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61 悠月(5)+例外の2体目

 現場には悠月とラドンガ、里英だけになった。

「今のはいったい・・・・。」

 「ぬぅ、確実に良いものではないな。」

 「ええ、とてつもない憎悪を感じたわ。 ていうか”黒銀”が逃げちゃったじゃない!」

 そんな3人のもとへ防衛隊が走ってくる。

 「大丈夫ですか!?」

 「ふむ、防衛隊も到着したか。」

 「おっそい!」

 「とにかくケガをしている方達を介抱しないと。」

 「こ、これはラドンガ殿に里英殿、それに悠月様まで。」

 3人を見て防衛隊の面々は敬礼をする。

 「そんなことはしなくてもよい、今はケガ人の介抱をするんじゃ。」

 「はっ!」

 防衛隊は爆発元である美術展に入っていき、ケガ人の介抱を行っている。

 「とりあえず”天使の微笑み”には連絡しておいたから今は被害状況の確認が先決ね。」

 「ワシもギルドに先ほど逃げた2人と黒い霧の件を調べさせよう、政府にもワシから報告しておくとしよう。」

 ラドンガと里英がギルド等に報告していると悠月が思い出したかのように走り出す。




 「一神斎さん無事でいてください!」

 電話をかけてもつながらないので不安な気持ちでいっぱいになる。

 「お~い、悠月!」

 少し走ったところで一神斎が手を振って立っていた。

 「一神斎さん!」

 目にも止まらぬ速さで一神斎のもとへ向かう。

 「ご無事でしたか!? どこかケガはされていませんか!?」

 「お、おう。近くの避難シェルターにいたから平気だ。」

 「そうですか、良かった。」

 安堵したのか悠月がその場に座り込む。

 「お、おい。大丈夫か!?」

 一神斎が肩に手をかける。

 「は、はい・・・・だいじょ(あれ、この匂いは・・・・さっき・・・・。)」

 「悠月のほうこそどこかケガしてるんじゃないのか?」

 心配そうに見つめる一神斎に悠月は我に返る。

 「だ、大丈夫です。安心したら気が抜けてしまって。」

 「そうか、良かった。」

 「内山さんたちも無事なのか?」

 「あっ! 忘れていました・・・・。」

 「えっ!?」

 「一神斎さんのことが心配だったもの・・・・その・・・・」

 悠月がもじもじしている。

 (ぐふ! 駄目だ・・・・思わず頭を撫でそうになってしまう。)

 「あ、ありがとうな。俺も悠月が心配だったよ。」

 「ほ、本当ですか!?」

 悠月の勢いに思わず仰け反ってしまう。

 「え、は、はい。」

 一神斎の言葉に悠月は胸に手を当てて目を閉じている。

 「何をしていらっしゃるのですか?」

 思わず敬語(?)で尋ねてしまう。

 「今の言葉を胸に刻んでいるのです。」

 (さ、最近の子はみんなこうなのかな?)

 


 

 一神斎が心配そうに悠月を見つめていると冷静になったのか悠月がいつもの雰囲気に戻る。

 「名残惜しいですが、内山さん達のところへ戻らなくてはいけませんので・・・・、でも一神斎さんの身も心配ですし。」

 (ぐっ! 付いてきてほしいと言わんばかりの上目遣い。)

 「お、俺の身を案じてくれるのはありがたいけど、スタッフの方達も心配だろ?」

 「そ、そうです! 敵は外に逃げていきましたし、それから怪しい黒い霧状のものも外に逃げて行きましたので今外に行くのは危険です!」

 ぶつかりそうなほどに距離を詰められる。

 「そ、そうなのか? それはたしかに危険だな。 でも俺が行ったら邪魔になるだろう? それに今なら防衛隊に連れて行ってもらったほうがー」

 「邪魔になんてなりません!」

 「えぇ!? いやでもー」

 「邪魔になんてなりません!」

 大事なことなのか2回も言われた。

 それにしてもすごい気迫だ・・・・ファイアーアイアンリザードなんて比ではない。

 真っすぐな目とはこういうことをいうのだろうな。

 「な、何か手伝えることがあるかもしれないから俺も行こうかな~なんて。」

 「はい! では行きましょう一神斎さん!」

 悠月は一神斎の手を取ると嬉しそうに会場へ向かう。

 (どうやら悠月には魔性の気があるかもしれないな・・・・それにしてもハクアにしてもそうだが短時間でキャラ変わりすぎだ。 お前は別だけどなダドリアン!)

 この後会場についてから手を繋いでいることに気付いた悠月が面白いくらい取り乱したのは言うまでもない。 

 そしてその後の俺は悠月の無事を喜ぶスタッフを見ながらただ突っ立っているだけった。

 悠月は防護シェルターに避難していた観客に脅威は去ったので防衛隊に従って帰宅するように説明していた。

 俺も防衛隊に従って帰宅したいのだけど。

 そんな俺の願いは叶わずに内山のファインプレー(?)で悠月と晩御飯を食べることになった。

 悠月と一緒に普通に外に出れたのには驚いた。

 というか外は危険なんじゃなかったのか?

