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67 帝都と意気地なし

 

 屋敷へ戻ると数人メイドが待機しており、ボットが何やら話をしている。

 「我が主は今屋敷にいないようですのでしばらく客間でお待ちいただけまうか? すぐに帰ってくるそうなので。」

 ボットは2人を一室へ案内して出ていく。

 屋敷のメイドが2人に飲み物を持ってくる。

 メイドが部屋を出て行ったのを確認するとハクアが口を開いた。

 「それで、これからどうするんだ?」

 「そうだな、今日はこの街で泊まって明日には帝都へ行こうと思う。」

 「俺もそれに賛成だな、正直ここにいても仕方がない。」

 アルフーゴには申し訳ないがハクアの言う通りだ。

 後で街を見て回るつもりだが恐らくサザラント程ではないだろう。

 ならばいっそのことインペーナ帝都へ向かうほうが有意義だ。

 「最悪の場合”ウィズダム”へ行ってもいいわけだしな。」

 「さっき言ってた錬金術の国か?」

 「国といっても1つの大きな街だけどな。 独立してるだけだ。」

 「たしかに錬金術の国も興味があるな。」

 「とりあえず帝都は広いからな、クエストをこなしつつ帝都を見て回ればいいい。」

 それにしてもこの短期間でハクアも変わったものだ。

 あまりにも強いから16歳だということを忘れてしまう。

 そんな一神斎の視線に気づいたのかハクアが眉を顰める。

 「なんだよ。」

 前言撤回だ。

 あまり変わっていないかもしれん。

 「ハクアは基本男の姿なんだな。」

 「ああ、その方が楽だろ? 冒険者として活動する上で舐められないしな。」

 「ふ~ん。」

 言われてみれば冒険者って男が多いよな、たまに女もいるけど。

 「お、お前変なこと考えているんじゃないだろうな!?」

 ハクアが急に立ち上がる。

 「いきなりどうした?」

 「お前また俺に変なことするつもりだろう!」

 「俺何も言ってないんだけど・・・・逆にお前何か期待してんのか?」

 「な、な、ななな・・・・誰がお前と一緒に風呂入ったり寝たりしたいって言ったよ!」

 「お~い、心の声がだだ漏れだぞ。」

 「!?」

 ハクアの顔が真っ赤になる。 

 揶揄いがいのあるやつだ。

 ハクアが何か言おうとした時、部屋の扉をノックする音がする。

 「ダルト殿にハクア殿、アルフーゴだが入ってもよろしいかな?」

 「ええ、大丈夫です。」




 扉を開けるとそこにはアルフーゴとボットが立っていた。

 ボットは着替えたようで先ほどの服装ではなかった。

 「お待たせして申し訳ない。」

 「いえ、お気になさらずに。」

 ハクアは先ほどのこともあってか不機嫌になっている。

 「ダルト殿にハクア殿、ドラゴンゾンビの討伐感謝します。 ボット。」

 アルフーゴがボットの名前を呼ぶとボットが報酬の金貨を持ってくる。

 「ありがとうございます。」

 ボットから報酬を受け取った報酬を道具箱の腕輪アイテムボックス・ブレスレットに入れる。

 「今回の件はボットから詳しく聞き次第モンスターと”不死者の王国ノーライフ・キングダム”については帝都と連携して調査を進めるつもりです。」

 「それがいいでしょう。」

 なんといってもこういう時は人海戦術だろう、外界ってどう捜査するんだろう魔法か何かか? 

