11 ホムンクルスでの冒険(1)
「う~む・・・・・・」
一神斎は大きな釜を前に腕を組む。
「武器や防具に関してはあまり万能とはいえないな・・・・」
一神斎は床にある大剣を見つめる。
この大剣は先日の遺跡でフィリア・・・・だったか? と交換した剣を”真理の錬金釜”で錬成したものだ。
交換した普通の剣を魔剣・・・・まではとはいかなくても、それなりの剣にしようと思ったのだが・・・・。
「普通の大剣だ。」
そう大剣に変化しただけだった。
普通に考えて大剣になっただけでもすごいことなのだが・・・・。
石を金に変え、適当な物を入れても完璧なホムンクルスを作る釜なのに剣は姿形は変えられても普通の剣を魔剣や聖剣等にはできないのだ。
どうやら魔剣や聖剣などといった物に変えるのは無理のようだ。
武器や防具に魔法効果等を付与するのは簡単だが、そのためには魔石とか何とか石が必要みたいだ。
もちろんそんな物は持っていない。
だがこの釜で普通の石をそれらに変えることはできるが面倒だ。
それに様々な効果を付与したところで所詮は普通の剣だ。
オリジナルが作れるならまだしも見た目が普通の大剣にそんな労力は使いたくない。
「だってカッコいい剣がいいもん!」
形から入るのは大切だ。
ゲームならばまず棍棒、ぬののふくとかになるのだろうがこれは現実だ。
嫌な言い方だが金もある。
正直に言えば武器も防具もある。
それも最高、最強、最高峰の物が。
「でも使えないんじゃ意味がなぁぁぁい!!!」
正確にいえば”俺自身”は使える。
だが俺の代わりに、いや俺が乗り移って冒険をする予定のホムンクルスは装備できないのだ。
ならば俺自身が行けばいいだけなのだがそれはできない。
「だって面倒だもん。」
正直怖いし、死にたくないし、強いとわかっても通用するかわかんないし。
ホムンクルス自体は強くしてある。
下位モンスター程度なら素手で倒せる・・・・と思うたぶん。
だが装備品がない。
防具は通販で購入済みだが武器がないのだ。
武器の購入は一般人ではできないのである。
目の前に大剣はあるが・・・・。
「だってカッコいい武器がいいもん! (二回目)」
モチベーションが全くあがらない。
調べなくてはいけないことや準備することはたくさんあるのだが、そんなことはどうでもよい。
「外界で買うしかないのかな・・・・。」
パソコンで調べてみる。
「その前に組合で登録しないといけないのか・・・・。」
どうやら外界にはギルド冒険者組合があるらしくそこで仕事を斡旋してくれるらしい。
「何か想像と違うな・・・」
組合とかまるで会社みたいだ。
「でもたしかにゲームみたいにモンスターがお金を持ってる訳でもないからな。」
実際にモンスターがお金を持っていたとしてもその金目立てで討伐するなんて強盗殺人と同じだ。
ゲームではよくやるけど・・・・・・。
「いや!襲ってくるからだ!身を守るため・・・・過剰防衛!?」
「<思考停止>スキル発動!!(自称)」
良く練ったココアがうまい。
ー2時間経過ー
「くっ・・・・ぐす・・・・泣けるぜ、名作だ『七人のマッチ売り』」
『七人のマッチ売り』
~放映時間110分、感動ラブストーリーである。田舎町で生まれ育ったジョンはこのまま田舎町で一生をおえることに疑問を感じ都会に出てて一山あてることを夢みる話。しかし幼馴染のステファンと夢である都会との間で揺らめきながらもマッチを売るバイトに勤しみそこで出会ったバイト仲間5人と友情をはぐぐんでいく話だ。最後は幼馴染と結婚し田舎町で暮らすことを誓うという涙なしでは語れない映画である~
「名作だ・・・・ただマッチ売りは6人しかいないし幼馴染が最初と最後にしか出てこないのは腑に落ちないが・・・・。」
そしてふと我に返る。
「こんなことしてる場合じゃないな。」
とりあえず冒険にでるとするか。
「どこか田舎の町にでも行くとするか。」
