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40 外界へ再出発

 目を開けるとそこは蝋燭の薄明りが揺らめく地下牢だった。

 「夢か・・・・ちっ。」

 手足には魔法が付与されたの千切れない鎖で繋がれている。

 ここに入れられてどれほどの時が経過したかわからない。

 牢屋の前には2人の兵士がいる。

 話す気はないが何か問いかけても返事も帰ってこない。

 先ほど見た夢を思い出す。

 あまり見たくない夢なのに最近よく見る。

 母との最後の会話。

 家には火の手があがり、外から叫び声が聞える。

 目の前には自分を地下の隠し部屋に隠そうとする母の姿だ。

 俺を不安にさせないように優しい笑顔で話しかけてくる母。

 まだ小さい俺は泣いてばかりで母が何を言っていたかほとんど覚えていない。

 ただ最後の言葉だけは覚えている。

 「世界には必ずハクアを大切に思ってくれる人がいるわ、だからどんなことがあってもくじけては駄目よ。」

 それを言って母は扉を閉めた。

 その後に「愛してる」という言葉が微かに聞こえたが気のせいかもしれない。

 あれから10年経った。

 「母さん、そんなやつはこの世にはいない・・・・。」

 もう何も望むものはない。

 さっさと殺してほしい。

 捕らえられ、自由を奪われ希望もない。

 必死に生き抜いて、迎え入れられたと思って奮闘したが裏切られこのざまだ。

 「もう疲れたよ。」

 自分の言葉は世界どころか目の前の兵士も届かない。

 ハクアは考えるの止めて再び目を閉じた。

 





 「おぉ~、久しぶりだな。」

 数ヶ月ぶりの外界。

 自分が住んでいる場所とはまるで違う世界。

 本当に同じ星なのかと疑うほどだ。

 ここはアルメデュカ王国のランガ城壁街だ。

 一神斎は最後に冒険したこの町を冒険の再出発地点した。

 別の場所でもよかったのだが久しぶりということである程度知っている場所のほうが良いと考えたのだ。 

 「とりあえずギルド冒険者組合に行ってみるか。」

 



 街中を歩く全身が黒と紫で彩られた昼間には似つかわしくない全身鎧がいても誰も不審がらないのは外界で冒険者といいうものが日常に定着しているからだろう。

 少し前までは周囲の人がヒソヒソ自分を指さしていたが、さすがに数ヶ月経つともう騒がれることもないみたいだ。

 冒険するうえではそのほうがありがたいが。

 組合に到着しクエストが貼り出されている掲示板を眺める。

 この周辺は比較的平穏なのか決して小さくはないこのランガでもAクラス以上のクエストはほとんどない。

 他のクエストも同規模の街からしても難易度は低いらしい。

 だからこそ肩慣らしにはちょうどいいのだ。

 久しぶりなのだから討伐系のクエストを探す。

 だがあまり良いものが見当たらない。

 「しょうがないな、適当に選ぶとするか。」

 ダルトは一枚のクエスト用紙を手に取ると受付へ持っていく。




 「これはダルト様、お久しぶりです。」

 「このクエストを受けたいのだが。」

 「”森のモンスター調査”ですね。南門にいる警備兵が詳しい場所の説明をいたしますので。」

 「わかった。」

 ダルトは受注書を持って組合を後にする。

 南門へ行く間に受注書に書いてあるクエストの説明を見る。

 どうやらランガ街近郊の森で最近新種のモンスターが現れたらしい、人間には被害が出ていないがゴブリンなどのモンスターがやられているらしい。

 (モンスター同士やりあってくれているならいいじゃないの?)

 と考えてしまうが、街の外には畑もあるのでそこで働いている人間が襲われてしまう可能性を考慮しての調査なのだろう。

 受注書には調査とは書いてあるが討伐すれば追加報酬が支払われるとも書いてある。

 南門に到着するとそこにいた警備兵にクエストの用紙を見せて詳しい場所を確認する。

 他の門と比べると兵の数が多い気がする。

 どうやら森に入ってすぐにある水辺で目撃されてからは入り口辺りでも目撃されているらしい。

 「少しずつ目撃場所が街に近づいてきているな、どうりで南門の警備が厳重になっているわけだ。ならもう調査じゃなくて討伐じゃん。」

 などと考えながら森へ向かっていると数匹のゴブリンが血まみれで倒れている。

 近づいてゴブリンの死体を見てみると体には爪で切り裂かれたような痕がある。

 1体は上半身の右側がなくかじられた跡がある。

 どうやら何者かに食べられたようだ。

 だが1体しかかじられていないということはゴブリンはあまりおいしくなかったのだろう。

 「見た目からしてうまそうに見えないしな。というか相変わらず臭いな。」

 このままゴブリンの死体を見ていても仕方がないので森へと向かう。




 森の入り口が見えてきたところで何かがいるのがわかる。

 「おいおい、いきなりかよ。」

 そこにはライオンの身体に翼を生やした尾がヘビの獣がいた。

 こちらに気付いたようで声を荒げて威嚇してくる。

 「何か漫画とかに出てくる合成獣キメラみたいだな、まさか・・・・。」

 そのとき頭に先日の一件で倒した虫が思い浮かぶ。

 「まさかな、外界のモンスターだという可能性があるし。こいつは討伐して組合に死体を持っていって調査してもらうとしよう。」

  


 

 ダルトは背中にさしてある大剣を抜いて構える。

 獣は牙をむき出し威嚇し、尾のヘビもこちらに向かって口を広げる。

 ダルトが剣を握って走ろうとした時、獣は翼を羽ばたいて空中へ上がる。

 「おいおい、まさか逃げないだろうな。」

 今は飛行フライを使えないから空をとんで逃げられると追いつけない。

 少しずつ上昇する獣に対してダルトは片手を向けて<氷のアイス・ニードル>の魔法の指輪マジック・リングを発動させようとすると、獣は息を大きく吸い込み炎を吐き出してきた。

 「炎を吐くのか!?」

 ダルトは魔法の発動を中止して横へ飛んで炎を躱す。 

 それを見た獣はダルト向かって急降下してくる。

 ダルトは剣を構え迎え撃つ。

 獣とダルトが交わった時、獣の首が地面に転がり体もそのまま地面に激突する。

 勝負はあっけなく終わりを告げた。

 「火を吐くトカゲと比べたら全然大したことないな。」

 並みの冒険者なら苦戦し、命を落とすことがあるかもしれない相手だがダルトの身体能力は常人の域を超えたところにあるのでこの程度なら相手にならない。

 絶命した獣の顔と体にヒモを括り付けて街までひきづっていく。

 組合にはモンスターの一部を持っていけば後で回収に来てくれるのだが別に持っていけない重さではないので自分で持っていく。

 時間の節約にもなる。

 「血の臭いはするが、そこまで臭くはないな。ゴブリンてどんだけ臭いんだよ。」

 そんなことを言いながらランガ街へと急ぐ。

 南門が見えてきたところで数名の警備兵がこちらに走ってくる。

 驚きの表情をする警備兵に事情を説明する。

 組合まで持っていきたいと言うと、さすがにこのまま持って街を歩くのはまずいとのことで警備兵が持っていくので先に組合へ向かっていてほしいとのことだ。

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