ぱんけーきのたね。
とりあえず仮復帰、生きてはいます。
帝国中央図書館、地下仮眠室。
白い壁に魔法陣が浮かび上がり、魔法陣からゆっくりと人影が現れる。
「あ、白ちゃん帰ってきた。おかえりー。そしてただいまー。みやっちは今日も残業だって。新しい魔法を考えるって言ってたけど、どんな感じ?順調?」
「はーたん、たらいー。今回もよそう通りの失敗。なぽたんを魔法で再現するのはやっぱりむずかしい。錬金合成のほかにも代行魔法とか神託魔法も試してみたけどまだ成功はしてない。」
「あらら、そりゃ残念だね。でも、鎧とかは簡単に作ってるっぽいわりに、ナポリタンはまだ作れないんだねぇ。」
「らー。そうだね。鎧ならムダに使っていいくらいにじゅうぶんな材料があって最低限の性能で種類ランダムなら魔法で簡単に作れる。今の在庫だと魔銀、魔鉄、ミスリルとかオリハルコンまでだったらいけるけど、ちゃんと鍛冶道具を使えるひとが作ったものと比べると全然性能が違うはずだから、本当に最低限だけどね。筋力が足りてないのはどうしようもないからわたしはあきらめるしかない。
あとは以前作ったものの複製とか、軽い損傷の修復とかならある程度までならできる。
だから、ランダムでほしい物を引き当てるまでは難しいかもだけど、いちど当ててしまえばあとはなぽたんより簡単。
薬とかはなんかできそうな感じに材料をそろえて魔法を使って、できたものに適当にそれっぽい名前を付けるだけだからすごく簡単。」
「なるほど、なんでも作れるわけじゃないけど作れるものはナポリタンより簡単ってことか。ナポリタンならどこでも売ってる気がするけど、そこまでしてナポリタンを作りたくなるもんなの?」
「らー。こどものにんげんのひとがよくいうらしい言葉で『お菓子屋になればお菓子食べ放題』、みたいな夢物語の話。必要になればいくらでも作れる、っていう状態がうれしいかんじ。ほかの魔法に興味があるものがあんまりないから、ほしい物を作れる魔法を作ってみたらいいんじゃないかな、っておもった。」
「アイテムボックスに山ほど入れておくみたいなのではなくってことね。」
「らー。たくさんあるのもいいけど、必要な時に補充できるのはもっと安心。でも好きなものと嫌いなものは魔法で再現するのは難しい。このみとか先入観は対象に対するイメージを変える、再現する魔法の場合はそういうイメージの変化が弱点になって魔法の構成を邪魔することがあるかんじ。攻撃魔法とか請願魔法とかの場合は自分が持っているイメージを利用して魔法を構成することが多いし、現象を再現する場合は実物と違うイメージでも問題ない場合もあるんだけど、物質を再現する魔法のばあいは対象の定義づけに客観的な情報が重要。たぶん、なぽたんの味がする木材、とかを作るほうが簡単だとは思う。」
「ナポリタンの味の木材、って、食べ物じゃないよそれ。普通においしい物を買いに行ったほうがよさそう。」
「らー。そうだね。おいしいものは買ったほうがラクかも。
でも今日は、パンケーキの材料がそろったから、パンケーキみたいなものを作ろうかなって思った。
だから、植木鉢も準備してある。アイテムボックスにいろいろはいってる。」
「そっか、まあ材料がそろってるなら作ってみるのもいいね。フライパンとかじゃなくて植木鉢?」
「らー。植木鉢は重要。でもまずは生地作りから。高品質なギムギの粉とゼライムパウダーを20対1くらいの割合で混ぜる、今回はギムギを1コップくらいかな。あとは甘い汁とミノミルクとイエローゲルをいいかんじの量入れる。混ぜてこねて小さくまるめる。
半分作ったら、黒い粉を残りの生地に混入して続き。混ぜて混ぜて、もう少しで…、できたー。
つぎは団子を果実と定義して、ウィード草と錬金合成。『パンケーキみたいなものの種』が完成、あとは植木鉢にうえて魔力で促成栽培してできるのをまてばいいだけ。できるまでは、だいたい4刻くらいかな。けっこうかかるみたいだね。このままじゃ眠くなるほうが早いし、もっと急いで作ることもできるけどおなかがすくし、ほかの物でおなかいっぱいになったら作る気はなくなりそう。だから、パンケーキを食べたいきぶんの今選ぶべきなのはパンケーキを買いに行くこと。育てるのはあとにしておく。」
「あ、結局買うんだ。まあ4刻かかるんなら待ってられないし、買いに行こうか。地下の食堂にする?市場に行く?」
「むー、どっちにしようか。みーたんが帰ってくる時間って、どのくらいかな?」
「いつも通りの残業だろうからあたしが仕事終わってから1刻遅れくらいかな、長い場合でも。だから今からだったら長くて半刻くらいじゃないかな。買い物とかしてから来るならもう少し遅くなるかもしれないけどそんなに大きくは変わらないと思うよ。」
「それなら、地下の食堂ですこし多めに買って余ったらアイテムボックスにしまうことにしよう。帰ってきてからもう一回行ってもいいし。」
「そうしようか。みやっちはおすすめメニューの中からちょっと変なのを注文する癖があるから、同じ感じで選んでおけばいいかな。」
「らー。そうしよー。」
「最近図書館の残業多いみたいだよね、客が多くなったから仕方ないことだけど。儲かってるみたいだし。あたしは残業しないで帰るほうを優先してるけどさ。図書館に日暮れギリギリに来る人があんなに増えるとは思わなかった。」
「らー。そうだね。たくさんひとふえた。最近は迷宮の夜間出入口として使っている場所も図書館以外にあるみたいだから、使えなかったらほかの出口を使うだけだろうから、接客が大変なら営業終了ってことで地下からの入り口を締め切っても大丈夫だとは思う。ここの図書館は残業するかどうかも自由みたいだし。ポーションとかの販売はもともとの仕事の範囲外みたいだし。」
「うん、まあね。新人なら残業するまでもなく体力使い果たしてる人もいるし、残業は体力と余裕がある時だけしてればいい。でも夜更け前ギリギリに来るお客さん目当てで待機してる職員も今はいるみたいだから締め切るのはちょっともったいないかな。誰かがやる気がある間は続けてもよさそう。誰もやる気がなければだれもいなくなるだけだし。」
「むー。そうかも。」
「まあとりあえずパンケーキ買いに行こうか。」
「にゃー!」
精神状態が比較的まともな時に続く予定。
謎肉とか謎肉丼とかが商品名で使われてた単語だったことを知らなくてふつうに書いてたのも放置してたけどそのうち修正したい……怪しげな名前ないかなー。ギリギリ旨いかもくらいの。