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20 別荘は別世界

 自宅の周囲が騒がしい。

 どこから情報が漏れたのかはわからないが、テレビでは連日あけみ件が報道されている。


 ~政府軍の討伐隊隊員が死亡!犯人は最近話題に上がっている”人食い”か!?~


 こんな感じで新聞にも掲載されている。

 (あいつ”人食い”なんて呼ばれてたのか、世の中わからないものだ。)

 ホットコーヒーを飲みながら新聞を読む。

 やはりあの男は討伐隊の隊員だったのか、あの場をすぐに立ち去ったのは正解だな。確実に面倒なことになっていただろう。

 お腹もへっていたし。

 新聞によると犯人である”人食い”はまだ発見できていないようだ。

 「もう姿形もないけどな。」 

 そう、”人食い”ことあけみはもういない。

 俺が葬った。

 まさか同級生を倒す・・・・・・というか同級生が怪人になっていたとは夢にも思わなかったが別に気にしない。

 あけみは俺を殺・・・・・・食おうとしたんだ、抵抗して当然だ。

 あそこで逃がせばまた襲ってくるだろう。

 それに自分を殺そうとしてきた相手に情け容赦は不要だ。

 


 ベランダに出て見ると、上空には報道ヘリが絶え間なく飛んでいる。

 この時代のヘリはほぼ無音なので音は気にならないが洗濯物をほす時に目に入るのが少し鬱陶しい、せっかくいい天気なのに。

 部屋の中から音が聞こえる。

 「ん? この音はマンションの管理室からか?」

 ボタン押しインターホンにでる。

 「はい。」

 「コンシェルジュの高見沢です。」

 美しい女性の声だ。いつ聞いても癒される。

 「はい、どうかしました?」

 「ただいま政府軍討伐隊の方が先日の怪人の事件についての聴取と注意勧告のために各お部屋に伺っておりますので、お時間がよろしければご協力お願いいたします。」

 「わかりました。わざわざありがとうございます。」

 「それでは失礼いたします。」


 昔からコンシェルジュのいるマンションはあるが自宅のマンションは地元でも有数の優良マンションである、と思っている。

 万が一のために元討伐隊員の警備員が常在している。

 40階建てだが各階層には5部屋しかなく贅沢な間取りになっている。

 正直一人暮らしには広すぎる、実際このマンションで一人暮らしをしているのは自分くらいなものだ。

 エレベーターも8機ありエスカレータもあり地下には核シェルターも完備。

 地下通路もある。

 


 だが最近ではこういうマンションも増えているらしいのであまり珍しくないらしい。

 時代の流れというやつだ。

 金はあるので更に高級なマンションに住むことはできるが今のマンションでも持て余しているのにその必要もないし、これから先もここ以上のところを寝床にするなんて思っていなかった。

