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ディパーチャーズ

「それじゃあアタシを助けてくれたのは、やっぱりリュータロ、あんたなんだな」


温かいカフェオレのカップを両手で包み、ほぅと一口飲んだ後のため息と共に、リンがそんな事を言った。


「だから、俺はダンジョンにはいってすぐの所で君を見つけただけだよ。一人で行ってしまうから心配していた所に、見つけた時は心臓が止まるかと思った」


勿論、100%まじりっけ無しの嘘だ。

サクッとコットンが彼女を倒すのを見て、アイツマジで触るだけで人殺せるのかよ……。と若干ドン引きした。

なんか頭ごなしに命令しちゃったりとかしちゃったけど、念のためカップ麺用意しておけば機嫌直してくれるかな? と、自分の心配だけはしていたが。


帰ってきたコットンが腐ったタラコみたいなヤバイ色のオーラをユラユラさせてるのを見たときは、別な意味で心臓が止まるかと思った。物理的な意味で。


「悪ぃ……格好つけて出て行って、この様だ。……それに何にも、その、持って帰れなかった……」


ダンジョンに潜る前の様子とは打って変わって、シュンと小さくなってしまったリーン。

まるで叱られた子犬のような雰囲気が、どこか庇護欲を掻き立てる。

まぁそんな彼女が何をそんなに落ち込んでいるのかと思えば、どうやら彼女はカップ麺の代金分の働きも、それに充てるつもりの収穫も無かった事に落ち込んでいるらしい。

何だそんな事かと思うが、彼女は律儀な性質なのだろう。……うん、胸が痛む。


「そんなこと、無事に帰って来てくれただけで十分だ。コットンの診立てでは、生命力が少し失われてるってことだし、今はゆっくり休むんだ。食欲はあるか? 良ければ食事と、今晩はゆっくりうちで休んでいってくれ」


余りの罪悪感にせめてものという気持ちで言った言葉だが、リンはボロボロと滂沱の涙と鼻水を流し、お前本当に良い奴だなぁ……と力いっぱい抱きしめられた。

あ、やっぱなんかこの娘、お日様っぽいっていうか、干した布団みたいないい匂いがするぅー。とか我ながら変態っぽいことを考えながらその感触を堪能しつつ、すいません。あなたをダンジョンで殺してソウルを奪ったのも僕なんです。

と、喉まで出かかる言葉をグッと飲み干し、気にしないでくれとされるがままになっていた。

満喫してたらコットンが無言で殴ってきたのが納得できない。

アコも、こっち来いよ! カモン! みたいに両手を広げなくていいよ。お前を抱きしめると色々まずいだろ。児ポ法とか。


その後は動けるくらいに回復したリンが期待した目でチラチラこちらを見るので、諦めてカップ麺とチンするご飯という俺としては質素な。

こちらの世界の住人からすれば夢のように豪華らしいな晩飯を食べて、情報収集という名目の歓談で夜も更けていった。



その翌日。

リンを迎えに保護者がきた。


「やだ! 帰らない! アタシもこのうちの子になる!」

「……何を馬鹿なこと言ってるんだ君は。……すまないね店長くん。世話になってしまって」


長身のふわりとした雰囲気を纏った美しい女性、まるでCGで造型した妖精のようなとんでもない美人が、眉根を寄せて申し訳なさそうに俺に頭を下げ、その手にはヤダヤダと駄々をこねるリンの首根っこを掴み、逃さないようにしている。見た目よりも案外力持ちらしい。



話は少し前に遡る。

美味い飯、暑くもなく寒くもない空間。そしてフカフカで暖かい布団。

それらにリンはがっつりハートキャッチされてしまったらしい。

普段着なのか、ゆったりとした藍色のチュニックを着て、物凄くリラックスした様子のリンがニコニコで食卓に座っていた。


放置するのもなんだし朝飯くらいは出すか。と思ったは、朝からカップ麺は流石に重い。

つか俺こっちに着てからカップ麺しか食ってない気がする。


よし、朝だしシリアルにしよう。ということでシリアルに牛乳をかけて出してやった所、あからさまにガッカリした顔をしていたが、一口食べてからは目を輝かせてガツガツと平らげていた。

