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いろんな世界の守りかた

「おつかれさま。

これなめておきなさい。」


「ありがとうございます、いただきます。

のど飴、ですね。」


「この世界ではのど飴も回復アイテムよ。

のどの調子の回復が早くなるわ。」


「そうなんですか。」

(ぱく)


「どう?けっこうおいしいでしょ?」


「はい。おいしいです。」


・・・


「あっ、本当に声の調子よくなりました。すごいですねのど飴。

すごく調子悪かったのに、あっという間に治りました。」


「あっという間、というのは少し大げさね。」


「一瞬で治す薬、とかだとかなり難しいけど、

自然に治る物をすこし早く治す、程度ならそんなに難しくはないのよ。

もともとの回復力がリアルとは違うし、「すこし早く治す」という言葉の意味もかなり違うわ。今体験した通りに。

だから、材料だって大したものは使わなくてすむわ。

砂糖と、黒砂糖かはちみつと、ハーブやしょうがみたいな喉によさそうなもの少量だけ。」


「手作りですか、すごいですね。」


「興味あればあなたもやってみる?

さっきの飴くらいならすぐ作れるようになるわよ。」


「はい、やってみたいです。

ところで、話は変わるんですけどひとつ聞いてもいいですか?」


「なにかしら?」


「『歌唱力』がやり方によってはレベルをあげやすい、というのはわかったんですけど・・・

歌唱力が高くなると、どんないいことがあるんですか?」


「歌がうまくなるわね。

上手になるというより、歌の影響力を増す、というのが近いかしら。」


「影響力、ですか・・・。

影響力が高くなると、どうなるんでしょうか?」


「まあいろいろあるわね。」


「まず、あなたが大規模な戦闘に参加するとしたら、後方で回復や強化の歌を歌うことで、仲間を助けることができるわ。

敵が歌や音で攻撃するタイプの場合、特に効率よく仲間を守れるわね。まあスキルが足りないと自分の歌を『敵に効率よく守られてしまう』けど。

それと、もし小規模な戦いに巻き込まれたら、その声で半端な剣士くらいは気絶させたり操ったりできるわ。歌う歌の種類に応じてね。

まあどれもスキルレベルしだいだけどね。」


「歌で気絶、とかできるものなんですか・・・。」


「歌もこの世界ではある程度のレベルをこえると魔法みたいなことになるのよ。

まあ歌に限らず、ほとんどのスキルはある程度を超えるとおかしなことになるけどね。

たとえばセイレーンの歌なんかは『魅了』と『自殺強要』の精神操作の効果があるし。

そこまでいかなくても回復の歌とか強化の歌とかいろいろできるようになるわ。」


「戦闘しない場合だって、ある程度のレベルごとに一般の人の評価も急激に上がるからね。

レベル100を越えればたぶんおひねりだけで生活できるわよ。

試したことはないけど、近いうち試すことになるかもしれないわね。」


「え、けっこう初期資金ありましたよね?

そんなに急になくなるものなんですか?」


「その初期資金が原因よ。

これから急激なインフレで銀貨の価値はほとんどなくなると予想できるわ。

だから、「ほかのプレイヤーに頼らずに日銭を稼げること」が重要よ。

当日使う分は当日稼ぐ、ということが必要になるの。

できれば「金銭以外の繋がりがある、頼れる仲間を作っておく」というのが理想だけど、最悪のパターンのための保険は必要ね。」


「え!?

銀貨の価値がなくなっちゃうんですか?」


「無くなるわね。ほとんど。

計算してみればわかるわ。

初期プレイヤー10万人。

それからの数日は初日より少なかったから、とりあえず合計で10万人と仮定。

それだけで20万人よね。

そして、ベータテストの人を考えないで一人100Sだけの持ち込みと仮定しても、

『この数日で2000万枚の銀貨がこの世界に持ち込まれた』ということになるわ。

今の時点での銀貨の価値を1枚1万円相当と仮定すると、『2000億円』ね。

まあ国単位の話だから、この時点では大した数字には見えないかもだけど、

この世界の人って、あんまり多額の現金を使う生活してないのよね。

村の単位では、まず銀貨をあまり見かけない、ってくらいらしいし。」


「ということだから、流通してる貨幣の数、ってそう多くはないはずなのよ。

そんな世界に2000万枚の銀貨が急に現れたら・・・」


「まず、『貨幣』と『物品』が需要と供給の関係により、貨幣の価値が落ち、物の値段が上がる。

この時点でインフレが始まっているわけね。

そして、急激な貨幣の価値下落がある程度続くと、貨幣に対する信用が下がり、物で資産を持とうとする人が現れてくるわ。

物を手に入れるために貨幣を放出する。それでまたインフレが進むわね。

あとはその繰り返しよ。

最悪のパターンなら、あっちのゲームみたいに、銀貨が最低貨幣になってもおかしくないわね。」


「そしてその過程で、まあいろいろ起きるでしょうね。

今までの資産が無価値になったら食料にも困る人も多いでしょうし。

強盗略奪餓死、その他いろいろ・・・。」


「そ、それを止めるためにはどうしたらいいんですか!?」


「貨幣の流通数を減らすしかないと思うわ。

誰かが、使わないでずっと持っておくの。

とはいっても、価値が下がること間違いなしのものを、ずっと持っていろってほかのプレイヤーに言っても無理でしょうし。

いっそのこと、世界中からお金集めができるくらいの歌手になって、資産ため込んでみる?」


「・・・なってみせます!」


「そう、それじゃなりましょう。

明日から厳しくなるわよ。」

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