コビットくんとバニーさん
とある小さな町の酒場。
その酒場のウエイトレスさんには、ウサギの耳がついていました。
「いらっしゃい、はじめましてかな?
酒場『ドワーフの酒蔵』へようこそ。
この酒場のメニューは何でも1つ5チップになってるわ。
安いものほど量が多い感じ。
全体的に大盛りのものが多いから最初は加減して注文するのがおすすめよ。」
「はい、ドワーフ殺しと灼熱ソーセージね。
10チップになりまーす。
空いている席でお待ちくださーい。」
・・・
(からんからん)
「こんばんは~。
おなか減った、なにか食べる物お願い~。」
「コビットくん、また来てくれたのね。
今日はコビットくんの大好きなホワイトシチューがあるわよ~。」
「それじゃ、ホワイトシチューとエールお願い。」
「はい、お待たせ。
ほんとは10チップなんだけど8でいいわよ。」
「ありがとう。それじゃ8。」
「ありがと。そこの席あいてるから座っててね。」
・・・
「なんで新入りのあいつばっかり名前で呼ばれてるんだ、しかもくん付けで。」
「俺たちだって毎日通ってるのになぁ。」
「別に子供なわけじゃないんだよな、あいつって。」
「ああ、小人族は大人であんな感じの体形だったはずだ。」
「顔か、顔なのか。」
「俺たちの顔だってそんなに悪くは・・・。」
「いや、普通に悪いけどな。」
「それにしても、バニーちゃんは相変わらずいい乳してるよな~。」
「あの脚がたまらんぜ。」
「いや、尻のラインが最高だろ。」
「やっぱこの酒場はやめられないよな~。良いもの見れるし。」
「うんうん。通わずにはいられないぜ。」
(どん)
「エールお待たせ。一人5チップ。」
「お、待ってたぜ。ほい、一人5で15。」
「15たしかに。それじゃ。」
「この冷たい態度もたまらんなぁ。」
「いや、冷たくない方がいいけどな。理想を言えば。」
「でも冷たくてもいけるんだろ?」
「まあな。」
「まあとりあえず、今日もかわいいバニーちゃんに乾杯!」
「乾杯!って、きょう何回目の乾杯だ?」
「まあ何回目でもいいんじゃないか?乾杯!」
「コビットくん、おまたせ~。
はい、ホワイトシチューとエールよ。」
「ありがとう。」
「どう?おいしい?」
「うん、今日もおいしいな。ここのシチューは。
ここの食事は僕でも食べれるものがほとんどだから助かるよ。」
「好き嫌いしてると大きくなれないって聞くわよ~?」
「好き嫌いというわけじゃなくて、体質なんだよ。
鼻が利きすぎて、食べにくいものがあるんだ。
おねーさんだって、肉食べろって言われても困るでしょ?」
「え?普通に食べるけど?」
「え?食べれるもんなの?」
「よく勘違いされるけど、草食動物系の獣人だって肉は食べれるわよ。
まあ肉ばっかり食べるってわけじゃないけどね。」
「へぇ、それは知らなかったよ。」
「自分で食べれない物をお客さんに勧めるわけにはいかないからね。
ちゃんと料理するときに味見はしてるんだから。」
「あ、おねーさんが作ってたんだね、ここの料理。」
「肉料理はマスターが作ってるわよ。
それ以外はだいたい私。」
「そうなんだ。
肉料理はにおいが強いものが多いから少し苦手なんだよね。
ここのは薄味のが多いから大丈夫だけど。」
「ここの料理はお客さんによって違う味付けで出してるのよ。
だからほかのお客さんの皿からつまみ食いとかするとひどい目に合っちゃうかもね☆」
「ああ。だから食べやすいものが多いのか。
いつも助かってるよ。ありがとう。」
「・・・ねぇ、コビットくんって、ほんとに小人族?
耳とか尻尾隠してたりしない?」
「普通に小人族だよ?」
「そう?
うーん、なんか同類っぽい感じがするのよねぇ・・・。」
「あのバニーちゃんに同類認定だとっ!?」
「何が違うんだ俺らと!」
「いや、何もかもが違うと思うがな。」
感覚極振りだといろんなことが聞こえてしまうな・・・。
それにしても、あいつらの頭の働かなさには呆れるな。
店員さんがウサギ型獣人って時点で気付けよ。
草食獣だぞ。あの耳だぞ。
聴覚が人間と同じレベルなわけないだろうが。
まず間違いなく、お前らの『小声』は100%きっちり聞こえてるぞ。
毎日毎日『胸が~』『尻が~』言われてたら態度も悪くなるわな。
まあわざわざ教えてやる義理もないけどな。
「うん、ほんとにおいしいなぁ。」
コビットくんは種族「小人族」でキャラクター名が「コビット」。
バニーさんは種族「獣人族(ウサギ型)」で、名前は不明。酒場の客はウサギだからバニーちゃんだ、って勝手に呼んでるだけです。