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わざでんじゅとすくろーるさくせい

 中央図書館、地下4階にある大部屋。

 がらんとした室内に20人ほどの人間が集まり、エルフを囲んで見ている。


 静かな動きだった。

 少女はあえてゆっくり行動しているんだろう、つまり速さは必要ないということだ。

 階段があるかのように数歩空中を上り、そこからさらにジャンプ、ゆっくりと回し蹴り、回りながら降りてきて、音もなく着地する。

 見ていた者たちのほうを振り向いて、話し始める。


 「こんなかんじ。

 まず、空中歩行で空中を歩く。そこから、空中でジャンプできる<二段ジャンプ>、<劣化・螺旋脚>、<ゴーストステップ>で着地。

 こうすれば、一時的な空中移動ができる。空中歩行の代わりに普通にジャンプするのもいいかもしれないね。

 では、手始めに空中を歩くところからやってみよう。歩けた場合はあんまり高くまで行く前に歩くのをやめて落ちるか下りをイメージして歩くか。空中を歩き始められたら高いところまで登れるだろうけど着地に失敗したら痛いからある程度の高さで降りたほうがいいかも。」


 説明を聞いた者たちが行ったり来たり歩いているが、空中歩行をできそうな雰囲気はない。


 「むー。難しいかな。

 もう一回、こんどは数歩先に上り階段があるつもりで、普通に歩いたところから空中に踏み出す。

 もう一回、こんどはちょっとよそ見しながら、つぎは横を向いて。

 もう一回。力を抜いてまた歩く。」


 歩いて進み、歩いて戻る。

 繰り返すと一人が空中に踏み出し、一瞬だが体を浮かせることに成功する。


 「にゃー。いい調子。空中に立てたら数歩でもそのまま空中を歩くのを目指してみよう。

 立つのがうまくいかなそうだったら、軽くジャンプしてから空中を蹴ってもう一回跳ぶ二段ジャンプとか体重が一時的に軽くなったように動けるゴーストステップを試してみてもいいし。」


 試せばできるかもしれない、という認識。

 一人が不完全とはいえできたところを見れば、そう信じることができる。

 参加者の表情が変わり、やがて体を一瞬浮かせるものが一人また一人と出てくる。


 「そろそろ持ち時間終わり、かな。

 つぎのひと、つぎのわざのせつめいよろしく。」


 「それじゃ次は俺が。

 敵をぶっ飛ばしたときの追撃法だな。さっき攻撃のほうの俺の持ち技が先に出ちまったみたいだからたいした技じゃなくてすまん。

 弓矢みたいな飛び道具のスキルで強いのを持っているとか仲間が追撃担当してくれるとかならいらないと思うが。

 的用の木偶人形を出して、っと、

 まず、六道の構えで次のハイキックの威力を上げる、そこからハイキック!吹っ飛んだところに闘気弾でとどめ!

 ハイキックの時に闘気弾まで先行入力しとくのが基本だぜ。

 つまり、ぶっ飛ばす攻撃を入れる前に「ぶっ飛んだ場合はこの技で追撃」と条件づけて先にコストを払っておく。そうすると追撃も連続技扱いになって威力が落ちにくくなるわけだ。ぶっ飛ばせなかった場合はコストの無駄になるのとキャンセル硬直があるからノーリスクとはいかないが。 

 説明終わりだ。」

 

 「ほう、そんなに違うのか?」


 「やってみりゃわかるけど違うな、追撃はたいして威力は稼げないんだが先行入力なら少しはましになる。当たるか当たらないか関係なく連続技を撃つほうが一番強いんだが隙が大きいからやりにくいしな。

 同じようにジャンプキックみたいな跳んで攻撃する技は威力が下がるけど、ジャンプの時点から攻撃するための力を入れておけば威力があまり下がらないみたいなこともある。

 ジャンプした状態で攻撃を入力するより、ジャンプして攻撃するという一連のコマンドを地上で入れたほうが結果が良くなるわけだな。」


 「ふむ。それなら今試せるな、やってみるか、ふん!