過去に旅行で行った街では大きすぎる。
まずはゲームのように小さな田舎町にでも行って組合に入ろう。
「でもあまり田舎すぎると組合がないかもしれんな。でも外界はほとんど知らないし・・・・。」
ここでふと大剣に目をやる。
「キネハ村か・・・・。」
以前いった遺跡の近くにある村だ。
あの時は遺跡にしか行ってないが・・・・行ってみるか。
そうと決まれば早速行くとしよう。
一神斎はRPRに入りホムンクルスへとログインする。
「よし!」
ホムンクルスの体に入り防具を装備する。
通販で購入した防具七八万七千円税込み。
本当はフルプレートにしようと考えていたのだが、あまりカッコいいものがなかったのだ。
ごく普通の防具。全身ではなく黒と銀を基調とした防具。
ホムンクルスの身体能力は普通の人間の非ではない。
なので防御力よりも機動力重視の防具である。
「よし! <転移>で・・・・・・あっ。」
ホムンクルスでは魔法が使えない。
「外界にいけないじゃん・・・」
-30分後ー
「何とかなったな。」
”真理の錬金釜”である道具を作成したのだ。
「これぞマジックアイテム【絶対帰還】~」
これを使用するとこの家に帰ってこれるのだ。
ちなみにオリジナルのため名前を付けたのは自分である。
結構気に入っている。
使い切りアイテムだが大量にあるお土産キーホールダー1つでできる低コストアイテムだ。
帰りの手段はできた。
行きは<時間差>を掛けた<転移>で行くしかない。
「いざキネハ村へ!!」
外界にへ行った一神斎の姿はキヌハ村ではなくキヌハ村から2km地点の道を歩いていた。
「組合所がないって・・・・それにキネハ村ではなくキヌハ村だったか・・・・。」
キヌハ村に着いた一神斎はまず組合を探したがなかった。
組合はある程度大きな町にしかないそうだ。
村人から聞いた話によるとここから5km行ったところにある「メハル町」というところにはギルド冒険者組合がありそこで登録等ができるという話だ。
「はぁ・・・・もう帰りたい。」
出鼻を挫かれた感じがする。
そしてビックリするくらい道中は何もなかったのである。
モンスターくらい出てくるかと思ったが何も出てこない。
ただ5kmを歩いただけだった。
ただメハル町は意外にも大きな町だった。
モンスター対策の壁が町を囲んでおり、ちゃんと門番がいる。
ただ思った以上に頼りない感じだ。
こちらの世界とはまるで違う。
本当にゲームの世界のようで門番の装備は甲冑に剣や槍といった感じだ。
科学が発展してないとはいえあまりにも原始的ではないのかと疑問に思う。
家や建物もゲームみたいんだ。
ただワクワクするのはたしかだ。
「よし組合で早速登録しよう!」
一神斎は急ぎ足でギルド冒険者組合へ行く。
「地味だ・・・・。」
一神斎は大きな掲示板の目の前で呟く。
この掲示板には様々なクエストが張られている。
目を引くのはモンスター討伐だ。
やはり数や強さによって報酬金額が全然違う。
しかし、モンスター討伐等のクエストが受注できるのはDランクの冒険者からだ。
一神斎は首に掛けているプレートを見る。
何ともいえない薄汚れた銅板だ・・・・ランクはE。
登録したばかりなので仕方がないが、Eランクが受注できる仕事は薬草の採取のようなものばかりだ。
「本当にゲームみたいだな。」
ギルド冒険者組合
~無数にいる冒険者や数あるギルドに対し仕事を斡旋、紹介するのが主な仕事であり、たまに組合側から冒険者達に依頼をする場合もある。また個人でも組合を通じて仕事を依頼することができ、名指しの指名をされれば一人前の証である。またクエストに関係なくてもモンスターを討伐しその証明を組合に提出することでモンスターのランクによって報奨金が貰える。冒険者はE~Sまでランク分けされそのランクに適したクエストしか受注できない。内の世界にあるギルドヒーロー組合とも提携している。~