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37 止まらないバナナ

 「レクス隊長!」

 ナルスが数名の隊員を連れて走ってくる。

 「ナルスか、周囲の状況は?」

 「はい、周囲に異常はありません。隊長は大丈夫ですか?」

 ナルスがレクスの体を見る。

 「あぁ、俺は大丈夫だ。それよりもジュンドー達のことなのだがー」

 レクスの問いかけにナルスは顔を下に向ける。

 ナルスの様子を察してレクスが肩を落とす。

 「そうか、やはりジュンドー達は・・・・。」

 「はい、ヒタシ隊員に扮した何者かが言っていたトイレの中からお2人の遺体が。」

 他の隊員達も怒りや悲しみの感情が顔に出ている。

 「ナルス、本部に連絡して周囲の警戒を強化しろ。相手は退いたが油断はできない。相手は3・・・・2人だった。1人は正体不明の白衣の女だが、もう1人はZ級の「6面」の半蔵だ。」

 周囲の空気がガラリと変わる。

 当然だ、Z級は怪人や賞金首の中では最高ランクにあたり、ヒーローでいえばS級ということになる。

 「もうすぐ夜明けだ。調査隊ももうすぐ到着するだろう。化け物や昆虫の死体はどこかに消えてしまったが何かしらの痕跡があるはずだ。それにまだ周囲に他の者も潜伏している可能性がある。」

 「隊長はどうされるのですか?」

 「俺は報告のため本部に戻らなければならない。代わりに第7討伐隊長のセラハムがくることになっている。」

 「セラハム隊長ですか、それならば安心ですね。」

 「ああ、セラハムなら複数の敵が来ても安心だ。」

 ナルスと話しているとスーツの男がこちらに近づいてくる。

 「お話のところ失礼します、レクス隊長、お迎えに上がりました。」

 「ご苦労様、ナルスすまないが後は頼む。セラハムの補助をしてやってくれ。」

 「わかりました。お任せ下さい。」

 レクスは現場を立ち去った。





 「立派に育ったな~」

 目の前には大きなバナナの木がある。

 一本一本が立派に育っておりすぐにでも収穫できる。

 「よっと。」

 緑色のバナナを一本取ると瞬時に黄色に変色し程よい柔らかさになる。

 皮をめくるとバナナの特有の甘い香りが辺りに広がる。

 我慢できずに勢いよくかぶりつく。

 口の中に入るとまるでクリームチーズのような濃厚な味わい、それでいて後味は全くしつこくない。

 「うまいな! これが最高級のクリームバナナか。」

 あっというまに一本をたいらげ、二本目のバナナに手を出す。

 「二本目でも飽きないな、それにしても少しやりすぎたか。」

 バナナを食べながら周囲を見渡す。

 



 そこにはどこまでも続く大農園が広がっていた。

 ここは”孤黒の宮殿”の数ある内の一室で大農園の部屋でありとあらゆる果物や野菜を栽培している。

 しかし栽培しているといっても特に水をやったり肥料を土に配合していない。

 この部屋では種や苗を植えれば勝手に育ち、水をあげなくても全く枯れない。

 空はいつ来ても晴天状態だが決して熱くはない。

 それにここでは気候や温度はあまり意味がない。

 この農園では区分けをしてはいるが夏野菜や果物、冬の野菜と果物が同じ環境で育っている。

 ビニールハウス等の方法はとらずとも勝手に育ってくれる。

 そしてすごいことにここで栽培したものは実が熟れ過ぎて落ちることはなく、枯れることもない。

 ゆえに放置してても問題なし。




 3本目のバナナに手を伸ばした時、ふとこの前の夜のことを思い出す。

 敵のこと、レクスのこと、そして白金の英雄のこと。

 「かっこよかったなぁ~、俺もあういう格好をすればよかったのかな~。でもなぁ~似せるわけにもいかないからな。」

 ただ1つ確信できたことがある。 

 「あの道化師はださい。」

 ザキフレって名前もどうかと思う。

 それならまだダルトのほうが全然良いと思う。

 「ふふふ、勝ったな。2つの勝負に。だけどあの怪物が気になる。」




 ザキフレはもう問題ないが残りの2人のことはとても気になる。

 般若の仮面を着けていた忍者っぽい奴も個人的に非常に興味があるが、なんといっても白衣の女だ。

 「あの化け物は大きさはちがうけどライブ会場で俺が倒したやつと同じやつだった。」

 もしあの化け物があの女の召喚獣か何かだとすれば、ライブ会場にあの女もいた可能性がある。

 だとすればザキフレに関しては失敗だった。

 「生かしておいて精神を崩壊させて魔法や薬で洗いざらい目的等を吐かせるべきだった。そうすればあの怪物や女のこともわかっただろうに。」

 そう考えてもザキフレはもう手遅れだ。

 今はもう蘇生魔法で復活させることもできない。

 あの時発動した魔法<美食姫への貢物トリビュート・グツェリエゴフ>”は魔界のいる数入る姫の1人、美食姫”ルズベルニガ・グツェリエゴフ”へ食物を献上する魔法だ。




 「美食か・・・・あんな奴うまいのかな? 雑食といったほうがいいのかもしれないな。」

 そう、ザキフレはもう美食姫に食されたのだ。

 後始末はしなくていいのだからこっちとしては非常に楽なのだが、調理法や味の感想などを報告してくるのは正直勘弁してほしい。

 向こうからすれば感謝状のようなものだろうがこっちとしては嫌がらせとしか思えない。

 「指の刺身に肝臓のソテー、頭は素揚げって、それに魂は漬けにしたってどういうことだよ。それと今度はご一緒にどうですか? って・・・・まぁ魔界の住人なんだから人間も食材の一種なんだろうな。野生の肉食獣も人間は襲うし。」

 そういう訳でザキフレはもはや体はもちろん魂のかけらすら残っていない。

 「はぁ・・・・もう考えても無駄だな。 うおっ!?」

 足元にはバナナの皮が散乱している。

 「俺はいつの間にこんなに食べていたんだ。」

 そんなことを考えているとバナナの皮は地面に吸収されていく。

 「何か怖いな・・・・。さてと、準備するか。」

 一神斎は”杖”を取り出すと転送の魔法を発動すると農園を後にする。


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