そんな彼女を見て俺とコットンが内心「この人いつまでいるんだろう」と考えていたところ、アコが俺の裾を引っ張って告げた。いつのまに着替えたのか、今のアコはピッチリした黒の全身タイツのような姿ではなく、フリフリのエプロンがついたメイド服になっていた。


俺のPCの秘密の画像フォルダに非常によく似たメイド服の写真があった気がするが、まさか俺のPCという名の宝物庫の鍵はまだ破られていないと信じたい。


「……侵入者、デス」

「ん? ああ、敷地内に誰か着たってことかな? また冒険者か?」


もしそうならまたシャッターを叩かれても困る。チャイムなんて言っても通用しない文化圏だということは、既にリンで学習済みだ。


「しゃーない。じゃあちょっと俺外出て来るわ」

「いえ、 そんなこと認められないデス。奥様、ここは奥様が」

「んー? めんどーい」


コットンはリビングに設置してある人をダメにする棒クッションの上でグデっとなり、やる気のなさそうな返事を返す。ありゃダメだな。


「アタシも反対だ。アタシが言うのもなんだが、リュータロは危なっかしい。警戒心も足りないし。だから、ここはアタシに任せな」


そうウィンクすると、リンは颯爽と魔剣を担ぎ、窓から躊躇せず飛び降りた。

一応ここ2Fなんだけど。あとアイツ裸足だったよな。野生児なの?

帰ってきたらまた足拭かせなきゃ……。


「止める間もなかったな……」

「まぁ、宜しいのでは無いデスか? 無駄飯食らうだけの乳に価値はないデス」

「あぁー……この、これ。このクッションやばい……ダメになる」

「無駄飯食らうだけのアンデッドとかマジで価値が無いデス」


アコの辛辣な言葉に苦笑していると、妙に外が賑やかな事に気がついた。


「アコ、侵入者って複数か?」

「いえ、侵入者は一人。冒険者。エルフ。デスね」


エルフという言葉に驚きと共に、衝撃を隠しきれない。

やっぱりいるのかエルフ。流石ファンタジー! これぞファンタジー! 不本意ながらこの世界に飛ばされたとは言え、こういう世界観には憧れだってある。

そうなると俄然俺もお会いしたい。お近付きになりたい。


「り、リンの奴遅いなぁー! 俺もちょっと外の様子みてく」

「やだぁぁ! やだやだ! やだー!」


俺が落ち着き無く腰を浮かしたタイミングで、絹を裂くような女性の悲鳴。

というかリンの絶叫が響き渡った。


「いい加減にしないか! 心配してきてみれば君は……全く!」

「いいじゃんかよー! まだ依頼未達成なんだしさぁ! 拠点! アタシここを拠点にするから! だから帰らない! 帰りたくない!」


慌てて外に出てみると、エルフの侵入者と思われる女性が、リンの首根っこを掴んで拘束していた。

リンはといえば身長差のある相手を振り払う事もできず、腕も後ろ手に光る輪っかのようなもので縛られており、子供のように地団駄を踏むことしか出来ないでいる。


「突然街からいなくなったと思ったら単独で依頼を受け、私に断りもなく出立した上に帰らないとは、よくよく君にはパーティというものがどういうものなのかを、改めて、徹底的に再教育しなければいけないようだ」

「あのー……彼女のお連れの方、でしょうか?」


相棒がいるってそういえば言ってたっけ? と思いながら、なんか凄いことになっている。

冒険者仲間というよりは親子、いや、歳の離れた姉みたいにも見えるな。

突然声をかけた俺に一瞬片眉を上げて、怪訝そうな顔つきになったが、すぐに何か思い当たったように「ああ」と小さく声を上げると、女性は胸に手を当てて優雅に一礼した。


「失礼。彼女が世話になったようなんだが、君がこの館の主で相違ないだろうか?」

「あ、はい。ここの店長の志波龍太郎と申します」

「ん? 店長? 商店なのか? ダンジョンの目の前に……?」

「あ、いや、えーっと」

「おいファン! リュータロの嫁は学者先生なんだよ! お前とおんなじ! そんで、リュータロは嫁を支えながらお店やってる凄い奴だし、めちゃめちゃ良い奴なんだぞ! あとそろそろアタシを解放しろぉ!」


