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妖艶な魔術師のお姉さんに介抱された

 温かい……。

 大きくて柔らかくて、素敵な弾力を持ったぬくもりに頭が包み込まれている。


 おっぱい……。


 女性の胸。それもかなり大きい人の。手を寄せて、やんわりと揉みこむ。ふにふに。

「あっ……」

 なまめかしい声。

 手を少し下にやる。たおやかな腰。ぷにぷにとした肉感を帯びながら、ほとんど余計な肉がついていない。理想的なプロポーション。

「って、うあ」

 起き上がろうとして、頭がぐわんとする。すううと血の気が引いていく感覚。遠のく意識に晶は逆らおうとして、そのままベッドに、というか女性の胸に倒れこんだ。

「暴れちゃ駄目よ、坊や。もう少しそのままにして。でないと死ぬわ」

 蕩けるように甘い声で、その女は物騒なことを言った。

 おかしい……。

 なぜ?

 疑問が、もうろうとした頭によぎる。


(何故、裸なんだ……?)


 彼女は普段から裸に近い恰好をしているが、それにしても最低限の節度は保っていた。

 くるぶしまで届く長いマントを羽織り、その下には下着と見まがおうようなきわどい布地を身に着けて。歳の頃は、三十手前くらい。たわわに実った二つのふくらみに、むっちりとした太もも。妖艶な顔立ち。

 魔術師オリヴィエ。サフィーリア率いる白翼騎士団に所属し、魔法の手ほどきと異世界から来た客人の能力の鑑定を行っている。

 そんな彼女が。

「坊や。いえ、アキラ」

 素っ裸になって、彼を抱きしめている。

 甘い吐息が、耳にかかる。

「オリヴィエさん……これは、いったい……?」

 むき出しの胸と、その頂にある突起を眼前にしてどぎまぎしつつ。晶は尋ねた。

 晶の方は裸ではない。ゆったりとした白衣を着せられている。下着も、つけている。

「マジックヒーリング。魔力が枯渇しかけたから私の魔力を補充しているの」

「何で、服を脱ぐ必要が……」

 至高の柔らかさに顔をうずめながら、晶は尋ねた。

 これまで似たようなことは何度もあった。洞窟探索でセーブポイントを設置する際、晶の魔力が大量に消費される。それを治癒魔法の得意なジェシカが抱きしめて補充する、というのがいつものパターンだった。

「私はジェシカよりこの手の魔法が下手だからね。直接肌を触れ合わせる面積を増やす必要があるの」

「ああ、そうですか……」

 半ばもうろうとした頭で、晶はなるほどとうなずく。

 くすりと、笑い声。見上げるとオリヴィエが、愛おしげに頭を撫でてくれる。

「それとね、趣味。坊やを一度こうして抱きしめたくて。他の男だったら絶対にしてあげないわよこんなこと」

「あはは」

 なんと反応していいかわからず、晶はとりあえずごまかし笑いを返した。

「あんっ」

 吐いた息が、胸の先の敏感な部分にあたったせいか。オリヴィエが声を立て、ふるりと、身体をすくませる。ぎゅっと、頭を少し強く抱きしめられた。

 柔らかい。

「あの、どうしてこうなったんですか?」

 晶は尋ねた。そうだ。どうしてこうなった。

 場所は、オリヴィエの管轄する魔法研究棟。多種多様なフラスコや薬品がおいてあり、魔法陣を組むためのコンパスや塗料がしつらえられている。普段の彼女はここで、さまざまな魔法を開発しているという。

 部屋の片隅には仮眠に使うためのベッドと寝具が人揃えあり、オリヴィエと晶は、そのベッドの上にいる。そしてオリヴィエは裸になって、白衣を着せた晶を抱きしめているという構図であった。

「パラメータをいじってセーブポイントを三か所以上に設定できるようにしようとしたのよ。それで大失敗。坊やの魔力が暴走して慌てて実験を中止。制御不能になった魔力が全身からダダ漏れ状態になったから慌てて押しとどめた後、ヒーリングをかけたわけ」

「なるほど」

 説明が頭に入ってくる程度には回復してきた。まだぼんやりとしているが。

「それにしても……」

 優しく、恋人にするように愛しげに、オリヴィエは晶の頭を撫でる。

「ずっとこうしてたくなるわね」

「いやあの、嬉しいんですけど困ります」

「どうして? 私は坊やのこと好きよ」

 くすくすと、オリヴィエが笑う。

「坊やは私のこと嫌い?」

「好き、嫌いの二元論を性欲に振り回される免罪符にしたくありません」

「あは」

 からりとした笑みを、オリヴィアは浮かべた。

「そうそう。坊やのそういうところがとっても好き」

 頬に手を添えられ、つぅ、と、撫でられる。

 ただそれだけなのに、ゾクゾクと背筋が泡だった。身体の中心部に血液が溜まる。妹達にはない魅力だ。ひょっとして魅了の魔法などというものがあり、それを使われたのではないかと不安になる。そのくらい、心が揺らいでしまう。

