表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/82

50 暗殺者

西門に事情を知っている警備兵が立っており軽く会釈をしてくれる。

 一神斎も会釈で返す。

 西門を出て道なりに進んだ所に森がある。

 ランガ街の森と違って思ったほど暗くはない。

 ハビクは後ろを付いてくる。

 腕輪の効果があるので素直で助かる。

 戦闘に参加しないかもしれないが、文句を言わずについてきてくれているだけでもかまわない。

 「もうすぐ大樹の場所だ。」

 食堂を出てから黙りっぱなしだったハビクが口を開く。

 「そうか、いつでも戦闘にはいれるようにしておかないとな、ハビクは大丈夫か?」

 「あぁ。」

 相変わらず返事は素っ気ない。

 そんなことを考えていると大樹が見えてきた。

 「たしかこの辺りに出没するんだったな。」

 一神斎は周囲を伺いながら背中の大剣を抜く。

 大樹の前までくるとそこは森の中なのに少しひらけていた。

 「これが大樹か。」

 周囲の木とは大きさが全然違う。

 



 「生物がいる気配はないな。」

 ハビクが周囲を確認する。

 一神斎には気配とかはまるでわからないので自分でもわかる範囲で話をする。

 「そうだな、地面に足跡はないし周囲の草花も荒らされたり踏まれていない。」

 本当にここに凶悪なモンスターがいるのかと疑うほど静かな良い所だ。

 外界の森はこれで三度目だが、ここは今までとは違って日差しがあって明るい。

 「こんな所にモンスターがいるとは思えないな。」

 一神斎の心の声が漏れた。

 「あぁ、だが人間はいるみたいだな。」

 ハビクはそう言いながら大樹の方をみる。

 一神斎もすぐに大樹の方を見るが誰もいない。

 「いるのはわかっているから出てこい。」

 ハビクが少し大きめの声で言うと大樹の後ろから何者かが音もなく現れる。

 「ほう、俺の気配を察するとはなかなかできる奴だな。」

 緑のローブを纏った男が立っている。

 「誰だお前・・・・と言っても名乗るわけないか。」

 一神斎は剣を構える。

 「ふふふ、そうだな。今から死ぬ奴らに名を名乗っても仕方がないだろう。」

 やや嘲笑気味に緑のローブが答えて両袖から棘付きのメイスを出す。

 そんなやり取りを聞いていたハビクが鼻で笑う。

 「その武器・・・・お前インラムだろ?」

 「あいつを知っているのか?」

 「あぁ、アルメデュカ王国では有名な暗殺者だ。」

 ハビクの言葉に緑ローブの者が肩を震わせながら笑う。

 「ふふふ、男女のハビク殿に知られているとは光栄だな。」

 「てめー・・・・。」

 インラムの言葉にハビクが顔を歪める。

 「誰の差し金が聞いても無駄だろうな、それに大体検討がつく。」

 「ふふふ、そういうことだ。」

 インラムとハビクが対峙し構える。




 (俺だけ蚊帳の外なんだけど・・・・。)

 そんなことを考えるが、外界での対人戦は初めてなのでここは観戦することにする。

 それにここはハビクの実力を見る良いチャンスだ。

 本調子でないだろうから何かしらの援護はするつもりではあるが。

 一神斎が剣を地面に突き刺した瞬間ー

 周囲に金属音が響き渡る。

 どうやら始まったようだ。

 2人はとんでもない速さで交錯を繰り返す。

 ハビクはメイスでの攻撃を躱しながら攻撃するのに対して、インラムは一本のメイスで攻撃を防いでもう一本のメイスで攻撃を仕掛けている。

 そんな2人のやり取りを一神斎は腕を組んで眺めていた。

 (2人共速いな~、だが・・・・。)

 王国内で有名な暗殺者といいうだけあってインラムはとても素早く闘い慣れしているのがわかる。

 しかし、それでもハビクの方がインラムよりも一枚も二枚も上手のようでインラムの攻撃は空をきる。

 その反面インラムのローブが少しずつ切られていき、浅く剣が入り鮮血が飛ぶ。

 (実力的に完全にハビクが上だが・・・・。)

