ばーべきゅーひろばと、やきなっつ。
「ゴゴナッツは焼くとおいしいらしいから、やきにくのばしょ、行ってみたい。」
「うん、たぶんバーベキュー広場のことかな。
白ちゃんは料理スキル持ってたはずだし、わざわざやるようなもんでもないような気がするけど。
あ、でも、スキルがあるなら逆に普通においしいものが期待できるってことになるのかな。
まあとりあえず、行ってみよーか。」
……
大きな広場。
ところどころに大きな石が積まれて、その上に平たい石や金属板のような物置かれてかろうじて料理ができる程度の設備になっている。
使われているところもあるが、使われていない場所のほうがやや多いようだ。
「やっぱりこの時間はまだ空いてるね。
夜に近くなると迷宮とか街の外とかで狩りしてた人がけっこう来るらしいけど。
白ちゃん、どのへんの場所使う?」
「むー。どこがいいかな。」
「奥のほうはスキル上げの人たちが使うことが多いはずだから、手前がいいんじゃないかしら。」
「んじゃこのへんでいい?適当だけど。」
「らー。そこにしよう。
こういうときのために作っておいた、携帯用の焼き網をつかう。こげにくい。
ゴゴナッツを厚めに切って、焼き網の上に置く。
ちょっと熱めなかんじに加熱すると、細かく割れ目が入ってぱちぱち音が鳴る。
あとは全面にひびが入ったらできあがり、だけど焼きすぎるとばらばらになっちゃうからすこし難しい。」
「おいしそうね。」
「そうだねー、なんかこの音がいい感じに期待をさせてくれる感じがする。」
「できた。1個ずつわたすね。」
「ありがとー。さっそく食べてみるね。
……なんだろ、おいしいんだけど、なんか食べたことあるような無いようなって味?
なにかに似てるんだけどなー、って感じがする。
ナッツのなにかに似てるんだよね。」
「ありがとう。いただくわね。
……味はカッシュナッツとピストナッツの中間くらいの味かしら。
どちらもこんなに大きくはないけど、味だけで言うとそのふたつに近いと思うわ。」
「ああ、言われてみればそんな感じだね。
こっちのほうが大きいからお得感があるかも。」
「らー。大きいからまるごとたべるのはむずかしい。
だから、切りかたによっていろんな食べかたになる感じ。
すごく薄切りにしたりするのもいいかも。」
「うん、それもいいかもしれないね。」
「うすいのもためしにつくってみる。
……むー。やっぱり加熱すると割れる。薄切りだと。
もともとこういうものということにして袋にいれれば見た目は大丈夫な感じになるかな。
これもふたりぶんに分けるね。」
「ありがとー。
白ちゃんは自分で食べないの?
あ、焼きながらじゃ無理か。あたしは料理上手にはできないし、みやっちに代わってもらう?」
「み?かわってくれるなら、薄切りのを試してみてほしいー。
厚切りのほうはわたしでもうまくできそーなかんじだったし。」
「それじゃ試してみるわね。
さっき白ちゃんが切っていた時と同じくらいの厚さだと、このくらいかしら。
これを、こうやって焼いてみると…
あら、うまくいったみたい。
はい、食べてみてね。」
「らー。ありがとー。たべてみるー。
……にゃー。てきどなかみごたえ?おいしい。
すこしぱりぱり。いいかんじ。」
……
「ねえ、さっき焼いてたナッツって、ゴゴナッツよね?
ちょっとだけ分けてもらえないかしら。お礼はするから。」
隣で料理していた、小柄な女性が話しかけてきた。
体型、耳の形などから考えると、ドワーフだろうと思える。
「み?」
「あ、さっき横で料理してた人だね。
この子がとってきたナッツだから、交渉はこの子としてね。」
「むー。
おいしそうな食べ物と交換だったらいいよ。」
「えっと、エルフの人ってなに食べるのかな?
それじゃ、このマッドトマトと兵隊ネズミでどう?
どっちもめずらしくうまく焼けたんだ。」
「にゃー。どっちもおいしそうだね。
その量とだったら、このくらいの量だったら交換する。
えるふはどうかわからないけど、わたしはあんまり好き嫌いないと思うからいろいろたべるよー。」
「そんなに多くていいの?ありがとう!
それじゃ交換成立ね。」
「ありがとー。交換成立を確認したよ。
あとでたべてみるね。」
「あれ、兵団ネズミって近くで取れたっけ?
