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10 初めての冒険(4)

 二人は同時に驚愕の声をあげる。

 一神斎はゴーレムが追いかけてきたことに対してだがフィリアは別のことで驚愕していた。

 「ありえない・・・・このゴーレム、転移の魔法を使え・・・・る?」

 フィリアに言葉に一神斎も少し疑問に思った。

 一神斎には実在するゴーレムがどういったモンスターかはわからない。

 しかし、ゲーム等で出てくるゴーレムは大体物理攻撃タイプで魔法を使用できるゴーレムなどいるのだろうか。

 それにフィリアの反応を見る限り一般的なゴーレムの認識でも魔法を使用する何てことはないのだろう。

 「それに遺跡内では気が付かなかったけど、こんなゴーレム見たことない・・・・新種のゴーレム?」

 フィリアは独り言を呟きながら腰にある剣を引き抜きゴーレムに対して構える。



 そんなフィリアを後目に一神斎は一人思考を巡らせていた。

 (妙だな。遺跡に入った時にマップにゴーレム反応がなかったが・・・・転移する前はマップに反応があった・・・・ということはこいつは遺跡内に転移してきたのか・・・・・・それとも誰かが?)

 「注意してください!攻撃が来ます!!」

 フィリアの叫びながら横に並ぶ、一神斎は我に返る。

 ゴーレムが攻撃を仕掛けるために身構えていたのだ。

 (考えるのは後だ・・・・とりあえずゴーレムを片付けるか。)

 <腐食王の息吹ブレスオブ・コロージョンキング

 ゴーレムの周辺に赤銅色の異様な空気が流れる。

 その瞬間ゴーレムの体が崩れ落ちていく、それだけではなくゴーレム周辺の草花は枯れ朽ちていき、岩や遺跡の入り口までも塵になり崩れていく。

 そしてゴーレムは完全に消滅し、ついでに遺跡の入り口まで消滅し完全に塞がってしまっていた。 



 「あぁ~、やりすぎたか。草花も枯れちゃったし・・・・まっ結果オーライってことで。」

 隣のフィリアは両ひざを地につけ呆然とし、ブツブツと何かを呟いている。

 「ありえない・・・・下位アンデッドならまだしもゴーレムを・・・それもかなり上位らしきゴーレムを跡形もなく・・・・・・」

 一神斎にはフィリアが何を言っているのかわからなかったが、冒険者とはいえ10代の少女があんなゴーレムを目の当たりにしたら腰くらいぬけるよなとくらいに考えていた。

 「大丈夫?」

 「・・・・・・え? は、はい!大丈夫です。」

 一神斎が優しく声をかけるとフィリアは驚いたような反応を見せて急いで立ち上がる。



 「す、すごいんですね、あれほどのゴーレムを一撃で跡形もなく・・・・。」

 一神斎はまたやってしまったと心の中で後悔しつつ表には出さないように気を付け、話題を無理やり変える。

 「ははは、そんなことありませんよ。そ、それよりフィリアさんはなぜあの遺跡に?」

 突然の質問にフィリアは慌てて答える。

 「は、はい。あの遺跡に眠るという伝説の聖剣{ホーリーエンジェル・レイピア}を探しに訪れたのですが・・・」

 フィリアの目が一神斎の左手にあるレイピアのほうに動く。

 「普通に考えたらそうか、でもこの剣使おうとすると手から滑り落ちるんだけど・・・呪いか何か掛っているのかな?」

 するとフィリアが不思議そうな顔で剣について説明をする。

 「え?・・・あのぉその剣はですね、女性にしか装備できないと言われていまして・・・この界隈では有名な聖剣なのですがご存じなかったのですか?」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 二人の間に微妙な空気が流れる。



 沈黙に耐え切れずにフィリアが口を開く。

 「で、でもですね、剣として価値がありますし高値で売買できると思いますよ!?」

 一神斎は心の中でフィリアに対しなんてていい娘なんだ、と思いながらもフォローされたことによる心のダメージも受けていた。

 「・・・・・・はい、これ。」

 一神斎は苦笑いをしながらフィリアに聖剣を差し出す。

 「え!?」

 フィリアは予想していなかったのだろう、今まで見せたどんな表情よりも驚いた顔をしていた。

 驚愕の表情で固まってしまったままのフィリアに対して一神斎は優しく声をかける。

 「君にあげるよ。」

 「そ、そんな受け取れません。先に聖剣を入手されたのはあなた様なのですから!」

 「気にしなくていいよ。それに女性にしか装備できないのなら持っていても仕方がないからね。」

 「でも、私はあなた様に助けられてばかりで何もしていないのに・・・ましてや聖剣なんて受け取れないです。」

 「だったらこの剣は君に対する激励かな?それに俺は魔法使いだから剣は合わないだろうしね。この剣ならと思ったけど装備できないなら君が貰ってくれたほうが聖剣も喜ぶだろう。」