 2人は交錯したのち一度距離を取る。

 インラムのローブは数か所切られて、血が出ている所があるものの体力的にはまだまだ余裕がある感じだ。

 だがハビクは無傷ではあるものの肩で息をしている。

 「私が傷を負ったのはいつ以来でしょうか。」

 インラムは首を傾げながら肩で息をしているハビクを見る。

 「はぁ・・・・はぁ・・・・クソっ。」

 (あ~らら、さすがに一年近く幽閉されてちゃこうなるわな。)

 一神斎は大剣を持ってゆっくりハビクの前に立つ。




 「はぁはぁ、お前・・・・はぁはぁ、何の真似だ?」

 ハビクの問いかけに一神斎は肩を竦めて答える。

 「いやいや、わかるだろう? お前牢屋から出てきてばっかだからまだキツイだろう?」

 「だ、だまれ! はぁはぁ、俺は誰にも頼らずに生きていくんだ!」

 (やだこの子少し中二病なのかしら。)

 などと一神斎が考えているとインラムが飛び込んでくる。

 一神斎の前でフェイントをかけてから後ろにいるハビクを狙う。

 「くっ!」 

 息のあがったハビクはインラムの攻撃に反応が遅れる。

 インラムは両手をXに交差されてハビクの頭めがけメイスを振るう。

 しかし、メイスがハビクに届く前にインラムに向けて一神斎の大剣が飛んでくる。 

 フリスビーのように投げられた大剣は横に回転しながらインラムの頭目がけて飛んでいくがインラムはこれに反応に首を垂れて躱し、そのままバックステップで距離を取る。

 被っていたフードは剣にかすったためか千切れはしたもののインラムにダメージはなかった。

 大剣はそのまま木を1本切り倒すと2本目の木に刺さる。

 「ふふふ、おもしろい攻撃だが武器を失ってしまったね。」

 インラムは邪悪な笑みを浮かべる。

 「お、お前どうするつもりだ。」

 ハビクは一神斎をにらみつける。

 息は整ったようだが足元がおぼつかない。

 「所詮は暗殺者だろ? さっきもそうだが弱った相手としか正面から闘うことができない臆病者に武器なんかいらないだろう?」

 一神斎の言葉にインラムの顔から笑みが消える。

 それを見たハビクが声をあげる。

 「馬鹿かお前は! あいつは傭兵としても有名なやつだ! 舐めていい相手じゃない。」

 「その割に衰弱したお前に押されていたようだが?」

 「だとしても油断していい相手じゃない!」

 


 

 一神斎とハビクのやり取りをインラムは笑う。

 「ふふふ、ハビクさんの言う通りですよ”黒き両断”ダルー」

 「あぁ? うるさいぞお前、少し黙ってろ。」

 一神斎の言葉にインラムが肩を震わせて下唇を噛みしめている。

 それを見て一神斎は兜の下で微笑む。

 「俺は今ハビクと話てんだ、根暗野郎は木とでも話してろ。」

 「根暗だと?」

 「どうせいじめられっ子が何かを抉らせて半端な暗殺者にでもなったんだろう?」

 インラムの表情が怒りで支配されているのがわかる。

 「そうだ、俺は弱い者イジメが嫌いでね、ハンデとして素手で相手をしようじゃないか。」

 「貴様・・・・誰に向かって言っている?」

 「それともまだ衰弱しきったハビクと闘うか? たしかにハビクは武器を持っているから負けたとしても言い訳はできるか、衰弱した相手とはいえ。」

 インラムの下唇から血が流れる。

 「そうだ、サービスで一度だけお前の攻撃を受けてやろうか? まぁ臆病者に正面から攻撃する勇気があればの話だが。」

 「きぃぃぃさぁぁぁまぁぁあぁぁ!」

 インラムは叫びながら一神斎に向かって飛んでくる。

 無防備に両手を軽く広げた状態の一神斎の頭目掛けてメイスを振り下ろす。

 「あぶなー」

 ハビクが叫び終わる前にメイスは一神斎の頭の寸でところで止まる。

 一神斎がインラムの手を掴んで止めていた。

 それを見たインラムがもう1つのメイスで攻撃しようとした瞬間ー

 「っ!?」

 インラムの股間に一神斎の蹴りが入った。

 「うわっ、モロに入ったな!」

 喜ぶ一神斎の目の前でインラムがうずくまる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