てらくさのぽーしょん。
「薬屋開店してみたのはいいけど、ヒマだねえ。お客全然来ないっていうか通行人も少ないし。」
「らー。そうだね。もともとあんまり人こないところだっていうはなしだから、これでふつーなのかもしれないけど、人少ない。」
「でもなんでこんなにお客いないんだろうね。前通る人はときどきいるけど入ってくれないし。普通に考えれば、店に人が入ってきて買わないで帰るんだったら売り物が悪いのかなと思うかもしれないけど、今回の場合は店に入ってきてすらいないわけだから、店の宣伝ができてないか、入りたくないような店の作りか、まずポーションを欲しい人が近くにいないとか?呼び込みとかしたほうがいいのかな。」
「むー。薬屋、調剤代行もあります、って書いてあるから、看板がおかしいこともなさそうだと思う。ちゃんとにんげんことばと下位古代語と香料信号で書いてあるからほとんどのひとにはどれかは読めると思うし。竜爪言語は彫り込めなかったけどあの言語は他の言葉と共存しにくいからだきょうするしかなかった、それだけ気になるけど、このまちに竜爪言語しか読めない人がいる確率は充分に低いと考えられるから、もんだいないと仮定することにもんだいはないと考える。だから、この近くを通る人が少ないことが原因かもしれないし、ポーションがいらないひとが多いのかもしれないね。みたかんじケガしてる人少ないし。ケガしててもそれを前提とした体の動かし方が身についている人もいるみたいだし。」
「うん、大ケガしても生きている人っていうのはだいたい運か実力か仲間がすごくいいかすごく悪いかのどっちかだろうからね。普通の人よりは強い人が多いんじゃないかと思うよ。この街の偉い人ってだいたい大きな古傷あるし。しょちょーは例外かな。」
「らー。しょちょーはけがをしてそうなかんじはしないね。そろそろおなかすいたから、ごはんをたべてからあとのことは考えることにしよう。」
「そーだね。ところで、しょちょーからおいしいものもらうって言ってたけど、結局何もらったの?昼ご飯に使えそうなもの?」
「み?塩漬け肉だね。どわーふのひとは塩味にはこだわってる場合が多いらしいし、たぶんおいしいんじゃないかな。」
「それならどんな味か焼いて試してみましょうか。」
「らー。そうしてみるー。」
・・・・・・
「はい、そんじゃ次の人注文は?焼き鳥3本、りょーかい。」
「3本ならもうすぐ焼けるわ。はい、お待たせしました。」
「おまけ3人ぶん出すー。」
「ありがとー。つぎ、スペシャル盛り4人前お願い。」
「おまけセット4つ出す。むー。たべるためのおかずを作ってただけのはずなのに、どうしてこうなったんだろう。きゅーけいじかんのはずなのに。もともときゅーけいしてたけど。」
「最初に聞かれたときに断らないで売っちゃったからふつーに出店あつかいされてるみたいだねー。まあ大量に肉を出せるのはふつうは商人だし。勘違いするのも仕方ない。ふつうはごはん作るのにわざわざ大型バーベキューコンロ出してきて料理とかしないだろうし。焼き肉のにおいで人が寄ってくるのもわかる。」
「むー。ハンターとかまほーつかいとかいろいろいるとおもう。」
「いや、まあそうなんだけど。そーいう人が焼き鳥売るとか…けっこうあるか。鳥がちょっとおかしい種類なだけで。」
「はい、スペシャル4人前おまたせ。」
「ありがと、スペシャル4人前お待たせしましたー。」
「やあやあこんちは開店おめでとさん。薬屋さんのはずがなんで焼肉売ってるのかわからんけど、商売繁盛してるみたいやねー。タヌキさんが開店祝いにきたでー。」
「み?たぬきさんだ、こんにちはー。開店祝い持ってくるのに普通に行列に並んでたんだね。しょうばいはんじょうはたぶんしてない。」
「タヌキさんこんにちはー。薬屋のお客がこないから休憩してたらこんな感じになったみたいだよー。」
「この行列の中知り合いだからって割込みはできんやろ。なに売ってるのか見えたら買いたくなるしな。あ、これ開店祝いのハムサンドな。まあ肉売ってる店に差し入れるのが肉ってのもカッコつかんけど、これ買ったときは肉売ってるとは知らんかったし勘弁しといて。そんで、せっかくだしなんか買っていきたいんやけど、今残ってるのでおススメってどんなん?」
「にゃー。ありがとー。あとでみんなでたべるー。いろいろあるよ。売れてるのはグリフォン肉のやきとり、安い肉いろいろの気まぐれ盛り、やきとりとほかの肉も付くスペシャル盛り。それぞれおまけで未鑑定のポーションがつく。そのなかでも一番売れてるのはやきとりだよ。」
「グリフォン肉、ってまた変わったもん焼いとるね。5人分だとなんぼになる?」
「気まぐれ盛りは一皿銀貨1枚、グリフォン焼き鳥は1本で銀貨1枚。スペシャル盛りは銀貨5枚で串5本と気まぐれ盛り一皿のセットだから、5人なら銀貨5枚か25枚かな?ハムサンドもらったしおまけをもっとおまけする。ちょうどおなかすいてた。」
「腹減ってるときに肉焼いて商売ってのもしんどいわなぁ。まあそれはおいといて、その値段ならスペシャル5人分頼みたいけど、持ち帰り用の入れ物とかあるんかな。」