 <大ジャンプ剛断脚>、たしかに力の入り具合が違うみたいだな。空を飛ぶモンスター相手くらいしか使えないと思っていたがこれなら使う機会が増えるかもしれないな。俺は遠距離攻撃の技は持っていないから吹っ飛ばした後の追撃というのは試せないが、同じ理屈だとすれば遠距離攻撃を入手した後には使えそうだ。」


 「だろ?基本的には空中で撃つ技は弱い、だけど抜け道はあるってところだな。

 地上技と同じ威力にはならないけど。その抜け道にかかる手間を威力向上に使えるからな地上技は。

 短くてすまんがこれで品切れだ、次誰かいるか?」


 「次はわたしね。

 魔法の威力が少し足りないときに使っている方法なんだけど、自分がつぎに使う魔法を対象にしての強化をするの。

 自分自身に対して即効性があって強力な強化をかけるのは体に負担が大きい、ちょっと失敗したら部品が持っていかれるくらいにね。

 でも自分の魔法に対して強化をかければ、失敗したところで魔法が不発になるか予定より弱くなるくらいで済むってこと。

 成功すればふだんの限界を越えた威力を出せるしね。

 まず普通に業火招来!これが基本の威力になるわ。次本番行くわよ。

 <狂化・業火>、強いの強じゃなくて狂うのほうの狂の字ね。これは自分を対象に使うと精神状態が不安定になる代わりに能力が上がるものなんだけど、魔法を対象にして使うと魔法の消費MPや威力がランダムで上がるという効果になるわ、ただし時々予想しない変化もするけど。

 <宣言・業火>、これは直後に指定した行動をした時に威力を増す効果ね。

 そこまで準備してから、業火招来!

 こうするとさっきのよりは強くなってるでしょ?」

 

 「なるほど、俺は魔法は使えないが参考にはなるな。」

 

 「にゃー。複数のルートから強化していくのは強化が途切れた場合の違和感も少なくなりそうだし、最終的な威力を高くしやすいだろうからいい方法かも。

 <不動の構え>、<宣言・想起>、<想起・陽光>であかるいひかりー。

 光系魔法は見た目がいい感じになるかな。

 宣言は次の行動内容を細かく指定したほうが効果が高そう、対象が想起だと大分類だけだからほとんど効果はなさそうだね。」


 「光魔法、神殿以外で見るのは珍しいわね。」


 その時、時間の区切りとなる鐘の音が響く。

 

 「予定時間の半分だが、とりあえず一周はしたな。

 技情報の交換会の目的は最低限は達成したと思う。

 で、ここからどうする?解散でもいいかもしれんし、もう一周やってもいいと思うが。」


 「いや俺はさっき言ったとおりにネタ切れだからもう一周って言われてもなんも出せねえよ。

 続けるなら俺が参加費払うとかで調整するか俺だけ抜けるかにしてもらえるか。」

 

 「適当に気になるところを質問する、でいいんじゃないかしら。

 さっきの光魔法がどんな技なのか知りたいんだけど。ゴーストに効くかしら?どこかで売っているなら私も買いたいなって。」


 「み?

 明るいだけの光だから、光に弱いなら効く、日光だけに弱いなら効かない、かな。

 日光を思い出して光らせているだけで、日光なわけじゃない。

 明るさは普通の明かりライトの魔法よりは強くできるけど、輝きシャインとか閃光フラッシュよりは弱い。

 術者が思い出せる明るい光が威力の基準になるから、日光強いところに住んでいたとかならすこし強いの使えるかも?

 それでいいなら習得用スクロール作るよ、かんたんだから。使えば絶対覚えるっていうわけじゃないから覚えられるかはわからないけど。」


 「作れるの?

 いくらくらいで作ってくれるかしら、習得用なら安くはないだろうけど。

 ライトの魔法は持っているけどもうちょっと強い光が出せると便利だと思うのよね。

 物理系の技と違って自分で覚えるのは難しそうだし。」

 

 「み?

