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めいどふくとめいどふく。

野外ではないが、カフェテラスを模したような地下室。

テーブル席では、メイド服のような物を身にまとった少女が、表情をころころと変えながら話をしている。

その場面を見れば、誰もが『微笑ましい姿』だと評するだろう。

彼女の気配が死霊のように薄いことに気づく不運な者を除いて、の話だが。


「み?さっきの姿にはそんな効果もあったんだね。」


「そうなんです!あの姿で街中を歩いてるだけで、いつもマッチョどもが寄ってくるんですよ!

 同類だと思われているんだろうとは思うけど、私はあんな姿になりたくてなってたわけじゃないし、筋肉が好きってわけでもないんです!

 細くて美形で適度に筋肉がついてるイケメンだったら大歓迎ですけど、あくまでもそれは顔が優先!ビルダーみたいなのは対象外!!

 あ、ケーキ追加分焼きあがりましたね。取ってきまーす♪」


「このみじゃないひとにおいかけられるのはたいへんだね。

 このみのひとが相手だったら問題ないのかはわたしにはよくわからないけど。

 ちいさいケーキもおいしかったけど、そろそろおなかいっぱいかな。」


「恋愛ものの物語だったら追いかけられているけど両想いということは多いけど、実際は逃げる必要なければ逃げないでしょうから追いかけられ続けていて両想いということはなさそうね。」


「やっぱり好みのタイプが相手だったとしても追いかけられるのはイヤなんじゃないかな。

 ケーキもこの大きさだと白ちゃんでもいろいろ食べれるから良いね。普通の店でこんなメニューあったらすごく高くつきそうだけどさ。」


「もし白ちゃんが食べているようなお菓子をメニューとして作るなら、ある程度の数をまとめて作っておいて、一定の数まで自由に選べるようにするような形になるのかしら。

 いくらでも、っていうことにしてしまったら本当にいくらでも食べ続けられそうな人たちもいるから大変なことになりそうよね。」


「らー。そうだね。

 品質を落としてもいいんだったら瞬間製造系のスキルを使えばいっぱい作れるけど、普通の方法で料理が作れるなら普通のほうがすごくおいしく作れるはずだからあんまり作りたくはならなそうだね。」


「お待たせしました~!

 今度はミノチーズ入りのタルト。食べてみてねー。

 シロちゃんのぶんは他のと同じく一口サイズでいいのよね?」


「むー。たしかにおいしそーな感じする。

 たべすぎ一歩手前だとは思うけど、この大きさならまだ大丈夫かも。ありがとー。」


「待ってましたー!いただきまーす。」


「これもおいしそうね。ありがとう。いただきます。」


「おいしいなぁ。近くにこんなお菓子出す店があったらお金すぐなくなりそうだなー。

 ところで、これだけごちそうになってから言うのもなんだけどなんでこの状況になってるの?

 たぶん、女装実験が成功、なんかいい気分になってお菓子作りをしたくなった。そしてお菓子おいしい。という感じなんじゃないかなとは思うけど。

 ミノチーズを材料に使ってるところを見ると、白ちゃんはかなりお菓子を気に入ったみたいだね。材料提供してまで作ってもらうっていうのは今まであんまりなかったはずだし。」


「あはは……実験成功でこの姿になれて調子に乗ってたのは正解です。ちょっとはりきりすぎちゃったんですよね。」


「もとのすがたがおんなのひとで、呪いで変えられてる感じだった。

 そーいうわけだから、じょそーじゃなくて解呪でこのすがたになったー。

 おかしつくるのじょーず。」


「あら、女の子だったんですね。」


「はい、そうらしいです。知りませんでした。」


「呪いをかけられてる状態が普通だって思ってたってこと?」


「そうらしいです。呪いには気づけませんでした。」


「呪いはいろいろあるから、気づくの難しいものもあるかもしれないー。

 呪いについて勉強できる本とか、けっこう少ないみたいだし。」


「まあ普通は呪いにかかったことに気づいてから呪いを解くために情報集めするってことになるだろうから、めったに売れないだろうね。」


「自費出版のような形になりそうですね。普通の本屋では扱いにくいでしょうし。」


「そーかも。あとは図書館で探すとかもいいかもしれないけど、背表紙に偽装の魔法とかかってたりするものもあるし、探しにくいかも。

 はなしのつづきー。女の子の姿になったら、料理しやすくなって、いっぱいつくりすぎたんだって。

 えるふもどわーふのひとと同じくらいの食欲あると思ってたみたい。

 普通のえるふがどのくらいかはよくわからないけど。

 だから、つくりすぎたのがいっぱいあったから呼んでみたー。」


「うん、まあ普通のエルフがどのくらいかはわからない、っていうか普通のエルフっていうものがいるのかどーかわからないけど、白ちゃんは普通の子供よりかなり食べないほう、なのかな?