訝しむような彼女の視線に、どう答えたものかと言い淀んでいると、リンが声を荒げて割って入る。正直非常に助かるけど、流石に持ち上げられすぎてて少し面映い。


「はぁ……全く人が話しているというのに。まぁ君の言い分も尤もだ。失礼したね、店長クン。改めて、私は名をファレンシア・リップバーン・ペぜウェインという。長い名前だろう? 私はエルフでね。名前が長いのは種族的な慣習だ。あまり気にしないでくれ」


そういってパチンとウィンクをするファン。やっぱ美人は何やっても様になるな。


「あ、よろしくお願いします。えと、リンを迎えに来られたんですか?」


そう聞いた俺に、ファンさんは額に手を当てため息をつきながら頭を左右にふると、疲れたようにその通りだと答えた。

「ああ、我々上級以上は所在をある程度はっきりさせておく義務があってね。街で私が用事をたしている間に、勝手に依頼を受注し、こんな所に来ていたのがこの馬鹿者さ」


相変わらず首を掴まれたまま、唇を尖らせたリンがそっぽをむいている。

なるほど、昨日もろくに話しを聞かないでダンジョンに突撃していたっけ。

ため息が多いエルフからは、暴走癖のある若い相棒に苦労している節がありありと見て取れた。


わかるわかる。若いアルバイトとかでたまにあるんだよな。

3ヶ月くらいたって自信がついた頃に暴走して、自分の判断で無茶な査定で客を怒らせたり、逆にミスって大損したり。

まぁ何事も経験だから仕方ないといえば仕方ない。

同じことを繰り返すようなら厳しく注意しないといけないけどね。

そしてファンとリンを見ている感じ、厳しく注意をしてきた結果が今なのかもしれない。

なんとなくだが、見た感じそんなに浅い付き合いではなさそうに見える。


「そだ! ファンもとりあえず上がれよ! 丁度今飯食ってたんだ! いいだろ!? リュータロ?」

「え、ああ。まぁ、勿論大丈夫だけど」


ここはお前の家かと一瞬思ったものの、俺はチラッと横にいるアコの顔を見る。

俺の顔を目を細めて見上げ、小さくため息をついたように見えたが、では準備をしてまいります。と一言告げると、先に建物の中に戻っていった。


「いや、それには及ばない。私はこの馬鹿を連れ戻しにきただけだからね」

「やああああだああああ!」

「ま、まぁリンもこう言ってますし、朝飯くらい食べ終わってからでいいんじゃないですか? 折角ですから、ファンさんもご一緒して頂けませんか? 色々お話も伺いたいですし」

「そ、そうかい? そこまで言われたら、断れないね。ではご相伴に預からせて頂こう」


口ぶりの割にはいそいそと建物のほうに向かっていくファンさん。

拘束を解かれたリンがぼそっと「アレ絶対気になってたんだぜ」と告げ口してくれた。

それはいいけど、リンはまさか本気でうちに住むつもりじゃないよな?

流石に色々問題がある。主にダンジョンマスター活動。略してダン活に。


その後は大体リンの時と同じ流れだった。

足のクレンジング・マッサージから始まり、食事に驚いて、ちなみにファンさんはシリアルが滅茶苦茶お気にめしたらしく、真剣な顔で研究材料として買い取りたいと詰め寄られたときはちょっと怖かった。

美人は迫力があるのだ。


最初は基本のドライフルーツのタイプを出したのだが、余りにも美味そうに食べるし、エルフの王家で特別なときに食べる食事よりも美味だとか言い出したので、気になってチョコシリアルやその他何種類か振る舞った所、全部買いたい……でも、でも。と、なんか涙目になってオロオロしていたのが物凄く可愛かった。

まぁ数に限りがあるものなので、また着てくれたときにご馳走することを約束して、今回は諦めてもらった。


その後二人は「リュータロに恩を返すためにも! 行こうぜファン!」と、リンが昨日の事をまるで忘れてしまったかのような妄言を吐いたかと思えば、「確かに、それだけの価値がある歓待だった。私に異論は無い」とかファンさんもノリノリで、二人で完全装備でダンジョンに再突入し、破竹の勢いで攻略を開始。


最初は未練がましくコアルームにまでダメになる棒クッションを持ち込んでいたコットンも、珍しくアコと共謀し、ダンジョン5層に2ソウルを消費して錬成した細長い通路に誘導、半ばに差し掛かった所でコットンが通路を丸ごと飲み込む勢いで怪光線を放ち、二人を葬るという鬼畜の所業を行うに至った。


