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33 白金と黒銀(3)

「ふむ、これは予想外。」

 絶命している2匹の虫を空中から眺めながら腕を組む。

 試作品とはいえ自然発生するスケルトン等のアンデッドとは比べ物にならない強度と戦闘力を誇るものだ。

 一般的なスケルトンでも人間が素手で倒すのは困難ものなのにあの男はいつの間にか3匹を瞬殺した。

 3匹の虫を放ち、考え事をしながら空を見上げた時に破裂音がしたので下を見ると虫に氷柱が突き刺さっていた。

 ベンチ前の男がそれをやったのは間違いない。

 虫など自分にとっては問題にならないがあの男は自分が目を離したほんの一瞬で3匹の虫を片付けたのだ。

 最初にこの2人を見かけた時はただの一般人だと思い虫の戦闘テストとエサやりついでに放ったが結果は瞬殺、このまま放置するのは危険だ。

 男が一般人でないことは明確だし、この後に防衛隊やギルドの人間にこのことを報告することは必至。

 試作品の虫を失ったことは問題ないが虫の残骸を回収されるのはまずい。

 それに少しこの男に興味がある。

 自分でも自覚しているが困った性分だ。

 だが仲間との約束もあるので手短に済ませなければならない。

 道化師は両手の手のひらを上に向けるとカラフルな球が出現し、道化師の周辺に漂う。

 「さて、それではごきげんよう。」

 少し手を傾けると球は勢いよく男に向かって飛んでいく。

 初弾は避けられるも球は連続で飛んでいく。

 「ほほぉ、避けますか。」

 初弾は躱されるも球を連続で飛ばしていく。

 しかし、次の攻撃が当たるよりも早く標的の男が手を突き出して叫ぶ。

 「”魔法の障壁マジック・シールド”!!」



 ベンチと前の男をドーム状の障壁が包み込み、次々と球が直撃し爆発するも同じ位置で爆発を繰り返しているところを見ると完全に攻撃を防がれているようだ。

 「魔法・・・・・・少々話を伺う必要がありそうですね。」

 避けれることは何度かあったが、自分の攻撃が完全に防がれているのを見るのは初めてのことだ。

 これ以上攻撃をしていても意味がないだろう。

 攻撃を一旦止めて、煙が晴れるのを待つ。

 「ふむ、あの攻撃で死ぬことはないでしょうね。それにしてもあの魔ー」

 煙の中から5本の炎の矢が飛んでくる。

 道化師は回避するために一瞬で下に降りる。

 「なかなか喧嘩早い方のようですね。」

 煙の中から禍々しい黒と銀のローブの者が出てくる。

 見た目からして魔導師と考えて問題ないだろう。

 「よく言うよ、さっきの虫もお前だろう?」

 「否定しても信じないでしょう?」

 「生きて帰れると思うなよ?」

 「くくく、これは怖い。」



 道化師がベンチの方に目を向ける。

 「おや、お連れ方はどうされたのですか? それにその御召物・・・・仮面まで。」

 「お前にそれを言ってどうなるんだ? 素直に殺されてくれるのか?」

 「それは無理なご相談です。」

 道化師が嘲笑ぎみに答える。

 「ご安心下さい、私もあなたに伺いことがありますので少々痛めつけたのち同行を願います。」

 道化師の周囲にはカラフルな球と手投げナイフが漂う。

 その言葉を聞いて仮面の下にある一神斎の顔がにやける。

 (よし、逃げる気はないようだな・・・・・・殺してやる。)

 「どうしました? やる気があるのは服装だけなのでー」

 道化師が嘲笑しながら一神斎に話しかけた瞬間、周囲の空気が重くなり一神斎の身体から黒いオーラが出てくる。

 道化師は今まで感じたことがない圧迫感に体が石のように固くなるのを感じていると。

 「もう一度言おうか、生きて帰れると思うなよ?」

 目の前の禍々しい男が口を開いた。




「この辺りか。」

 レクスは周囲を見渡す。

 この辺りは閑静な住宅街で、最近この付近で怪しい者が目撃されている。

 人食いはまだ捕まっていないうえに最近は怪人や怪物の出現率が増加傾向にある。

 防衛システムも怪人や怪物向けに開発、更新している最中でなので原始的だがこういう場合にパトロールや注意勧告しかできない。

 上空からも無音ステルスヘリで随時パトロールしている。

 だがあまり有効だにはなっていない。

 「他の班にも油断しないように伝えといてくれ。」

 「はい。」

 ナルスが腕の通信機で他のパトロール班へ連絡する。

 「静かで良いところだな、こんな所で怪人の目撃情報とはな。」

 ナルスは連絡を終えてがレクスへ近づいてくる。

 「それにしても何も隊長自らパトロールに出向かなくても。」

 「いや、ミナトのことがある。隊のみんなは信頼しているが何もせずじっとしていられなくてな。」

 「そうですか。」

 レクスの目には確固たる決意があった。

 

 レクスとナルスは2人並んで住宅街を歩く。

 途中で出会う人には早く家に帰るように促したり、家まで送ったりしながらパトロールをする。

 そして時計が12時を示そうかとした時だった。

 「レクス隊長ー!」

 同じくパトロールしている隊員の1人がこちらに走ってくる。

 レクスとナルスは足を止める。

 「ん? あれは・・・・。」

 「あれは、マリー隊長の隊の方ですね。名前はヒタシ隊員です。」

 走ってきたヒタシ隊員は2人の目の前で止まると敬礼をする。

 「何かあったのか?」

 「はい、自分と一緒に巡回していたジョンドー隊員がトイレに行くと言って公園の方へ行ったきり戻ってこなくて。」

 「戻ってこない? 連絡も取れないのか?」

 「はい、応答はありません。一応トイレにも見に行ったのですがどこにもいませんでした。」

 「レクス隊長、ジュンドー隊員といえば生真面目で戦闘経験も豊富な方です。彼の性格上仕事をエスケープすることは考えられません。」

 「ああ、俺も彼のことはよく知っている。エスケープではないことはたしかだ。まさか・・・・。」

 レクスは腕に着けている通信機起動させてみる。



3人に緊張が走る。

 「レクス隊長、これはまさか。」

 ナルスも自身の通信機が起動しないことを確認する。

 「ああ、通信機能だけではなくその他の機能も駄目だ。」

 「まさかジュンドーは怪人に!?」

 レクスは少し間を置いて二人に指示を出す。

 「ナルス、お前は周辺にいる他の隊員と合流して応援要請を送れ。」

 「はい。」

 「君は俺と一緒に、その誰だったたか・・・・」

 「ジュ、ジュンドーです!」

 「そうだった、ジュンドーが消えた公園のトイレに向かう。先導してくれ。」

 「はい、わかりました。」

 レクスとナルスはお互いの目を見ると違う方向に走り出す。


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