 そーいえば小さい子がどのくらい食べるのかってもともと知らないや。」


「子供冒険者協会の周辺で売っていたお菓子の大きさを考えると、白ちゃんは普通の子供、この場合は人間族の子供のことね。それと比べてもかなりの少食だと思うわ。」


「恥ずかしながら、エルフとドワーフが別だったことを知らなかったんですよ~。それどころかどっちも全然知りませんでしたから。」


「いや、それは冗談……じゃないの?

 ドワーフって意外といっぱいいるしさ。たとえばここのしょちょーもドワーフだし。

 だからエルフと間違える人はめったにいないんじゃないかな~と思うんだけど、でもドワーフに会ったことなければわかんないのかな?」


「少なくとも近所では見かけなかったですね~。見分けがついてないだけかもしれませんけど、寄ってくるマッチョは人間だったと思います。まずドワーフを見分ける特徴がわかっていないんですけど。」


「どわーふは、身長小さめで手のひら大きい場合が多い、おとこだったらひげ伸ばしてること多い、おんなだと個体差大きくてよくわからない感じ?はだのいろは緑系か黒系が多いらしい。

 でも、やせてたり身長高かったりすることもあるし、色白だったりする場合もあるし、いろいろあるらしい。

 だから、おんなのどわーふのひとは、けっこうわかりにくい場合もあるかも。

 あんまり区別する必要ないような感じもする。どわーふ、って言われて多くの人が想像するような特徴はあんまりない場合もあるから。」


「ちなみに、ドワーフって言われて普通想像する特徴っていうのは、頑固者で手先が器用で酒好きで金銭感覚はわりと大ざっぱ、っていう感じになると思うよ。あと腕が太くて手が大きい。」


「付け加えるなら、ドワーフは普通の人間にとっては貴重な製品を二束三文で売ってしまうことがあるということがあるといわれていて、商人系スキルを持つ者なら『ドワーフと対等な商売をするかどうか』が悪徳商人へと堕ちるかどうかの境界だといわれているそうよ。」


「さらにつけくわえると、職人系のどわーふのひとのみわけかたは、ひげが長くてまっすぐなことだね。

 ひげがまがってるなら老師とか術者とかみたいに魔法系のことが多くて、ひげが短いか剃ってるかだとだいたい大きな挫折を経験して望んでいない路線に成長しちゃったかんじらしい。

 名前にもある程度特徴がある場合もあるけど、そっちはあんまり気にしないでも大丈夫だと思う。」


「それじゃドワーフのかたはヒゲがまっすぐならかっこいいことになる、それ以外なら話題にしないほうがいいということですね。」


「らー。だいたいあってる。でも、ひげの話題はリスクが高いからあんまり言わないほうがぶなんかも?

 ひげの長さとか、けっこうびみょーな違いだったりもするらしいし。

 ドワーフはお世辞とか見破るのは得意だろうから、あんまりメリットもないと思う。

 おなかいっぱい、そろそろねむくなるー。話の途中で寝るかも。」


「あ、そうか。白ちゃんけっこう食べてたし、眠気が来るころか。

 ところで二人は連絡先交換はしたの?それとも会わないことにするの?」


「情報交換はしたし、いばしょわかるようににおいもおぼえたー。

 めいどふく回収しなくちゃいけないし、今度もう一度会う。」


「あ、やっぱりその服って白ちゃんが作ったんだ?なんかそんな気はしてたけど。

 回収ってことは、なんか強すぎるとかあるってこと?」


「み?そういうわけではないけど、あとで返しに来るって言ったから、それまでもとの姿が想像されにくいような装備を貸すことにした。

 たぶん、もとの装備とはかなり特徴が違うからわかりにくいかも?」


「こんなかわいい服を着ている女の子が今まで男の子の姿をしていたなんて思わないでしょうね~。」


「そうだといいと、心から思います。

 (もしアレじゃなくて『普通の男の子』の姿だったならいくらでも知られていいんですけど…)」


「ん?なんか言った?」


「いえいえ、なんでもありません!

 あらためて、本当にありがとうございました。

 お二人がシロちゃんを止めていたら実験は中止になっていたそうですし、今私がいるのはシロちゃんとミヤさんとハヤテさんのおかげです!」


「ああ、うん、どーいたしまして。よくわかんないけど。」


「もう無理、ねむい。おやすー。」

『冥途服』

「闇の世界に生きる者の装束。華やかな姿は仮の姿である。

優れた使用人は無駄に騒々しくすることはなく静かに動ける者である。

しかし、客人の背後で静かにするのは使用人だけではないのだ……。」

追加スキル『気配希薄化』『偽心暗器』『惨智直葬』

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