エピローグ
「もしもし?」
聞き覚えのある声だ。
まあそれはもちろんのこと。
通話相手は俺の彼女である江戸川さみず。
通話画面からもしもし?と連呼しているのが聞こえたが
今はゲームに専念してるので後でかけ直すと
なげやりにいった。これでいいだろう。
正直彼女の扱いは大変なのが現状だ。
世の中の大抵の輩は恋愛を幸せやら、楽しいやら、
まあ色々ポジティブに考えられるもんだ。
俺には理解できない…
そんな思想を抱いていたが、どよーんとした異世界へ足を踏み入れるかのようにゲームに夢中になった。
「こいつつえーw」
正直な感想が口からこぼれた。
なんだよこいつまじで…もう軽く50回は再チャレンジしてる…
七転び八起きだ!と、自分をふるいただせたが限界だ。
それに七転び八起きどころじゃない。ゲームも人生も恋愛も
何回転んだか分からない。
「そいや明日も学校か…」
乾いた笑みがこぼれる。学校はさほど嫌いじゃないが、
現代の高校生はヤバい…色々。だからついていけない。
それどころか、俺の脳が拒絶反応を起こしてる。
でもまあ、いつもとやることは変わらないだろう。
適当に過ごしていればいい。
そいや、両親は旅行にいったんだっけか。
やたら静かでこの家だけが別世界のようだ。
それは俺の感情とどこか似ている気がする。
スマホに手を伸ばすと着信履歴が3通。
あ、すっかり忘れてた。
めんどいけど電話しよう。
薄暗い画面をスクロールする。
心も体も省エネなのでもちろんスマホも省エネ。
俺はいろんな意味で地球に優しいな。
それにしてもコールが長いな。
「もしもし?」
またもや聞き覚えのある声だ。
「俺だ。なんかよう?」
「なんか時差ボケしてるよ…まぁそれはおいといて、
今から遊ばない?優衣香と、小豆葉と、あと茂之もくるって!」
「え、むり。」
即答した。現代の高校生の象徴ともいってもいい。
それに人数編成がおかしい。3:2…化学ででそうだ。
あともう一人いるはず。
「安岡は?」
「んとね、誘ったらそれと同時におきたみたい…だから遅れるって」
あ、そう。まぁ予想はついてた。
「場所は?」
「駅前のとこ!」
あ、はい。君たちの聖域ですね…
「準備したら行く」
「わかった!」
やたらとうるさい声だ。
面倒だが行くか。それにあいつらとは長い付き合いだ。
特に安岡…。
「さて着替えるか」
だってこの服装どよーんとしてるし。
一応服には詳しい。親父はスーツとゴルフに命をかけてる。
だからそれなりのブランドも知ってる。
しびや109とは訳が違う。
とはいったものの服装はモノトーンである。
カラス族だなこれw
お気に入りの通学用チャリにまたがり、駅の駐輪上まで一走り!
春風が気持ちいい。でも花粉やだ!
目薬を常備、薬はあらかじめ飲む。完璧だ。
そうしてるうちに駅到着!
駐輪場にチャリを置き、ICカードで改札通過。
あのタップした時の音好きw
目的地まではNR東海道線で1駅だ。
さてリア充の聖域に向かうか…
でも俺も世間一般から言えばリア充なのか。
自分は彼らと、彼女らと、どうしたいのか。
そんな考えがふと、よぎった。
それはまるで出口のない迷宮迷路のようだ。
優しいはずの春風が俺の本性をかくまってるきがした。