「らー。使い捨ての皿があるし、5人分ならプレゼントボックスで圧縮保存して渡すこともできるよ。たべるまでに時間がかかるならもっと魔法いろいろかけるー。」
「プレゼントボックスって作れるもんなん?そんじゃプレゼントボックスで頼むわ。箱代別とかでないんやったら銀貨25枚やな。保存時間はふつうで大丈夫やで。あ、でも保存が長期でできる方法があるんやったらあと5人前くらいほしいな。ところで薬屋さんやったらポーションのほうを買うこともできるんかな?」
「らー。箱代はかからない、保存の魔法かけたのも作れるからあとで作る。ポーションは作れるもので売れるものならできる、でも今日はこれからお昼ごはんできゅーけいするから、今すぐ出せるのはあるものだけになる。もともと薬屋だから肉屋さんは開店してないけど。どんなポーションがいい?値段とか目的きめてくれればそのはんいでえらぶよ。」
「どんないわれてもポーションは専門外やから詳しくはないんやけど、まず普通のケガに効くやつ、酸とか毒とかなんかやばげなもんぶっかけられたときに使えるやつ、あとは気軽に飲めるようなやっすいのをいくつか、って感じで集めようと思っとるんよ。いま潜ってるあたりではまだわかりやすいモンスターしか出てこんけど、この先いろいろいそうやからね。いい感じなんあったら見繕ってもらってええかな。」
「むー。「ふつーの」でケガに効く、だから、B級ポーションかな?あと、酸とか溶解液を受けたところにかけると少し被害を抑えられる中和剤と、毒を受ける前に使うと一時的に毒の耐性をすこし上げる耐毒薬、耐毒薬より効き目は弱いけど毒を受けた後に使っても効く抗毒薬、あとは「安い」ポーションならC級ポーションのテラクサ味の在庫が余ってるから安くできる。味は気楽に飲めるかわからないけど。それとおまけのポーション、味はいろいろ効き目もいろいろ。」
「テラクサっていうと、寺の草、ジンジャーで生姜のことやね。薬やったらよくある味やと思うし、大丈夫やと思う。そんで、値段はなんぼになるやろか。」
「ノーマルポーション、中和剤、耐毒薬、抗毒薬は1本で銀貨1枚。テラクサ味ポーションは20本で銀貨1枚。おまけはおまけ。」
「テラクサ味安すぎやない?アメちゃんみたいな値段やで。まあ他のもたいがいおかしい値段やけど。」
「テラクサは草のままだとものすごく味が濃い。作ってる途中ですごく薄めたらすごくたくさんになった。だからものすごーくたくさんある。むかしはC級ポーションの材料によく使われていた素材だから、ききめは問題ない、けど、味はテラクサ。だから、たぶん冒険者協会とか普通の店では買い取りはしないと思うし、ふつうのひとにもうれない。わたしも安いのって指定されないとださない、だから減らない。ほかの薬も、同じような理由がある。」
「裏メニューってやつやね。薄めてC級ポーションが大量に作れるなら材料は何級なんやろな。まあ効き目があって安いなら問題はないんやけど、っていうか普通に安すぎやし。とりあえずさっき言ってた薬一式で銀貨5枚やな、それを持てる数…10セットくらいやろか、そのくらいほしいんやけど、在庫足りるやろか。」
「らー。いっぱいあるから大丈夫ー。それじゃ薬代はぜんぶで銀貨50枚だね。」
「ほい、50枚な。ところで焼き鳥のおまけのポーションって、未鑑定ってことはなんかごっつい辛いのとか混ざってたりするん?ネタ的においしい感じの。」
「み?ききめはちゃんとあるけど、鑑定してもたぶん「ポーションって書いてあるビン」みたいにしかならない。普通のポーションとは作り方違うし性質もちょっと違う。」
「つまり、「実際なにが入ってるかは証明できない」ってことになるんかな?「ポーションってことにはなっとるけど鑑定スキルでは保証はせんよ」って感じで。」
「らー。そんなかんじ。」
「うん、まあ問題はないわな。要は缶詰みたいなもんやろ?世の中鑑定スキル持ってない人もいるわけやし、そーいう人が買い物しないってわけでもないやろうし。作ってるのがシロちゃんだったら飲めないものは使わんやろうしな。」
「むー。食べられるもの飲めるものの基準がおかしいといわれたことはあるから、ふつーではないこともあるかも。でも、わたしが飲めるものだと思った材料で作ってるし、みーたんとはーたんにも材料は見せてるから、たぶんふつうのにんげんのひとからみても食べ物と飲み物が材料だと思うよ。」
「うん、材料は意外に普通だったよ。作ってるときに使ってる魔法とかはたぶん普通じゃないとは思うけど。あ、白ちゃん、在庫みんな売れたよ。みやっちは行列解散させてくるって。」
「にゃー。おつかれさまー。おわったらごはんにしよーね。」
「そうだね。しょちょーにもらった塩漬け肉もあるし、タヌキさんの差し入れのハムサンドもあるし、肉ばっかりだけど豪華だねー。」
「らー。そうだね。ごうかー。そんなわけで、ごはん食べるから閉店。ちょっとまっててね、そのまえにくすり出してくるから。」
「ギリギリやったんやね意外と。そんじゃ待ってるからよろしく頼むわ。」
「らー。わかったー。」