 さきにきいておくけど、いくらがいい?」


 「もし銀貨1000枚までだったら即金で出すわ。

 ライトも今の相場だったら1000枚以上にはなるくらいの値段で買っているし、ライトより強い光の魔法が欲しかったのよね。」


 「むー。

 相場はわからないけど、材料費はほとんどかかってないから銀貨10枚なら赤字にはならない。

 だから、銀貨10枚、かな。使っても覚えられるかわからないし。」


 「いくらなんでも10枚は安すぎるから、銀貨100枚でいいかしら?

 成功率が高くはないのはライトを買ったときにも言われているから大丈夫よ。」

 

 「むー。銀貨100枚は安くないと思う。100枚のほうがいいなら100枚でもいいけど。」


 「銀貨100枚のほうがいいから100枚で買うのよ、よろしくね。」


 「らー。よろしく。お金は渡すときに受け取るよ。

 今日の夜になる前くらいにはできると思う。」


 「それなら眠りの刻の少し前、でいいかしら。」


 「らー、それなら受付のあたりにいてくれれば持ってくるね。」

 

 「使える魔法習得で銀貨100枚なら普通に安いな。

 習得用スクロールってのは成功率はどのくらいなんだ?魔導書だって人によっては覚えられないんだよな?」


 「習得自体は確実ではないけどほぼ確実、かな、字が読めないとか日光を知らないとか光弱点だったら成功率は大きく下がるだろうけど普通に読めるならだいたい習得はできる。習得条件がある魔法じゃないから。

 でも魔導書と同じで普通に読んで使えるのは1回だけだから、もし失敗したらもう一回新しいのを使わないとダメ。

 低確率で大失敗で予定外の技が思いついちゃう場合があるかもしれないけど、その場合は本来覚えるはずがないものも覚える可能性があるから逆にすごいかも。」


 「それなら、俺も銀貨100枚で同じものを頼めるかな?」


 「らー。大丈夫。スクロールは今度会った時に渡すのでいいかな?今日は1枚しか作らないから何日かあとにはできてると思う。原紙が今あんまり在庫ないからね。」


 「今度会った時、それなら七日後の昼くらいでいい?」


 「らー。それでいいよ。

 急用でいないかもしれないから、わたしを探すためにシグナルのスクロールを渡しておくよ。

 スクロールを開いているときにわたしは開いてるなーってわかる。

 図書館の地上階の中でスクロールを開いているのをわたしが見つけた時でほかに予定が無ければ話しかけに行く。

 ガイドでも良いんだけどガイドは効果時間が短いからね。」

 

 「助かる、そのシグナルの分は銀貨100枚追加でいい?」


 「むー。

 わたしが見つかりにくくしているのに対抗するための道具だからタダで。シグナルは他に使い道あんまりないし。

 銀貨100枚の中からもらうってことにしておく。」


 「……どう思う?もらっていいのかなこれ?」


 「連絡先を教えてもらおうとして連絡方法としてスクロールが出てきたんだから、ふつうにもらっていいと思うわよ今回は。

 銀貨100枚で習得用スクロールを出しても損をしないなら、消耗品用スクロールなんてオマケで付けても問題ないくらいなんじゃない?

 私はガイドを買いたいけど売ってくれるかしら?」


 「らー。ガイドも持ってるからいいよ。ガイドは1枚銀貨20枚かな。習得用より安く、銀貨10枚より高くな感じなら。最大で5枚まで。」


 「ありがとう。5枚買うわね。知らない魔法だからうれしいわ。」


 「シグナルを選ばないんだな、ガイドは効果時間が短いって言ってたが。」


 「シグナルを鳴らしたところに来てくれるなら、もし今回何かがあって会えなくても、あんたと一緒にいれば一枚で済むじゃない。

 それなら買うのはガイドにするほうが正解よ。どんな効果かは知らないけどシグナルが余るよりは役に立つのは間違いないわ。」

 

 「なるほどな、そういうことなら二枚あっても意味はなさそうだもんな。」


 「でしょ?それに、せっかくだから両方見たかったしね。」

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