 「お2人はこれからどうされるおつもりなのですか?」

 「今日はこの街に泊まって、明日には帝都に向かおうと考えています。」

 「そうですか、では本日は我が屋敷にお泊り下さい。食事の用意もしておきますので。」

 これは願ったりかなったりだ。

 「ではお言葉に甘えて。」

 「それからお2人の冒険者プレートをお借りしてもよろしいでしょうか?」

 2人はA級の証であるミスリライトでできた冒険者プレートをアルフーゴに手渡す。

 アルフーゴは預かったプレートに金属製の印鑑を押し付ける。

 プレートにはドーベックの紋章が浮かび上がった。

 「それは?」

 「これは認章紋といって、これがあることで街や国に認められた冒険者であることを示しすことができるのです。」

 「認められた冒険者とは?」

 「一種の推薦状だと思って下さい。 認章紋があると言うことはある程度の身分証明にもなります。 これがないと受注できないクエストがあるほどです。」

 「それは非常に助かります。」

 「お2人のプレートにはサザラントの認章紋がありますが多いにこしたことはないでしょう。」

 まぁもらえるものは貰っておこう。

 「ありがとうございます。」

 「それから帝都に向かうのでしたら私がポータルでお送りしましょう。」

 「よろしいのですか?」

 「ええ、私も帝都に用がありますので。」

 「ではお願いします。」

 その後はアルフーゴと3人で食事をして屋敷で眠りについた。

 ちなみにこの日にハクアの機嫌がよくなることはなかった。

 翌日にはアルフーゴのポータルで帝都へと向かった。



 ~翌日インペーナ帝国帝都~

 「すごいな。」

 「帝都だからな。」

 サザラントもすごいと思ったがさすがはインペーナ帝国の帝都というだけあって全てがサザラントをはるかに凌駕していた。

 コバルトブルーの海が近くにあり、街全体は城壁で囲まれており、道は大理石の石畳でできており建物は白を基調としている。

 街自体がとてつもなく広いが所々に設置型のポータルがあるので移動も便利だ。

 皇帝のいる城はフランスのシャンボール城に似ているが規模は何倍もある。

 アルフーゴに紹介してもらった宿屋も高級ホテルのようだった。

 冒険者組合もどこか気品があり、そこいる冒険者はほとんどがB級以上ばかりだ。

 クエスト票を見るとC級ランクのものもあるが大半が高難易度のものばかりだ。

 とりあえず今日は町を散策することにした。

 何か旅行に来たみたいでとても楽しい。

 内界と唯一交流があると聞いていたが、あまりこちらの文明みたいなもんはない。

 むしろその方が見て楽しめるので構わない。

 おもむろに武器屋や道具屋等にに入ってみるが店の大きさも品揃えも今までの店とは比べ物にならないほどだ。

 魔具屋に関しては店はでかいが、品質に関してはコロの店のほうが良い気がする。

 ハクアも魔具屋に関してはサザラントが上だと言っていた。

 そんなこんなでまだ街の半分も見てないのにもう暗くなってきた。

 辺りが暗くなっても街はライトストーンという外界特有の石によってライトアップされているように見えてとてもロマンチックだ。

 この日の晩御飯は大通りにあるオシャレなレストランで食べた。

 全身鎧フルプレートでも入店ができて料理もイタリアン風でとても美味しかった。

 正直外界で食べた食事で一番美味しい。

 ホテルの部屋に戻るととても大きな部屋でベッドもフカフカだ。

 フルーツの盛り合わせや飲み物は無料で24時間体制で料理を提供してくれるとのことで驚きだ。

 料金に関しては本来は冒険者ではなく貴族などが宿泊するホテルだということがわかるお値段になっている。

 金はあるので一年はここにいても問題ないがな。

 明日からは簡単なクエストを受けて残りの時間は街を散策だ。


 


 

 「どこ見てんだよ。」

 「え? いや何も?」

 帝都に来て数日が経つ。

 内界と交易していると聞いていたが全くと言っていいほど交易しているようには見えない。

 外界へは力を得る前に旅行で来たことがあったが、どうやら観光用に作られた島のようだ。

 まるでそこに国があるかのように演出していただけで外界ではなかったのだろう。

 あの旅行会社潰してやる。

 とりあえず今は冒険者組合にクエスト完了の報告へ向い、その途中でセクシーな鎧を着た女性冒険者を見ていてハクアに冷たい目で見られたところだ。

 「全くお前は。」

 「俺も男だからな。」

 一神斎の言葉を聞いてハクアが睨み付けてくる。

 こ、怖い。

 「そ、そうだ。 今日は前に見つけた魚料理の店に行ってみないか?」

 無理やり話題を振る。

 「奢れよ。」

 「わかってるって。」

 ここ最近のクエストでわかったことだがハクアは相当強い。

 ハッキリ言ってダルトと比べ物にならないほどだ。

 推測ではあるがダルトの実力はA級とS級の間くらいだが、ハクアはS級の中でもかなり上位方だと思う。

 S級冒険者はほとんど自分と同じくらいだと言っているので他のS級冒険者とは会いたくないものだ。

 ここ帝都を拠点としているS級冒険者は2組いるが今は遠征中でここにはいないらしい。

 それに皇帝直下のロイヤルガードに関しては2組のS級チームを遥かに圧倒する実力を持っているらしい。

 街で得た情報とハクアの実力を見ているとダルトで冒険するのも限界があるように思えてくる。

 正直ハクアの目を盗んで”孤黒の宮殿”に帰ってきて魔具の補充等をするのがかなり面倒になってきた。

 というか生活全てが面倒だ。




 今現在はハクアが寝静まってからRPRリアルプレイルームの電源を落として自分の時間を過ごしているが、これがなかなか面倒である。

 当然ハクアが急に起こしてくることもあるわけだが、そのたびやっていることを切り上げてRPRリアルプレイルームに戻るわけだ。

 もういっそのこと自分の正体をばらして本体で冒険してもいいのではないかと思ってきた。

 それなら好きな時に冒険できるし、友人と遊びに行くこともできる。

 それに最近ハクアに申し訳なく思ってきた。

 ハクアは生身で闘っているわけだし、それに最近は本当に懐いてくれて・・・・信頼してくれているようだし。

 他人が死のうが知ったことではないがハクアはもう仲間というか家族みたいなものになってきた。

 今はハクアの方が断然強いし敵もダルトより全然弱いから問題ないが、油断は禁物だしハクアの言葉通りならそのうちハクアでも太刀打ちできない化け物が現れるかもしれない。

 そうなればダルトではどうしようもない。

 だが果たしてハクアが自分のことを許してくれるのかが心配だ。

 自分に幻滅して1人で生きるなりダドリアンのところに行くのは構わないが、最近のハクアを見ていると俺を殺して自分も死ぬとか言いそうだ。

 というか一度言われたことあるし。

 ”孤黒の宮殿”の図書館で少し調べてわかったことだが雌雄族というのはよく言えば一途、悪く言えばヤンデレみたいな一族だったらしい。

 懐いてくれ・・・・信頼してくれるのはうれしいがちょっと重い。

 だがここは仲間として俺もハクアを信頼して真実を伝えるべきだ。

 「な、なぁハクア・・・・。」

 「ん? どうしたんだ?」

 「・・・・いい天気だな。」

 「もう夕方だぞ?」

 「ゆ、夕日が綺麗ってことだよ。」

 「どうしたんだ急に?」

 「ハクア・・・・実はさ・・・・。」

 「ん?」

 「・・・・お、お前もあの夕日くらい綺麗だぜ。」

 自分でも何を言っているのかわからなくなってきた。

 「な、なな、なに言ってんだよお前!」

 ハクアの顔が夕日に照らされても赤くなっているのがわかる。

 「ほ、ほら行くぞ。」

 「お、おい待てよダルト!」

 俺ってば意気地なし・・・・。


次回の更新は1月23日です。

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