してもらった結果それほどレアというわけではないが、夏場など非常に人気がある商品だということで、大体の相場を確認する。


その後いつも通り安い、ぼったくりだ、から始まる恒例の流れが始まったが、昨日の協力のこともあるからと、思い切って査定額をサービスしてやると、それはそれで面白くなさそうな顔をしてしまった。


「おめぇそういうワビサビをちったぁ楽しませろやい。もらえるもんはもらっとくけどよぉ」


絶対このオッサン世間話したいだけだろ。


ちょっと今日は早めに店を閉めたいから、回転率をあげなきゃいけないんです。

お話だけなら手が開いてるとき聞けるから、好きなだけ店にいてくださいよ。

とやんわり答えると、「そうかぁ? じゃあしばらく店の中みてみるか」と、ニコニコで店内を巡回しながら、リンに話かけたりエッダに飴をやったりしていた。


時折リンに何か色々鋭い目つきで教えたりしているので、後から何を教わっていたのか聞いてみたら、目つきの怪しい客、素行のおかしい客などを見つけ、リンに教えていたらしい。

本当に目端が聞くというか、人間観察力が高いんだなこのオッサン。と関心した。


そして夕方、御客様が途切れたタイミングで、いつもより3時間ほど早く店を閉める。

店の正面には本日閉店、翌日お休みを頂きます。の張り紙を貼って、準備OKと。

来店してくれた御客様にも明日はお休みすることを伝えてあるので、問題ない。


「でも、本当に皆でいくのか?」

「くどいぞ店長クン」

「そうそう。アタシとファンはアンタの護衛も兼ねてるんだ。上級と特級に護衛させるなんて王族位のもんだぜ? でもアンタの身柄はアタシ達にとっちゃ王族よっか大事だけどな」


王族より大事。主に食べ物的な意味で。とかだったら少し凹むが、二人の好意は非常に嬉しい。

ファンが「どうせ我々も帰る道なのだから、気にしなくて良い」と気を使ってくれる。

実際に道中、しかもこれから日が暮れていく事を考えると二人の同行は単純に嬉しい。

なんせリアルに山賊とかでたからなこの辺。


そういえばファンが特級冒険者とかいう、世界に両手で数えられる程の数しかいない伝説的存在であると昨日ヒュミルから聞いて驚いた。

いよいよもって俺の店の従業員がおかしい。


「コットンとアコは留守番ってわけには……」

「何? 邪魔なん?」

「そ、そういうわけではなく……。ほら、コットン……あんまり人……混み好きじゃないだろ?」


人間好きじゃないだろ? というニュアンスで伝えたつもりだが、果たして意味は伝わったようだ。

ぴくっと眉を吊り上げたものの、あぁ。と頷いてくれた。


「べっつにー。人は好きじゃないけど、それよかダーちゃんだけ行かす方が心配。それにウチらが出るならこのポンコツを連れ歩くのは絶対。それくらいはわかるっしょ?」

「叩くなデス! あとポンコツじゃないデス!」


いつもよりややテンション低めのコットンがアコの後頭部をスパーンと叩きながら答える。

アコは憤慨して両手を振り周しながらプリプリしているが、確かにダンジョンの要であり俺の命そのものでもあるアコを一人で留守番なんてさせられるわけもない。

いや、心情的にも一人で留守番は流石に可哀想だしね……。


「おねえちゃん! みんなでおでかけ! たのしいね!」

「うん、そうだねエッダ。楽しいね」


元々今日の予定は、ヒュミルとエッダの世話になっていた魔具屋のおばあさんとやらに、今後ウチで面倒を見ることになりましたというご挨拶にいきがてら、二人の住処にしていたスラム街で必要品の回収。

折角なので俺としてもギルドにご挨拶をしておきたいというのと、何よりずっと気になっていた街に行ってみたいという俺の希望で、店を早じまいし、姉妹を送りがてら街へといくことになっていた。


当初は3人でいこうかなんて考えていたが、それを聞いたリンとファンが激怒。

絶対に譲らんと護衛することを頑なに主張し、それを近くで耳を欹てていたアコがコットンにタレコミ、二人もマスター1人の単独行動など罷りならんと同行を主張。

結局全員でいくこととなり、今に至る。


流石に子供二人と俺の3人で行こうとしてたのは流石に無謀すぎると全員から散々怒られ、反省した次第である。


ちなみに夜に街についた場合、ファンとリンのどちらかがいなければ、恐らく街にも入れてもらえないぞというシュリフのありがたいお言葉もあったので、そこはもう皆には従うしか俺に選択肢はなかった。


「まぁ確かに皆がいてくれたほうが心強いか。それじゃ、皆、よろしく頼む。あ、エッダは街まで歩けるか?」

「うーんと、あるけるよ!」


ファンの真似か、顎に手を当てて俯いて考える仕草が皆の笑いを誘う。

歩けるよと元気に答えてはくれたが、街までは凡そ5キロ。少し幼児の足にはきついか。


「そっかー歩けるか。偉いな。それはそうと、俺の肩車と背中におんぶとどっちがいい?」

「かたぐるま!!」


問いかけにとびっきりの笑顔で、目を輝かして答えるエッダ。あー癒される。

おっけーとそのままエッダをひょいっと肩に担ぐと、横からヒュミルが慌てた顔をしている。


「ヒュミルも肩車するか? 順番だけど?」

「は、はい! じゃなくて、大丈夫ですか? 旦那様」

「まぁしばらくは平気かな。二人共軽いし。疲れたらリンもいるしね」

「おう、リュータロよりアタシのが力あると思うよ」


そう言いながら力こぶを作ってみせるリンがヒュミルを軽々と持ち上げる。

エッダのペースに合わせると完全に日が沈んでしまいそうだしな。

折角皆でいくのだ。楽しくいこう。


「よし、じゃあ忘れ物はないな? 向こうで今晩は一泊する予定だ。じゃ、出発!」


皆思い思いの返事をして出発すると、店舗から50M程離れたところで、何か膜のようなものを通り抜けた感覚があった。それと同時に酷く不安な心持ちになる。

俺がよくわからないままキョロキョロとしていると、コットンが俺の肩をポンと叩き、『圏外』になっただけ。と教えてくれた。


なにやらダンジョンの力の及ばない範囲に出たということらしい。

何が変わったのかはさっぱりわからないが、俺は今始めて、本当の意味でこの世界で、家から出たということになるのかな?

まぁそれでもなんとかなるかと、頼りがいのある仲間たちを見回して、段々と夜の明かりをともし始めている街へと向かってあるき始めた。

今回は少し短いです。

明日も23時に更新します

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