双子姉妹とお風呂、前編
非常識な光景であった。
場所は脱衣所。
そこにいるのは、兄と、その妹が二人。晶と沙夜香、それに綾香。
綾香は、兄に向きあっている。
羞恥のためか、その頬は少し赤みを帯びて。
顔をうつむかせ、うっとりと兄の手をとっていた。
これから、彼の前で裸になるのだ。
「兄様、服を脱がせて」
晶の手を、胸元に誘導させつつ、言う。
どきどきしながら尋ねると、晶はくすりと笑ってうなずいた。
ごくごく普通の学園の制服。白いブラウスとスカート、それにネクタイ。
ボタンに手をかけられる。まずは上から。ブラウスの前がはだけられて、下につけたキャミソールがあらわになっていく。しゅるりと、ネクタイが抜け落ちた。
「ああ……」
綾香は、息を吐いた。
(うれしい)
うれしい。うれしい。うれしい。
大好きな晶の手で服を脱がされているのがうれしい。
これから兄様と一緒に、お風呂に入るのだ。
隣から、双子の姉の沙夜香の羨望の視線が注がれているのがわかる。
(ふっふー)
兄様の視線を、意識を独占している。そう思い、姉に対して優越感。
晶の手が動く。
キャミソールも脱がされて、白いブラジャーがあらわになる。ちょっと恥ずかしい。同年代に比べてかなり大きな胸。晶にはどう思われるだろうか。大きいのは好きなのだろうか。そういえばクラスの男子は体育の時間になるといつも自分や沙夜香の胸を見てくるが。
やはり男の人は、大きなのが好きなのだろうか。
ふにゃりと、触れられる感触。
「あ……」
その温かさに、心地よさに、綾香は思わず声を上げる。
晶の顔を見る。
少し、いつもと違う。いやらしさの混じった、男の顔だ。
うれしい。
ほかの男にそう見られるのは不愉快だけれど、兄にそう見られるのは嫌いではない。いやむしろ、もっと見てほしい。
もっと。
自分に欲情してほしい。
さわって、ぎゅって抱きしめて、頭をよしよしと撫でて、そしてキスして、あちこちをまさぐって欲しい。舌も絡めて、大人の女の人がするようにいやらしいことをしてほしい。
「ん……」
ふと、とても恥ずかしくなって、綾香は胸と太ももの間を隠した。
気づけばすべての衣服が、下着も取り払われていて、彼女は生まれたままの姿になっている。
そうして、少し遠慮がちな兄の視線にさらされると、胸が熱くなるのがわかる。興奮している。
「ごめん」
晶の声。ふいと、視線が外される。
「むぅ」
もっと見ていいのに。手持無沙汰になって身じろぎする。
「お兄様、私もお願いします」
沙夜香が言い、うっとりとした顔で兄の手を促す。晶の手が、沙夜香の服にかけられる。
沙夜香が微笑む。
想いは同じなのだろう。
「ぬぅ……」
服に手をかけられる双子の姉。自分と同じ顔だちから送られる視線が、どうだうらやましかろうと云っている。
にやにや。
晶の手に自分の手を添えて、エプロンドレスを脱がされるのを手伝いながら。
姉が優越感にまみれた視線を送ってくる。
むかつく。
「兄様、さむいー」
ムカついたので姉を脱ぎ脱ぎさせている最中の兄に後ろから抱きつく。沙夜香から気をそらさせるためだ。ふにふに。柔らかな胸が兄の背中でつぶれる。
「あ」
「お、おう」
自分の声と、晶のどぎまぎする声とが重なった。
(すごく、いい)
晶がシャツを着ているのが少しだけ残念だったけれど。ブラウス越しとは比べ物にならないくらいわかりやすく、ぬくもりが伝わってくる。
押しつぶされた胸の、頂の部分からじんわりと、甘い感覚が沸き起こってくる。
体がうずくのがわかる。
息が、少し熱い。
吐息が晶の背筋にかかる。えっちな気持ちになっているのに気づかれただろうか。
「綾香、邪魔しないで」
「するつもりはない。ただ身体が兄様のぬくもりを求めているだけ」
さわさわ。
背中に胸を押し付けつつ、晶の腕の下から自分の腕を回す。胸板のあたりを手のひらで撫でまわす。さわさわ。
「お兄様は私の服を脱がせるのに忙しいの」
「兄様の背中、あったかい……」
聞いちゃいない。
沙夜香は小さく息を吐いた。気持ちはわかる。わかるが、むかつく。
「お兄様、こっちに集中」
晶の手を取り、フロントホックブラの胸元へと誘導する。上着はすでに脱がされていた。スカートも、ワンピース形状の服だったのでもうない。白いショーツとFカップの胸を包むブラジャー、沙夜香が身に着けているのはそれだけだ。
ぷちりと、ホックを外す音。妹を脱がす兄の動作は、異世界に来てからのこの数か月でだいぶ慣れてきた。慣れさせたのは自分だ。
裸にされる。
「にゃー」
顔を上向かせ、沙夜香は晶の口端にキスをする。服を脱がせてくれたお礼だ。
脱がし脱がし。
綾香の手が、晶の胸板からお腹のあたりをまさぐっていた。シャツのボタンに手をかけている。外す。次のボタンに手をかける。外す。
「ほう」
