8 初めての冒険(2)
”至高の47”の1つ。
”幻の禁書の一つ”。
表、裏、背表紙は分厚く縦四十㎝、横三十cm、厚さ十五cm程の大きさで全体は白く、表表紙の中央には黄金の十字架、裏表紙には暗黒色の何かのエンブレムのような装飾がされている。さらに表裏や背には独特の羽のように見える門が施され革のベルトで結べるようになっている。
「これも試してみるのにいい機会だ。」
一神斎は禁書をぺらぺらと適当に流し開きする。
見た目に反してあまり重さを感じない禁書のページはまるで読んでいるうちにページが追加されていくかのように終わりが見えない。
「頭の中で念じるとそのページに飛ぶのか・・・」
禁書は種族やレベルで細かく分類されている。
レベルも下位・中位・上位・幻位の召喚獣がいるようだが最後の7ページには召喚獣の情報やレベルが記されておらず、姿もシルエットになっている。
「これが”1部の7体”か・・・これらはもちろん、この遺跡なら上位や幻位も今回はいいだろう。」
残りの下位と中位の中から選ぶことになるがこれでも種類が多いので非常に困るのだ。
ただでさえ優柔不断なのに数ある召喚獣を選ぶのは何とも大変だ。いっそのこと大軍で遺跡に入ろうとも思うが遺跡を破壊しかねないのでやめておこう。
「とりあえず今回はこの二体を召喚してみるか。」
「召喚!下位「スケルトン戦士」。召喚!中位「デビルアーマー」!」
一神斎が叫ぶと目の前の地面から紫色の発光体から2体のモンスターが現れる。
一体は人間の骨格だが骨しかなく、薄汚れた剣と盾を装備した下位モンスターの「スケルトン戦士」。
もう一体は先端が四つに分かれた赤い槍と1mほどの長さの黒い盾を装備した赤と黒の全身鎧の中位モンスター「デビルアーマー」。
2体のモンスターは一神斎に対し一礼すると、指示を求めるように見てくる。
(コワ!スケルトンは一度見たことあるけどデビルアーマーは初めてだからすごく怖い!ていうかスケルトンも怖い!少し離れて欲しい・・・)
一神斎は思わず杖を強く握り締める。
すると二体のモンスターは一神斎の思念を読み取ったように少し後退し距離をとる。
(俺の思念を読み取ったのか・・・・? これなら口に出さずとも思念による指示を出せるのか?)
(よし、試してみるか・・・・片膝をついて頭を下げろ。)
一神斎が念じると二体は同時に片膝をつき頭をさげる。
「おぉ~、すげぇ!これなら大丈夫そうだな。」
今回はアンデッドを召喚したのには理由があった。
絶対服従ということは理解しているがアンデッドはなんとなく忠誠心がなさそうだったので実験として召喚してみたのだ。
実験は成功とみていい。
幻位以下は服従が約束されていると見ていいだろう。
実際自分にかけた<危険感知>にも反応がない。 仮に攻撃してきても先ほど掛けた魔法と防具の効果で撃退できる。
それに下位から中位のアンデッドは話すことができない。
モンスターと話をしてみたい気持ちもあるが駄目だしなどされたくもないから今回は話をすることができない者にしたのだ。
「よし、準備は整った! デビルアーマーよ先行し遺跡の中に危険がないか調べよ、モンスターと遭遇した場合は討伐せよ。スケルトン戦士は俺の少し前を歩き俺の盾になれ。」
指示を出すとデビルアーマーは先に遺跡に入り、スケルトン戦士は一神斎が動くの確認してから一定の距離を保ち先行する。
頭の中のマップにはデビルアーマーとスケルトン戦士の情報も追加される。
一神斎は先行しているデビルアーマーに思念を飛ばし目的地までの最短ルートを飛ばし自分達の姿を確認してから進むように指示をする。
一神斎はスケルトン戦士の先導の下先に進む。
遺跡の中は真っ暗だが<夜眼>の効果でまったく暗さを感じない、照明のある部屋を歩いているようだ。
周りは見るといたるところに苔が生えており埃が舞っている。
(鼻炎の人は冒険できないな。俺の場合防具の効果で綺麗な空気を吸いこんでいるから平気だけど。)
部屋の出口には指示した通りデビルアーマーは立っているのが見える。
そしてこちらを確認するとデビルアーマーは次へ進む。
(次の部屋にはモンスターが2対いるがどうなる。)
と考えた瞬間にマップからモンスターの反応が消える。
「えっ!?」
(部屋には下位モンスターだが2対いたのに一瞬で片がついたのか、中位と下位ではかなり差が開いているようだな。)
隠し階段のある部屋に到着すると前もって思念で指示した遠りデビルアーマーが階段の扉をあけた状態で待機しており一神斎の姿を見ると階段をおりていく。
(階段を下りたら目的の場所まではすぐだ・・・ここでもう一つ実験をするか。)
一神斎はデビルアーマーにも自分の少し前を歩いくように思念を飛ばす。
デビルアーマーと合流し2体の背中を見ながら目的地の一つ手前の部屋に入る。
そこには1体のスケルトンがいる。
(うわぁ・・・雰囲気があるせいかただのスケルトンでも怖い・・・)
スケルトンはこちらに気づくとこちらに近づいてくる。
「うわ怖! ってびびってる場合じゃないな。お前には悪いが一つ実験体になってもらうぞ。」
そう言うと一神斎は2体の召喚獣を後方へ下げこちらに向かってくるスケルトンに杖を向ける。
<電撃>
杖の先端から雷撃がスケルトン目掛けてとんでいく。
雷撃が命中したスケルトンは跡形もなく消し飛んだ。
「よし! 攻撃魔法もちゃんと効果があるな!」
一神斎は初めての攻撃魔法といいうこともあり少々興奮気味だ。
だがこんなところで喜んでいる場合じゃないと我に返る。
他の部屋のモンスターがこちらに来る可能性もあるのでさっさと目的を果たして帰るとしよう。
目的の部屋に入る、すると部屋の奥には地下なのにまるで月明かりに照らされたような光に包まれた剣を発見する。思わず駆け出しそうになるが、思いとどまり一神斎は二つの魔法を唱える
<上位トラップ解除>
<上位呪い解除>
部屋の中に2種類の光の波動が走る。
冒険者でない一神斎だがゲームなどでこういった場合、罠や呪いなどが仕掛けられいる可能性があるので2つの魔法を発動させたのだ。
「これで安心だな。スケルトン戦士は手前の部屋へ戻り部屋に来た者を向かい討て。デビルアーマーはあの剣まで先行せよ。」
これで遺跡内のモンスターが来てもひとまず安心だろう。
それに剣を手に取った瞬間モンスターが出現する可能性があるのでデビルアーマーは連れて行くことにする。
{幻の禁書の一つ(グリモワーズ・サモンブック)
~この世のどこかにあるという幻の禁書のうちの一冊。その本一冊で世界に多大な影響を及ぼすといわれている本である。一神斎が所有しているのはこの一冊のみでである。この本は召喚の書であり、ありとあらゆる召喚魔法と使用できるものの情報が記されておりその全てを一部を除いて絶対服従の元で使役することができる。更に召喚に必要な魔力はもちろん召喚場に留まらせる魔力消費、召喚した者の召喚条件や契約条件、召喚したさいにペナルティが発生するものを全て無視して召喚させることができる。召喚する者によってその日に召喚できる個体数が決まっており強者ほど召喚できる数(元々の個体数)が少ない。召喚回数は一日でリセットされる。~