 だが今は名だたる高級マンションや豪邸、外界にあるお城など目が霞むほどのものが自分の手の中にある。



 インターホンが鳴る。

 「はい。」

 「お休みのところすみません、私政府軍第6討伐隊隊長のレクスと申します。先日の事件のことでお話しをお伺いしたいのですが。」

 コンシェルジュの高見沢さんが言っていたことだな。

 「わかりました、少々お待ちください。」

 一神斎が扉を開けるとそこには一人の男性が立っていた。

 茶髪でガッシリした体格、討伐隊の制服を着ていた。

 「コンシェルジュの方から話は聞いてますが。」

 「そうですか、話が早くて助かります。」

 こちらとしてもこんな話は早く終わらせたい、これから予定もあるのだ。

 「早速なのですが、先日の事件のことはご存知でしょうか?」

 「えぇ、テレビや新聞で見ましたが、その程度でしかわかりません。」

 本当のことは言えない。

 言えば面倒ごとになるのは目に見えてる。



 「事件の日はどちらに?」

 「家にいました。夜にコンビニとドラッグストアへ買い物に行きましたが。」

 「何か変な音などをお聞きしませんでしたが?」

 「人を食べる音と地面を叩き割る音は聞きましたよ?」などと言えるはずもない。

 「変な音ですか・・・・・・買い物もすぐに終わらせて帰宅しましたし、家にいた時もテレビをつけていたので何も聞こえませんでしたが。」

 一神斎の答えに対してレクスは苦笑いをする。

 「そうですね、ここは30階ですから下の音は聞こえませんよね。下の階の方々も同じことをおっしゃっていました。」

 「すいませんお役に立てなくて。」

 「いえ、貴重なお時間ありがとうざいました。」

 (もう終わり?意外とすんなりだな。)

 こう思うのも自分が当事者の一人だからなのだろう。

 「最後にご存じだと思いますが、しばらくの間は夜分遅くの外出は控えるようにお願いします。昼夜問わず我々がパトロールをしておりますが危険ですので。」

 「わかりました、わざわざご苦労様です。」

 「いえ、これも務めですので。それでは失礼します。ご協力ありがとうございました。」

 お辞儀をすると扉を閉める。

 (政府もまだ何も掴めていないのか、あけみを塵にしたのはやはりまずかったか。)

 


 「隊長苦労様です。」

 「あぁ、ナルスの方はどうだった?」

 レクスは部下であるナルスに結果を聞く。

 「はい、通報者の住むマンション全員と会うことができましたが怪しい者はいませんでした。」

 ため息交じりでナルスが答える。

 「そうか、こっちも同じだ。注意勧告はちゃんとしたか?」

 「はい、問題ありません。」 

 「そうか。」

 息が詰まりそうだ、ナルスはとても優秀なのだが真面目すぎる。

 レクスにとってはあまり得意なタイプではない。

 (顔は綺麗なんだが目がするどくて怖い・・・・・・)

 言葉を発さないレクスにナルスが不安そうに声をかける。

 「隊長? 何かございましたか?」

 ナルスの問いかけに我に返る。

 「え? いやなんでもない。一度本部に戻るか、アリナもそろそろ到着するはずだし。」

 「わかりました。」

 ナルスは駐車場へと向かう。

 「ナルスと二人の気まずい車内、 それにアリナに何て言えばいいのか・・・・。

 足取り重くレクスも駐車場へと向かう。

 


 「何か拍子抜けだな。」

 一神斎はソファに腰かけホットコーヒーを飲みながら先ほどやり取りを思い出す。

 もしかしたら自分が事件の当事者の一人だと目星がついているかもしれない。

 会話の中で何かに気づいて俺に疑いをかけてくるのではないかなどと色々想像していたが何事もなく終わった。

 「現実はこんなもんか。」

 漫画や映画のようにいはならないもんだな。

 今回の場合は助かったがな。

 別に悪いことはしてないし。



 元々こちらで派手に動くことはしないがあまり外出しない方がいいだろう。

 もちろん仕事には行くがな!

 だがそろそろ仕事も辞めてもいいかもしれない、ここ最近外界で見つけた物やクエスト報酬でそこそこ稼げることも判明した。

 ”真理の錬金釜アルケミーポッド・オブ・ヴェリティ”もこういう時にも役立つ。

 元より金は持ってるので問題はない。

 世間体を気にして働いていたが無理に働く必要もないだろう。

 それに製造業の仕事と外界での冒険を比べたら外界での冒険のほうが夢がある気がするたぶん。

 

 それに最近休日はこの家と別荘の行き来しかしていない。

 今日も別荘に行くつもりだ。

 別荘と言っても避暑地にあるようなものではない。

 むしろどこにあるのかわからない。

 外界にあるのか内界にあるのかもわからない。

 魔法で調べてみたがわからなかったのだ。

 別次元の世界にあるということで無理やり納得した。

 いつもは暇つぶしを兼ねた探索をしているのだが今日は別荘でやりたいことがある。

 転移の魔法で行くこともできるが、念じるだけも行くこともできる。


 ”孤黒の宮殿”と。

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