沙夜香は笑う。笑いつつ双子の妹にならい、兄の胸に抱きつきながらズボンのベルトに手を伸ばす。かちゃかちゃ。
ズボンを脱がせた。
露出したトランクスは、明らかに前が大きくなっていた。
「おお」
と、綾香が感嘆の声を出し。
「お兄様のえっち」
蠱惑的な流し目をくれながら、挑発するように沙夜香が言う。
双子とはいえ、沙夜香と綾香の性格は微妙に違う。沙夜香は温和で飼い主によくなつく、ペルシャネコのような気質。綾香は天真爛漫で甘えん坊、アビシニアンのような気質。
共通しているのは晶に対して従順で、いたずら好きなところだろう。
「ぬぅ……」
困ったようなうめきを、晶は出した。
背中に妹の胸が、前からも妹の胸が当たっている。ともに、全裸だ。
トランクスを脱がされた。
「「わー」」
双子の声が重なった。歓喜の声だ。
「まじまじと見るな恥ずかしい」
「お兄様、興奮してるなら素直にそう言えばいいと思います」
「そうそう。兄様、自然な生理現象ですから恥ずかしがることはないですよ。ね、触ってもいいですか?」
わくわく。
王族の末裔の美少女たちが、熱い視線を晶の股間に注ぎ込んだ。
「さっさと風呂に入る」、憮然として晶が言い。
「はい。お背中流しますね」と、沙夜香。
「じゃあ私は前を洗うね」、弾む声で綾香。
そんなこんなで。
兄と二人の妹たちは、風呂場に入った。
***
風呂場にて。
晶は、王族の血を引く妹二人に挟まれていた。
姉の沙夜香は晶の背中を、妹の綾香は前を担当している。じゃんけんで綾香が勝ったのだ。
ごしごし。
沙夜香はわりと真面目に兄の背中をスポンジで洗う。
綾香も姉と同じく、わりと真面目に兄の腕のあたりをスポンジで洗う。
晶の股間の紳士は、かなり激しく自己主張している。二人の妹たちも晶も、あえてそちらから視線を外していた。
「温かいのう」
ふひぃ、と、晶は息を吐いた。
「兄様は沙夜香と毎日、一緒にお風呂に入ってるんですよね」
「ああ」
晶がうなずく。
「いいなー」
と、綾香。
「いいでしょう」
沙夜香がかぶせる。
綾香は晶の手をとり、にぎにぎした。胸のあたりで抱きしめる。
「こっちで暮らしてからの一か月以上の間、一緒にお風呂に入った裸で兄様に抱きついたり、兄様の手が滑って胸に触られたり、あまつさえおっきくなったその、そこを見て変な気持ちになったりしてたんでしょう。いいなー」
「ぷふー、向こうじゃ世間体のせいで一緒にお風呂になんて入れませんものねー」
「そう。ずるい。私も兄様とたくさんいちゃいちゃしたい。えっちしたい」
晶の腕をとり、どさくさ紛れに自分の胸に誘導する綾香。
ふにふに。
泡にまみれた晶の手が、少女の大きな胸を優しく撫でた。
「あっ……♪」
嬉し気な声を出す綾香。しかし晶の手は、すっと離れて行ってしまう。
「エッチはまだだめです」
「けち」
「けちー」
沙夜香と綾香がそろって抗議する。
「察してくれ。お兄ちゃんだって辛いんだ」
やや情けない声で晶は言った。双子の姉妹に挟まれ、意図的に押し付けてくる柔らかいおっぱいの感触を堪能させられて、彼の股間の紳士はこれでもかというくらい大きくなってしまっている。
「兄様、まだ沙夜香に手を出してないの?」
「出すのが当然みたいな言い方はどうかと思う」
「あ、ごまかした」
「でも、もう少ししたら貰ってくれるって約束してくれましたものね」
「……正直言って、理性がどこまで持つかわからん」
「私はいつでもいいのに」
不意に。
はぁ、と、晶の首筋に吐息がかかる。
ふにゃりと、肩甲骨のあたりに柔らかい感触。沙夜香のFカップの胸が押し付けられていた。
「抜け駆けはよくないと思うの沙夜香」
言いつつ。
ぎゅっと、綾香が前から抱き着いた。
晶の胸板に、自分の胸を押し当てて。
姉に対抗するように、首筋に顔をうずめて兄の匂いを嗅ぐ。
綾香の好きな匂いだ。かすかに汗の香りがする。大好きな晶の匂い。
くらくらしてきた。
ぷっくらとした彼女のお腹のあたりに、晶のがあたっている。
ドキドキする。心臓の鼓動が、高くなっているのがわかる。
「兄様、キスしたい」
綾香が言った。
「唇以外なら」
「はい。ちゅっ」
口はしにキスをする。
「じゃ、私は首筋ね。ちゅっ」
ちゅっ。ちゅっ。と、ついばむように双子の妹たちが何度もキスをする。時折、晶の表情をうかがって、嫌がってないことを確認しながら。
(や、ば、い)
晶は思った。
このままでは流されるままに抱いてしまいかねない。
「はい、二人ともおしまい。泡を落としてくれないか」
「えー」
「けちー」
双子がそろって抗議する。
「代わりに次がお兄ちゃんが洗ってあげるから」
「はい」と、淑やかに沙夜香。
「やたー」と、はしゃぐ綾香。
そんなこんなで。
お風呂でのいちゃいちゃはまだ続く。
後編にご期待ください。