「でも、無理強いはよくないわね」

 すっと、オリヴィエの身体が離れる。ぬくもりが遠ざかり、晶は正直なところ残念に思った。

 傍らにあった水着のような下着のような服を取り、オリヴィエは身に着けてゆく。マントを羽織り、そして魔術師の証である先の尖った帽子をかぶった。

「気分はどう?」

「頭が重いですけど、なんとか歩いて家に帰れそうです」

「よかった。でも、無理しちゃだめよ。しばらく横になってなさい」

「ういっす……」

 素直に、晶は横になったまま返事をした。やはりまだけだるい。

 オリヴィエは、簡易ベッドにむっちりとしたお尻を乗せる。色気がすごいなあ、と晶はぼうっとした頭でくだらない事を思った。

「せっかくだからお話ししましょう」

「へい」

「坊やは、騎士団についてどう思う?」

「綺麗なお姉さんばっかりだなあと」

「ふふふ。そうね、ありがとう」

「男はいないんですか?」

「いるにはいるわね。騎士団に所属する五百名弱のうち、兵站や情報処理、装備のメンテナンスなどの後方担当部隊が約半分の二百名ちょっと。そっちの方には何人かいる。けど、ダンジョン探索や王都の警備をする前線部隊に配属された男は坊や一人だけ」

「何か理由があるんですか?」

「一つは、実力の問題ね。男は魔力が低いの。魔導鎧や魔法のマントを来た私たちは音速を超えてくる小銃(ライフル)の弾を何発か受けても無傷でいられるわ。目に見えない魔導障壁が弾いてくれるの。ところが一般的な男は魔力がないから魔導障壁を展開できない。当然、大けがをするわ」

 この世界、クアドフォリオには小銃がある。

 四百年ほど昔に黒色火薬が発明され、それから五十年の時を経て火縄銃すなわちライフルの原型が発明されたという。

 しかしあまり普及していないのは、古来よりある魔導鎧の防御力と動きやすさが銃の攻撃力と連射性を凌駕しているためであろう。それに、コストもまだ高い。

「なるほど」

 晶は得心した。

 ダンジョン探索で、二メートル以上あるオーク豚の突進をサフィーリアがこともなげにいなしたのを見たことがある。あれはそういうからくりだったのか。

「僕には魔力が?」

「そこそこあるわ。前線に置く条件を満たしている。じゃないと団長は探索任務に就かせることはなかったでしょうね。あの子、厳しいから」

「納得しました」

「あとは、性的な話。ほら、私たちってこういうきわどい服を着ているでしょう? 変な男を傍に置くと、誘っていると勘違いされて面倒くさいことになるのよ。だから男を新しく入れる場合はよほど使えるかどうかと、団の風紀を乱さないかどうかを天秤にかけて兵隊長のみんなで話し合ってから慎重に決めるの」

「そんな話し合いがあったんですか」

 くすりと、オリヴィエは笑う。

「坊やは満場一致で合格だったわ。不思議ね。坊やの入団を決める際は、一目見ただけの団員が大半だったのよ。私を含めて。それでも自然と揉めることがなかった。うちの団員って、私を含めてけっこうな男嫌いが揃っているのになんでかしらね」

「あれ、オリヴィエさんって男が嫌いなんですか?」

「ええ。特に私の場合、かなりきわどい恰好をしているせいかしら、娼婦みたいに扱われることがままあるの。特に貴族のお坊ちゃん方は最悪。顔がいくらよくて金があってもこっちからお断りよ」

「苦労しているんですね」

「そうよ。でも何でかしらね」

 そっと、オリヴィエは晶の後頭部に手を添えて。

 ぎゅっと、彼を抱きしめて、胸にうずめさせた。

「わぷ」

 晶は驚いて声を出す。しかしすぐに、そのまま身をゆだねた。

 柔らかく、温かい感触。

 心臓の音が聞こえる。とくん、とくんと、一定のリズムで響いてくる。

 不思議と安心する。抗えないのは、晶もまたオリヴィエにそれなりの好意を抱いているからだろうか。

「坊やとなら、ずっとこうしてたい。他の男にこうするのを想像しただけで鳥肌が立つのに。分かるかしら。私の心臓の音。小娘みたいにドキドキして、坊やと仲良くなりたいって思ってるのが。坊やなら、好きな時に好きなように触ってもいいのよ」

「ぬぅ……」

 柔らかい胸に包まれて、晶はつっぱねることもいたずらすることもできずに流れに身を任せた。オリヴィエは魅力的すぎる。それだけではない。彼女が自分に向けてくる明らかな好意と気遣いが、晶に抵抗の意欲をなくさせた。

 その気になれば、オリヴィエは彼をレイプすることができるだろう。一流の魔術師とちょっと訓練をしただけの一般人。実力差は歴然としている。

 けれど、彼女は無理強いしない。

 少しだけ力を入れれば離れられるように、配慮してくれている。

「坊や、団長から告白されたでしょう?」

「ええ」

 胸に顔をうずめたまま、晶は答えた。

「私も坊やに告白するわ。坊やが、アキラが好き。アキラが誰が一番好きなのかは知っている。ならせめて、側女(そばめ)の一人にしてほしい。アキラの傍に置いて、好きな時に好きなように性欲処理に使って欲しい……」

 囁くように言い、その吐息が耳にかかる。これ以上ないくらいに、魅力的な申し出。

「オリヴィエさん……」

 晶は、彼女の顔を見て。

 彼女の顔に手を添えて、そっと、顔を近づけさせた。

 触れるだけのキス。

「坊や……」

 オリヴィエの顔が、劣情と思慕と興奮を伴って赤くなっていた。



出してほしいキャラの要望あれば可能な限り反映させますので感想お待ちしています。

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