 ショッピングモールの周辺は市民が避難した後は封鎖されたため、近くの飲食店には入れなかったので内山が用意したリムジンで別の街へ移動して懐石料理の店へ行くことになった。

 もちろん一見さんお断りの高級な店だった。

 そんなこんなで休日1日目はあっという間に時間が過ぎていった。

 ちなみに食後は家に招待というなの連行をされかけたがさすがに断った。

  




                ~翌日~

 「ふむ、こんなものか?」

 一神斎の目の前には白いクロスをかけた丸形テーブル、机上には昨日購入したチーズケーキと焼きプリン、飲み物はまだ用意していないが相手の好みに合わせて出すつもりだ。

 ただ場所が少し殺風景なところが残念だが仕方がない。

 ここは”孤黒の宮殿”の闘技場である。

 ここに来たのは理由は1つだけだ。

 幻の禁書の一つグリモワーズ・サモンブックに記されている例外の7体を召喚するためである。

 前回はシルクェーナスを呼んだので今回も新しく別の者を召喚するつもりだ。

 シルクェーナスはとても友好的だったが他の6体がそうとは限らない、それを見越してかシルクェーナスは今後他の6体を召喚するさいは自分も立ち会うとのことだったので今回もシルクェーナスは呼び出すつもりだ。

 ただ、今後のことも考えて今回はこうしてお茶をすることで交流をして仲を深める作戦だ。

 というか、たまには誰かとお茶したい。

 昨日したけど。

 あの後、結局晩御飯までごちそうになってしまった。

 こっそり聞いた話では美術展からは何点か遺跡の出土品が盗まれていたらしい。

 最後の事件は迷惑な話だが、昨日はなんやかんやで日本舞踊をみたり、悠月とも友人になれたし有意義な休日だったと思う。

 



「さて、そろそろ呼ぶとするか。」

 一神斎は幻の禁書の一つグリモワーズ・サモンブックをだしてシルクェーナスを呼び出す。

 「こんにちは。」

 「こんにちは。」

 目の前に全身は光沢のある白い毛で覆われた神龍が現れる。

 「今日はどうしました?」

 「この間言っていたけど、新しい奴を召喚しようと思ってね。それで立ち会ってもらおうかと思ってさ。」

 「なるほど、承知しました。ところでそれは?」

 シルクェーナスは一神斎の横にあるテーブルのほうを見る。

 「あぁ、これはシルクェーナスとお茶でもしようと思ってね。呼び出すだけじゃ悪いと思って。」

 「そんな気を使わなくてもいいんですよ?」

 「個人的にシルクェーナスとお茶したかったのものあるんだけど、駄目かな?」

 「あら、そうなのですか? ふふふ。 嬉しい。」

 シルクェーナスは優しく微笑む。

 「でも、人間サイズだからシルクェーナスには小さいか・・・・。」

 サイズのことをすっかり忘れていた。

 「大丈夫です、安心してください。」

 そういうとシルクェーナスの身体が光に包まれてしぼんでいく。

 「おお!」

 輝きが収まるとそこにはエメラルド色に輝くロングヘアーに白いドレスを着た美しい女性が立っていた。

 「これなら問題解決ですね。」

 「綺麗・・・・。」

 思わず口に出してしまう。

 「あら、お世辞でもうれしいわ。」

 シルクェーナスが笑顔になる。

 イメージ的にはものすごく優しいお姉さんといった感じだ。

 



 イスを引いてシルクェーナスに座ってもらう。

 「主にここまでしていただけるなんて。」

 「いいよいいよ、飲み物はどうしよう・・・・。」

 そもそもドラゴンって何飲むんだ?

 イメージでは肉しか食べないイメージなんだけど。

 「主に任せますよ?」

 「そうだなぁ・・・・。」

 甘い物にはコーヒーや紅茶だけど、ここは紅茶かな。

 「紅茶っていう飲み物にしよう、口に合わなかったら言ってね。」

 「ふふふ、はい。」

 とりあえずオレンジペコでいいだろう。

 ネットで見た淹れ方を見様見真似で淹れる。

 「どうぞ。」

 「では、いただきます。」

 シルクェーナスの反応を伺う。

 「あら、おいしいです。」

 一神斎は胸を撫で下ろす。

 「良かった~、あっ。これも食べてね。チーズケーキと焼きプリンっていうんだ。」

 シルクェーナスは興味津々にチーズケーキから食べる。

 フォークは使ったことがあるのかとても自然に使っている。

 「ん~、すごく美味しい!」

 シルクェーナスの目がキラキラ輝いている。

 女性のスウィーツが好きは生物の域をも超えるということか。


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