簀巻き+魔力封印。
「・・・で、簀巻きにして転がしてあるわけだが。
襲い掛かった理由は、なにかあるんだろうな?」
「あの、人、ではないですよね。『何者か』から、
とてつもない魔力が放出されていたんです・・・。
大魔法の詠唱中でもそこまでいかないかもしれない、というくらいに。
威嚇に使うにしてもあまりにも濃すぎる濃度だったので、爆発魔法の準備かなにかだと判断して攻撃しました・・・。」
「ふむ。魔力か。
それっぽいものの気配はたしかに感じたが。
攻撃に使うような感じはなかったぞ。
だいいち、魔力を空間に放出してから攻撃、って言ったら、たとえるなら「武器を意味もなく捨てて、それを拾って攻撃」くらいに無意味な行動だしな。」
「あの~。たぶんなんですけど。
本の解読に気力使って、それと一緒に魔力が出ちゃっただけなんじゃないかな~と思います。
魔力認識の初期訓練の時って、『気力を無駄に使ってみてそれと一緒に出る魔力を認識』、ってとこから始まるので。
もしですが、魔力がものすごーく高ければ、無意識に出る量もすごいんじゃないかなーっと。」
「なるほど。そうかもしれんな。
彼女はアレなわけだし。
通常ありえない量が出ててもおかしくないのかもしれん。
まあ彼女が起きたら聞いてみればいいか。」
「あ、あの量を、気づかないで放出、ってありえないわよ・・・。
アレ、って何者なの・・・?」
「第3書庫職員、汐里。
帝国中央図書館、理念暗唱。」
「はい!
帝国中央図書館は、知識を求める純粋な欲望を肯定し、
種族を問わず、思想を問わず、身分を問わず、性別を問わず、生物無生物を問わず、善悪を問わず、
対象の実力と貢献に応じて、それなりに開かれる。であります!」
「(毎回思うけど、このそれなりにってのが正直だよね。)」
「(そうね。しかも貢献の例が『献金』だったりするし。)」
「よし。暗唱はできてるな。
で、魔力が無駄に、って言ったらなんだが、出っ放しの存在もいるよな。死者の王とか。
そーいうのが来た時にいちいち襲い掛かってたら、面倒なことになるから、攻撃はマナー違反を確認してからでいい。
司書検定にもあっただろ。」
「は、はい。」
「あの、横からすみません、しょちょー。
死者の王が出たりしたら、じゅーぶん面倒な事な気がするんですけど・・?」
「なにがだ?
見た目が骨なだけで良いやつだったぞ。」
「そ、そーなんですか?」
「ああ。話が合うから飲みに誘ったが断られたよ。
骨だから無理だってな。」
「(たしか、モンスター図鑑によると、近くにいるだけで死の波動で命削られるはずなんだけど・・・。)」
「(削られていることに気付かないほど体力高い、とかかしら・・・。)」
「それとだ。
危険なものに対してとりあえず技をぶっぱなすのは必ずしも悪いとは言わん。
それが唯一の解決法だった、という可能性もなくはないしな。
だが、あの技は半端すぎるな。
命中率を重視しすぎて、肝心の威力が物足りないものになってしまっている。
これからも戦闘に使う気なら、追撃まで一呼吸でできるようにしておけ。」
「はい!」
「まあ現場復帰できたら、の話だがな。」
「・・・はい、覚悟はしています。」