村での会話 分業作戦
酒場の一角。
4人が小声で話をしている・・。
「で、人数を集めてなにがしたいのかしら?
「絶対損はさせない」とか言ってたけど。」
「その前に、お前らスキルポイントまだ使ってないよな?」
「はい。まだ使ってません。」
「えっと、私は採掘だけとっちゃってます。でもまだ900はあります。」
「お前ら、って言われる筋合いはないと思うけど。
まあね。まだ使ってないわ。」
「採掘か。それなら大丈夫だ。
スキルポイント全部使えば、かなりの能力付けられるだろ。
この4人で協力すれば、4人分のポイント使って、ものすごい金儲けができるってわけだ。」
「つまり分業ですね。」
「えっと、4人だと、採取、生産、加工で3人、あと何か一つ、といったところですか。
いいかもしれませんね。」
「まあ4人分のポイントを使えば、まず間違いなくそれなりのものができるでしょうね。
で?
どんなものを作る気なのかしら?」
「この先は話に乗るって決めてからだぜ。」
「話にならないわね。
スキルポイントは、私たちプレイヤーの唯一の武器なのよ?
それを全賭けさせるのに、かける物すら言わない?
ありえないわ。出直しなさい。」
「わ、わかった。言う。
鎧だ。」
「鎧、ねぇ。
ちなみに、4人の分担はどう考えてるの?」
「それは・・・」
「言いなさい。」
「俺が鎧鍛冶、あとの3人が採掘、錬金鍛冶、付与魔術だ。
採掘もちがいるみたいだから、あとの2人で錬金鍛冶と付与だな。
俺は鍛冶のために筋力と感覚上げてるから、材料さえあればすごい鎧作れるんだ。」
「えっと、つまり、採掘で素材を確保、錬金鍛冶で素材のランクアップ、その素材で鎧を作って、それに付与魔術で魔法鎧を作るということですね・・・。」
「かなり高そうなものができそうな気がしますね。」
「ますますありえないわ。
採掘はまあありえない選択ではないけど、錬金鍛冶と付与魔術って・・・。
一体何を調べてそんな結論になったのか、気になるけど言わなくていいわ。時間の無駄だから。さよなら。
あなたたちも行きましょう。
こんなのと話してても『絶対得にはならない』わ。」
「は、はい。」
「えっと、錬金鍛冶と付与魔術って、どうしてありえないんですか?」
「錬金鍛冶っていうのはね。
鉄鉱石から銀のインゴットを作ったり、本来ありえないことができるスキルなの。
でも、上位素材狙うとできる製品は品質最悪だし量は少ないしで、材料のほうが高いくらいなのよ。
「スキル上げのための素材確保」くらいにしか役には立たないわ。赤字覚悟での、ね。」
「付与魔術は、魔力を持つ素材を使って加工することによって、魔法の力を持った装備を作れるわ。
たしかに、良い装備につければ価値が上がるわ。かなりね。
でも、あのスキルはプレイヤー以外に使える者がほとんどいないから、『NPCに誘拐される危険性がある』のよ。
誘拐されたら一生付与魔術をかけ続ける生活になると思うわ。
長生きはできるでしょうけどね。『死のうと思っても死ねない程度』には。」
「ちなみに、鎧鍛冶は、買った素材でもできるわよね。
『一人でもやっていける』のよね。それなりのスキルレベルさえあれば。
多少実力があったところで、誘拐もされないでしょうね。
損はさせない、と言いながら一番リスクが少ない役目を先取り。
そして残り3つのうち2つがリスクが大きすぎるスキル。
ありえない、っていうのはそういう意味よ。」
「ああ。先取りは2つだったわね。『えっと』の人もグルみたいだし。
それじゃ。また会うことがないように祈ってるわ。」