 一神斎は説得するもフィリアはまだ悩んでいるようだ。

 確かにこの剣は美しい。装備はできないにしても武器収集なんてのも面白そうだが目の前に必要としている人がいるなら渡した方がいいと考えたのである。

 「なら交換はどうかな?」

 「え?」

 「君が今持っている剣とこの剣を交換しよう。それなら後ろめたくないだろう?」

 「私は構いませんけど・・・この剣は大した剣では・・・」

 「いいさ、装備できる剣と装備できない剣なら装備できる方が俺には価値があるからね。」

 「わかりました。」

 フィリアは腰に掛けていた剣を差し出し、聖剣を受け取る。

 聖剣を持っているフィリアはとても様になっていた。それになんとなくだが聖剣もよし輝いて見える。

 一神斎は交換した剣を片手に持つと、聖剣をうれしそうに見ているフィリアに話しかける。



 「さて俺はもう行くよ。用事もあるしね。」

 聖剣を眺めていたフィリアは慌てながら頭を下げる。

 「あ、ありがとうございました。命を助けてもらったばかりか聖剣までいただいてしまって!」

 「あぁ、気にしないでって。」

 「この御恩は一生忘れません。本来ならば何かお礼をさしあげなければ・・・」

 目に涙を浮かべながらお礼をいうフィリアに対して一神斎は手を振りながら答える。

 「あ、あのもしよろしければお名前を・・・・」

 「・・・・いや・・・・ちょっと名前は・・・・その。」

 えっ・・・・とした表情で見つめてくるフィリアに一神斎は少したじろぐ。

 (ここで名前を言うわけには行かない!外界だけならまだしも、もし内の世界にこのことが知られれば平穏な生活はできなくなる。)

 ただでさえフィリアは自分の魔法などに目を輝かせていたのだ。

 ここで名前を言えばそこらへんに触れ回る可能性がある。

 冒険はホムンクルスで行い、自分自身は目立たず今まで通り平穏に生活していこういう計画を立てている一神斎からすれば今回のフィリアとの遭遇だけでも想定外なのにこれ以上はごめんだ。



 「実は極秘任務でここに来ていてね・・・名前は言えないんだ。できればここで会ったことも忘れてほしい。」

 「極秘任務・・・ですか?」

 「そう。本当は誰に会ってもいけないものだったのだが・・・君の身の安全のためにもこのことは忘れてほしい。もしまだ聖剣のことで思うところがあるならこのことを忘れくれる対価と考えてくれないかな?」

 我ながら中々良い内容なのではないだろうか、と一神斎は考えた。

 (漫画やアニメ、映画などはこういう時に役立つのだな。)

 一神斎はフィリアの返答をドキドキしながら待つ。

 (なんで何も言わないの~!!・・・こうなったら記憶消去の魔法を!)

 「わかりました。」

 「わ、わかってくれるか・・・・ありがとう助かる。」

 一神斎は頭を下げる。

 「や、やめてください!誰にでも事情はありますし私は感謝しかしていませんので、今回のこと忘れるくらいのことでしたらいくらでも。」

 (いくらでも忘れるって・・・・・・。)

 「そ、それではもう行くとしよう。」

 「あの! 次にお会いする時にはいただいた聖剣を使い越し、この剣に相応しい戦士になっていることをお誓いいたします!」

 「えっ、あ、うん、が、頑張って。それでは。」

 一神斎は<転移>の魔法を唱えこの場から消える。



 一神斎が去った後の草原にはフィリアが一人一神斎がいた場所を見つめている。

 「どこの王国の方なのでしょう・・・着ていたものも今まで見たこともない服装だった・・・いつかまたお会いできますよう。」

 フィリアは目を閉じ両手を祈りの形にするとそう呟いた。



 一神斎は自宅に戻ってきた。

 「疲れたぁ・・・あの娘本気じゃん・・・。」

 一神斎は杖を手放すと杖はどこかへと消える。

 冷蔵庫からお気に入りの乳白色の炭酸ジュースを取り出しソファにどかっと座ると深いく息を吐き出す。

 「はぁ~! 疲れたぁ! やっぱ冒険は俺には向かないな! 無理だわ(笑)」

 防具や魔法の効果は確認できたのはいいがその他のことはまるで意味がなかったと一神斎は感じている。

 「剣は使えないし・・・よくわからん変な娘とは出会うし、もう外界には行かないほうがいいな!やっぱ冷房の効いた部屋でジュース飲みながらホムンクルスで冒険した方が俺に合ってるだろうな!」

 床に転がっている剣に目をやる。

 「これは後で釜に入れて自分好みの剣に変更しよう。」

 「それにモンスターとは初めて対峙したけど魔法はかなり有効だな、それにしてももう少し体も鍛えたほうがいいな。こっちにもモンスターはいるしまだまだ試したい神具はあるしな!」



 ”ぎゅぅぅぅぅぅぅ~”

 これからの事を考えていると一神斎の腹の虫が鳴る。

 「腹減った・・・もう4時じゃん! あぁ~今日はピザでも頼むか! そうなればピザピザパラダイスだな!」

 一神斎はスマホでデリバリー注文をしながら呟いた。

 「今日は動いたからLサイズ2枚にしよう。」 

 こうして一神斎の初めての冒険は終わった。

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