その後リンの時と同じく二人をダンジョン入口までスケルトン君達に運ばせ、回収。

そのまま布団で二人を寝かせて、目が覚めたら落ち込む二人を励ましつつ食事と風呂、しばしの歓談。

ファンがヤケクソになったようにカップ麺の構造や冷蔵庫、レンジ、その他の電化製品をについて質問されまくった。

なんでも彼女の本職は魔道具学者で、その業界では権威と呼ばれているらしい。

とは言っても俺も専門的な返答など出来るわけでもないので、壊さない限りは好きにいじっていいよと告げると、ぱぁっと花が開いたように素敵な笑顔を向けられた。

普段あんまり表情の変化はなさそうだけど、こういう時の顔はめっちゃ可愛いと思う。


ちなみに俺は俺で、ファンがエルフと聞き、この世界で初めて異世界らしいまともなファンタジーに触れているということで地味にテンションがあがってしまったらしい。


うっかりスマホで姪っ子の写真を見せてしまった所でファンの態度が激変。

ここに置いてほしいと猛然と土下座され、おろおろしながらそれを見ていたリンもよくわからないまま「あ、あたしも!」とその横で土下座。

一旦は丁重にお断りしたものの、二人はそれぞれの理由で意志が硬く、

流石に俺たちの事情を全て詳らかにするわけにはいかないので、暫定的にここのアルバイトとして雇う事になった。


こうして、俺の異世界生活は2日目を終了した所で、上級以上の冒険者二人が入社希望するという、わけのわからない結果に終わった。




「あれ? ソウルがなんかいっぱいある」


二人が一度荷物をまとめに街に戻ると出ていった後、俺は布団を干してからダンジョンのコアルームへと向かい確認した所、そんなことに気づいたいた。

ソウルとは非常に便利なもので、ダンジョンにおいて言ってみれば通貨でありエネルギー源でもあり、という重要なものということらしい。

アコ曰く「ソウルがあれば! 何でもできるデス!」と、どこかのプロレスラーのような事を言っていた。


コアはそのソウルを消費することで、魔物の創生、ダンジョン施設の拡充、アイテムの生成など、様々なことが行える。前回ダンジョン5層に細長い通路を作ったりしたのも、ソウルがアレば簡単なことだった。


出来ることに関してはカタログのようなものがあり、それから選んで対価となるソウルの消費をすれば出来上がり。というお手軽さだ。

勿論ダンジョンマスターの最終的な目的が、己の願いを叶えることと言う事であれば、以下に浪費せずやりくりするかが非常に重要なポイントになるのは想像に難くない。


ではそのソウルはどうやって入手するか。

それはただ一つ。侵入者を殺すことで、その生命力を奪うことでのみ手に入る。

しかし面白いのは、殺して奪えるソウルをどの程度奪うか? 

これを決める権限をダンジョンマスターは有している。

10割とすれば即ちそのダンジョンでの死は避けられぬ死となり、5割であればその生命、魂を半分奪われ、少なくとも数年は冒険者など出来るような体ではなくなる。だが少なくとも死なない。その場では。


それがデスペナルティ。ダンジョンで死ぬことで支払う代償の多寡はそれこそ冒険者にとって、そしてギルドにとって、何よりも欲しい情報であるそうだ。そりゃまぁそうだろう。

