おおがめと、じっせんちょうさ。
巨大な亀のモンスターの周りで、4人がそれぞれの戦いをしている……。
「冒険者協会売店で大好評発売中の「はじめての休日大工セット」の七つ道具のひとつ、「かるがるハンマー」の使いやすさを思い知るとええわ。
ほれほれ、簡単にこういう攻撃ができるんやで。
『軽量なうえに反動軽減加工もされているので、初心者でもラクラクお使いになれまっせ』」
「うわ、なんか、僕のほうばっかり攻撃してきてるよね。
このままだと、剣折れちゃうかも、って思う。」
「『狐火・幻火炎』!
やっぱり私のはダメージは低いみたい、でも目くらましにはなるみたい。
気を引くから今のうちたてなおして。」
「『闘血焦爪』!これも効いている様子はありませんね…。
このモンスターなら攻撃が少ないから余裕もありますけど。
あ、範囲来ます!退避!」
「ほいほいりょーかいありがとさん。」
「わかった!」
「ありがとうね!」
巨大な亀が、高速で回転を始める。
事前に離れた4人は無事だが、巻き込まれればただではすまなそうだ。
「よし、止まった!
攻撃行く!『残照剣』!」
「『練習すれば遠い場所でも一投で解決、高枝切りブーメラン』
エックス君だいじょぶかー。疲れたらさっきみたいに交代するからなー。この亀さん早くはないようやし。」
「まだ大丈夫!魔力もまだあるし!」
「私も接近戦続けます。
寝狐さんとタヌキさんは弱点探しの続きをお願いします。
『鉄拳連舞』!」
「お、マリアちゃんが行ってくれるのん?楽できてうれしいなあ。
んじゃ次冷気試してみるわ。
『生モノの保存に最適の冷凍材、今なら10個セットに17個オマケ!』」
「私は闇炎で行ってみる。
これで魔法は打ち止めよ。
『狐火・闇焔』」
「それならうちも店じまいといこかな。
最後に一発、とっておきの電撃ロッドや。
『疲れた体にこの一本、高圧電流で安らかにお休みできます』
よっしゃ効いた。ずらかるでー」
……
「みんな、お疲れさん。
そして無事に実験終了おめでとさんやね。
事前情報通り、ハンマー系はなんぼか効果ありのようやな。刃物みたいにすぐ欠けたりしないだけでも違うわ。曲がるけど。
ちょっと研ぎなおせば大丈夫やな。ちょっと失礼して直すな。
『お手入れもラクラク、ゆがんだ時も再加工すればこの通りいつもの使い心地がよみがえります』
よし、まあこんなもんやろ。」
「僕の魔法剣はあんまり効いてない感じだった。
剣が折れたりはしなかったけど、攻撃は効いてなかった。」
「魔法剣が目立つからでしょうか、エックス君ばかりが狙われていた感じでしたね。
拳闘系スキルは一撃の威力を重視した打撃技なら多少は効くようですが、相当な攻撃回数が必要になりそうですし、反射ダメージが大きいので主力として使うのには無理がありますね。」
「狐魔法は闇だけ少しダメージになったみたい。
でも、もともとの火力が足りなくて決め手にはならなそう。
火魔法は気をそらす効果はあるみたいだけど維持コストが多いから長時間はもたないわ。
なにもできないよりはいいけど、倒すつもりなら火力不足が痛いわね。」
「まとめると、ダメージ源としては打撃系、電撃系、あと闇系が効きそうってとこやろか。
打撃は数打ちのトンカチでもほんのちょっとはダメージ通ったし、電撃は対人用のロッドで足止めできたから攻撃系の電撃武器があればダメージも期待はできそうや。」
「足止めが目的ならエックス君の光の魔法剣と、火炎瓶とスタンロッドが効果ありですね。
あとは寝狐さんの魔法もかなり混乱を誘えるみたいです。火と光と電気でしょうか。」
「あの回転攻撃は面倒やね。あの足でどうやって回ってるんやろ。どーでもええけど。
掲示板情報にはあの技なかったんやけど、あの回転、どんな条件で来るんやろね。
避けられれば少しの間隙だらけになるみたいやからさっきみたいに見切れればおいしいんやけど。」
「たぶん、ある程度攻撃をよけ続ける、とか、一定数攻撃を当てる、とかありそうね。
普通の戦い方ではだめだと思った時の切り札なんじゃない?」
「そうですね、ある程度出すのにリスクがある技だとするなら、危ないと判断した時に使いそうですよね。
背後から攻撃を受け続けると出すとかでしょうか。」
「出すまで時間がかかる、っていうこともあるかも。
力をためないと撃てない技とか、プレイヤーにもたくさんあるみたいだし。」
「なるほどー、そういうのだとしたら、切り札が近距離攻撃ってことで、飛び道具の大技持ってる仲間がいればラクに狩れそうやね。
さっきみたいに技の前兆見て教えてもらえるならなんとかなるかもやけど、あの大きさのに攻撃されたら痛いなんてもんじゃすまなそうやしな。
電撃のスタン効果は同じモンスターに連発すると効果落ちる仕様みたいやからあれだけで勝てるわけやないけど、電撃も弾数もうちょっと揃えたいな。」
「普通の武器でも、回転攻撃のあとなら大技当てれそうだったよね。
魔法剣より普通の武器にしたほうがいいのかな。あんまり効かないみたいだし。」
「付け焼刃の攻撃を増やすより、攻撃専門の人を増やすほうが効率的なんじゃないかと私は思うわ。
もともとこの4人で勝てるとは思ってなかったんだし、このメンバーのままで進めるのは無理なんじゃないかと思う。」
「そうやな。うちの実演販売スキルはいろんな武器や道具を使えるのはいいけど本物の戦闘系スキルに比べれば効果がけっこう落ちるし、ネコちゃんの狐火は攻撃よりも援護向きみたいやし、マリアちゃんの拳闘も反動が重いみたいやし。
防御極振りっぽいカメさんと戦うにはあんまり向いてないわな。
アタッカーが欲しいとこやね。エックス君がハンマーに持ち替えるのもありかもやけど、やっぱりメイン武器として使ってた人にはかなわんやろ。
まあとりあえず、帰って掲示板に情報流そか。属性剣なんかは試しに買ってみるっていう値段ではないし、情報あったほうがええ。使い捨ての武器なら属性いろいろあるけど、値段のわりに効果いまいちやし。」
「そうですね、属性の情報は役に立ちそうです、効かなかった情報も重要ですよね。」
「私みたいに属性が少ないなら全部使ってみればいいけど、多い人なら悩みそうよね。」
「そうだね、僕も帰ってから考えることにするよ。」
「そんじゃ帰るでー。おうちにつくまでが実験やからなー。
ってさっき実験終了って言ってしまったわ、どないしょ。」
「終了って言ったなあれは嘘だ、でいいんじゃない?」
「そりゃええな、そうしよか。
それじゃ実験終了というのはフェイントだったことにして帰ろ帰ろ。」
「帰る途中も気を付けて帰らないといけませんね。
数が少ないとはいえ、モンスターはいるわけですから。」
「見つけたら気を付けて逃げよう。」