あんまり売ってるのは見かけないけど。」
「群れで動くモンスターだから、ある程度離れないと取れないんじゃないかしら。
近くで発生したら駆除依頼になるくらいのモンスターなはずよ。一匹なら強くないけど数が多いことが多いから。」
「ああ、兵団ネズミって言ってもただのはぐれだったのよ。
だからかんたんに狩れたけど、料理スキル持ちが扱うほどの量じゃないって言って買取金額安かったからキャンセルして自分で使うことにしたのよ。
やっぱり食材にしか使えない素材はいい値段は付きにくいわよねー。」
「むー。料理スキルは上げにくいから仕方ない、かもね。
材料を良いの使うかいっぱい作るかしないとあんまり上がらない。
いい材料を使っても料理で儲けるのは難しい場合も多いし。
だから、同じ素材をたくさん集めるとたぶん高く売れる、っていうことなんだね。」
「そういうこと。
だいたい大きければ大きいほどおいしいっていうのがお約束だから、一匹でいっぱい肉がとれるようなモンスターを狩れればいいんだけど、だいたいそういうのは強いしね。
だから、小さいのでもいっぱい湧くようなモンスターを狩れると稼げるのよね。
兵団ネズミを見つけた時にはやったって思ったんだけど数が少なかったわね。」
「むー。兵団ネズミはゴブリンとかといっしょで、数が増えるほど強くなる。
だから、少ないうちに狩れるのは良いことかも。
軍隊ネズミになるくらいまで数を増やしてから一網打尽できればいっぱいおいしい肉が取れるはずだけど、進化するとクリティカル率も状態異常発生関数も大幅に上がるはずだから、慣れてないとたぶん難しそう。」
「まあそうなんだけどね。
えむけーされるのに比べれば獲物が少ないくらいで文句言ってちゃだめよね。」
「らー。ネズミは強さの個体差も大きいから、かんたんにたおせるのはたぶんいいこと。
軍隊ネズミは群体タイプのモンスターになっちゃうから訓練には使えないだろうし、リーダーを見つけるのも難しい。
だから、なにか相性のいい技とかぶきがないとたぶん金銭的、経験的にはもうからない感じ。自分で食べるだけならちょっと狩って帰るのもいい方法だけど。」
「ハンマーは相性がいいって言われたけど、あんまりラクではなかったわね。当たりにくいし。」
「ハンマーは衝撃の伝搬でだめーじをかせぐ技が覚えやすいはず?クラッククラッシュとかたぶんべんり。壁とか地面とかをダメージ源にできるから、ネズミ系にはけっこう向いてる。
でも、自分にも振動は伝わるから、バランス?安定性?鍛える必要がある感じ。だから、ヘビータンクのひとはメイスとか使う場合がけっこう多いはず。」
「あ、そういうことか。直接当てなくてもよかったのね。
壁とか床を思いっきり殴れば、ちょっとはダメージが通るわけだ。
ハンマー傷つけたくないから加減して叩いてたのがダメだったんだなぁ。」
「らー。攻撃対象を壁とか床だと思って叩くといい感じかも?
打撃系武器は硬いものを攻撃した時でも耐久度は落ちにくいはず。すこしは落ちる。」
「そうだね、剣みたいな切断系に比べれば頑丈だね。
大槌だと2本持って行ったりできないから、そうでないと困るけど。」
「むー。たしかに、むずかしいかも。
ハンマーは現地調達も難しいだろうし。
やっぱり鍛冶で修理できるようにするとか、ものすごく耐久高いのにするとか、逆にすごく小さいのにして副武装にするとかがいいのかもね。
あとは緊急修理のスクロールとか使うっていう方法もあるけど、そーいうのはべんりなぶん性能すこし落ちるらしいし。」
「そこそこいい武器買えるくらいの値段するからねー、緊急修理は。
いざという時のために買ってる人もいるかもしれないけど、普通は使えないよね。」
「み?ぶきの値段とか、あんまりしらないからよくわからないけど、スクロールってけっこう高いんだね。」
「うん、けっこう高いんだ。便利なものは特にね。
あ、ごめんね長話して。
私はそろそろ帰ってナッツを食べることにする。交換してくれてありがとうね。それじゃー。」
「さよならー。」
「さよならー。
そーいえば、ネズミはわかるけど、トマトはおいしいのかな?
あたしはマッドトマトはどんな味か聞いたことない。」
「他の種を植えたはずなのになぜか時々生えてくるからマッドトマトって呼ばれる種類だったはずよね。
味はおいしいけど、種を取ってもトマトは育たないらしいわ。」
「……にゃー。おいしかった。」
「うん、まあ食べてみておいしいならおいしいよね。
考えるより食べてみたほうが早かったか。」
「らー。そうかも。
焼きトマト、おいしい。
みーたんとはーたんも、トマトたべる?」
「うん、おいしそうだしもらうよ。ありがとね。
…ん、これはおいしいね。」
「おいしいわね。ありがとう。」
「にゃー。おいしいのはいいことだねー。」
「そうだねー。」