誰だって死にたくなんてないしな。命がけが当たり前の仕事だからって、死なないならそれに越したことはないんだ。


そして、俺が設定したデスペナルティは生命力の1割。設定できる下限。最低値だ。

やっぱり俺は人を殺すことを良しとしたくない。へたれと言われようが人の死を齎すのも、見るのも嫌だ。こればっかりは現代社会に生きる日和見な日本人なんだから仕方ない。


そこでこのデスペナシステムは渡りに船だった。生命力の1割を奪った程度では人は死なないらしい。

せいぜい1日から1週間程度動けないくらいのもんだ。

回復アイテムもあって、それを使えばすぐに復活する、らしい。


そして俺はすべてのモンスターに命令を出した。殺した相手の死体の損壊、アンデッド化を禁ずると共に、入口付近まで運び出すこと。


デスペナ適用後の自動復活は、実は結構適当なものになっていて、死に至るほどの外傷は治癒するが、それ以外の生命活動に問題ない傷までは治らない。

つまりそこから動けないほどの傷を負っていた場合は、復活した直後再びモンスターに襲われる無限ループがあり得るのだ。なので、入口まで運ばせる。

傷があんまりひどいようならコットンにお願いして回復してもらってもいいが、まぁそこまで心を砕く必要はないだろう。彼らだって自己責任で戦っているわけだし。


それに、俺も犠牲になるモンスターに多少なり愛着が無いわけでもない。いくら無尽蔵に湧くとはいえ、彼らが砕かれていく姿を見ると少々心が痛むのもまた事実。

そう、リンのときに思った。あいつらは只々ダンジョンを、引いては俺を守りたい一心であんな化物みたいなリーンに向かっていってくれたんだよなぁといったら、


「ダンジョンが破壊されれば彼らも当然滅ぶのデス。結局自分たちを守るために戦っているに過ぎないデスよ。お優しいマスターが気にされる必要はないのデス」

「ま、癪だケドそれに関しちゃ同意カナ? ……でも、アンデッドもそういう風に見てくれるダーちゃんのそういうとこ、結構良いナって思うよ」


アコとコレットにそう笑われた。


そして問題のソウルである。俺がアコを作った? 時に、ちょうどすべて使い切る形で100ソウルを消費した。

その後リンをアレして得たソウルが恐らくこの10ソウルだと思われる。それはわかるんだが……。

先のリンの説明では人間のソウルは10。そのうちの1割を奪うということだったので、当然1だろうと予測していたのだが……。


「で、ソウルが28もあるんだけどこれ……二人が本当は完全に死んでるなんてことないよね……?」


実は生きているように見せてあの二人はアンデッドに……なんてこと、コットンならありえるかもしれないと思えるのが怖い。


「落ち着いてくださいデス。マスター。無能な奥様もそこまで無能では無いデス」

「誰が無能か。あんたいい加減にしないとマヂ割るかんね。……で、ソウルだけど、大体普通は10で全部くらいだけど、たまにいるんだよね。めっちゃ生命力に溢れた冒険者。王族とか貴族とかに割と多いかな? あと長命種とか。もしかしたらあの娘もそういう出なのカモ? まぁ当たりっていうか? ラッキーくらいに思っとけばいいよ」


いっそあの二人の部屋をダンジョンに用意してやって、毎朝回収したらソウルザックザックでお得じゃね? とか鬼畜なことをコットンが口にする。アコも一考の価値ありみたいな神妙な顔をするんじゃない。


しかし生命力が多い……そういうもんか。

ファンさんはそう言われれば納得できるけど、実はリンもあんな出で立ちと態度に似合わず、もしかしてやんごとなき立場の人間だったり? 

ないな。ないない。あの駄々っ子っぷりを見た後だと余計にそう思う。

もしかしたら上級冒険者っていうのはそういうものなのかな? まぁ覚えておこう。


「んで? 結局ダーちゃんはどうしたいの? っていうか何しよーっての? いい加減教えてほしいワケ」

「ん? さっきアコの言った通りだよ。商売を始めるんだ」

「だーかーらー。ダンジョンの何を売ったり買ったりすんの。それにそんなんでソウルが稼げるわけないじゃん?」


呆れたようにため息をつきながら、頬を膨らませて俺の首に腕を巻きつけぶら下がるようにするコットン。

ダンジョンとは攻略せんとする冒険者を迎え撃ち、罠にはめ、生き死にを賭す物。

そんな常識を持つコットンには、悪いが俺の考えは想像しえないだろう。

だから、呆れたり怒ったりと目まぐるしく表情を変えるコットンに、ニッコリ営業スマイル全開でこう言い放つ。


「俺が出来る商売なんて一つしかないよ。……中古屋を、この世界でもやるだけさ」


チュウコヤ……? と呟き首を傾げる。必死に自分の記憶野から該当する言葉を探しているのだろう。

アコはと言えば相変わらず幼女故のぺったん胸を思い切り反らして、ドヤ顔をしている。彼女も具体的な内容は知らないはずなのだが、どうしてあそこまで自信があるのかが不思議だ。


何はともあれ、愛社精神に溢れる俺は、この世界でも『せかんどはんず』異世界店としてやっていく。そう決めた。

それが俺にできる唯一のことで、願いをかなえるための一番の近道であると信じて。



本日はもう1話投稿できればと思います

出来なかったらごめんなさい・・・

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